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VA ANOTHER SIDE VA誌面で使われなかった特別カットやフルインタビューをWEBのみで限定公開中!

宇多田ヒカル

INTERVIEW

大切な人へ捧げる大切な一枚
日本中が待っていた約8年半ぶりの新作、ついに完成!!

その歌声と歌詞は以前よりもグッと強く、優しく、大人になった。'10年から“人間活動”に入り、アーティスト活動を休止していた宇多田ヒカルが、約8年半ぶりに通算6枚目のオリジナルアルバム『Fantôme』をリリースする。英日の精鋭たちが演奏を、そしてU2やサム・スミスの作品で知られるスティーヴ・フィッツモーリスが主なミックスを手掛けた本作は、彼女から'13年に逝去した自身の母へと捧げる一枚である。

—— まず『Fantôme』というタイトルを付けた経緯は?

「今までのような英語のタイトルを付けるのは違う気がして。かといって、日本語で思いつく言葉は重過ぎて。そこで輪廻という視点から“気配”、“幻”を指すフランス語に突き当たりました。私という存在は母から始まったんだから、彼女の存在を“気配”として感じるのであればそれでいい。そんな想いで名付けました」

—— 今年4月に配信限定リリースされた「花束を君に」と「真夏の通り雨」も本作でCD初収録となります。

「『花束を君に』は国民的な番組(NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』)の主題歌だったので、いつにも増して間口を広げて作詞をしました。オフコースとかチューリップ、休んでいた頃に好んで聴いていた、エルトン・ジョンの『Tiny Dancer』(邦題:『可愛いダンサー~マキシンに捧ぐ』/'71年)なんかをイメージして、いろんなリスナーに当てはまるよう、軽やかで“開いた”曲を目指しました」

—— わずかに英語とフランス語が用いられていますが、歌詞はほぼ日本語で書かれていますね。

「1年半くらい前から『次のアルバムは日本語で歌うことがテーマ』と言っていました。たとえば『真夏の通り雨』も始めから日本語だけの歌詞にしようと決めて、自然と染み入るような、それでいてなお美しいと思ってもらえる日本語の歌詞を目指しました。今の自分の感覚だと英語を使うことが“逃げ”に感じられてしまって。今回は日本語で歌う意義や“唄”を追求したいと思いました」

—— 『Fantôme』はダンサブルな「道」という曲で始まります。“人間活動”期間中に起こった様々な出来事を経た宇多田さんの率直な想いが凝縮されているような歌詞ですね。

「そうそう。『私は元気です。行きますよー!!』って感じで(笑)。この曲の作詞の過程でアルバムの主題を自分なりに捉えることができました」

—— 歌い方が少し変わったように感じられます。

「日本語のポップスで勝負しようと決めていたので、言葉をしっかりと伝えたくて、以前よりも丁寧に歌いました」

—— その歌をクリアに伝えるために、アレンジも厳選された音だけが鳴らされていますね。

「日本語の唄は、声と歌詞が前面に出てこないと成立しないので、今回はトラックを極力少な目にしました。最近聴いているのも、ライ、ホット・チップ、ディアンジェロ、アトムス・フォー・ピース、ディス・モータル・コイルとかジュリー・ロンドンなど、トラックが少なくて聴きやすいものばかりなんです」

—— 歌詞の中にはこれまでにないアダルトな表現・描写も見受けられます。

「デビューの年齢が若かったせいもあって、以前は性に直接触れるのはタブーな気がしていたんです。でも今回からはPG13からR指定になったというか(笑)。自由に言葉を選べました」

—— ゲストも豪華ですね。「二時間だけのバカンス」では同期デビューだった椎名林檎とのデュエットが実現しました。

「林檎ちゃんとはかれこれ長い付き合いですね。この曲では日常と非日常の危うい関係を表現したかったので、母であり妻でもある私たちふたりなら説得力が増して面白いかなと思って(笑)。この曲はPVも撮ったけど、現場、盛り上がりましたよ(笑)」

—— そして「ともだち」ではTOKYO RECORDINGS主宰の小袋成彬が参加しています。

「サビの歌詞が出来始めた段階で、『私一人でひっぱるのつらい』とディレクターさんに相談したら、彼が以前から注目していた小袋さんのことを教えてくれて。私、小袋さんとのレコーディングで、初めて母以外の歌手に歌入れを終始じっくりと見られたのでちょっと緊張しました(笑)」

—— さらに「忘却」ではラッパーのKOHHが参加していますね。

「少し前に知人から教わってファンだったんですが、オファーしてみたら彼も私のファンだと分かって(笑)。KOHHのラップパートは彼自身に書いてもらいました。他人の言葉が自分の曲に混ざることも初めてでしたが、自然と真ん中で落ち合えました」

—— 彼のラップに宇多田さんが歌で呼応する。互いの半生と死生観を映し出すような掛け合いに思わず息を呑みました。

「生き方を考えることは死に方を考えることと同義だと私は思っているので。これまでの人生を振り返りながらこれから向かうところに想いを馳せました」

—— 「人魚」はハープの音に乗せた美しい曲ですね。

「これも『美しい日本語の曲を作るんだ』という、高い理想を掲げたせいで、作詞で非常に苦労しました。母の死後、『もう音楽を作れないかもしれない』と思っていた時に、ギターを弾いていたらふと出来てしまった曲でした。1年ほど悩んで、理想に追いつかないとあきらめかけた時にブワッと言葉で出てきた。達成感も強く、いま最も誇らしく感じている曲です」

—— そして『Fantôme』は「人生最高の日」を経て「桜流し」で幕を閉じます。

「『人生最高の日』のトラックは5年前からありました。作詞では求めている母音と子音を持った四字熟語をひたすら探して3日くらいかかりました(笑)。初めて行く場所へ向かう時の高揚感を描きたかった曲です。『桜流し』は最後にしか置きようがなかった曲。これまでアルバムの曲順は制作チームと議論しながら固めていたんですが、今回は初めて自分で決めました。そういう意味でも、自分のプロジェクトのリーダーという立場に進んで納まったと思える制作でもありました」

—— テーマは私的でも、完成したのは多くの人の胸を打つ“日本語のポップス”でした。

「ありがとうございます。『真夏の通り雨』、『花束を君に』をリリースした時に、『これお母さんのことじゃない?』と気付いた多くのリスナーさんが、同情するというわけでなく、それを踏まえつつ感情移入してくれたリアクションが、私にはとてもポジティヴに感じられたんです。だからこそ母親の顔に泥を塗らない“最高の作品”にしなければと強く感じました」

—— 『Fantôme』は宇多田さん自身にとってどんなアルバムになりましたか。

「“受け入れて、受け入れられる”アルバムですね。作ること自体が究極のセラピーだったというか。自分でも『道』を繰り返し聴いていたら『悲しくない、もう大丈夫』と思えてきましたから(笑)。必死に前へ進んだことで確かな自信を持てた一枚です。こんなアルバムはもう二度と作れないだろうと思います」

—— では最後にリスナーへメッセージをお願いします。

「こんなに『聴いてほしい!』と思うのなんて初めてかも?っていうくらい(笑)、すごく聴いてほしいアルバムになりました。何かしらの想いが届いて、皆さんに受け入れてもらえたら嬉しいです」

INTERVIEW&TEXT:MASAKI UCHIDA

NEW RELEASE

Fantôme

  • NOW ON SALE
  • J-POP

10.15 RENTAL
ユニバーサル ミュージック

TYCT-60101 3,000円(税抜)
SHM-CD

収録曲

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曲名 アーティスト名 再生時間 音楽配信
1. 道 宇多田ヒカル 00:03:36
2. 俺の彼女 宇多田ヒカル 00:05:04
3. 花束を君に 宇多田ヒカル 00:04:38
4. 二時間だけのバカンス featuring 椎名林檎 椎名林檎 00:04:42
5. 人魚 宇多田ヒカル 00:04:16
6. ともだち with 小袋成彬 宇多田ヒカル 00:04:22
7. 真夏の通り雨 宇多田ヒカル 00:05:38
8. 荒野の狼 宇多田ヒカル 00:04:34
9. 忘却 featuring KOHH KOHH 00:05:05
10. 人生最高の日 宇多田ヒカル 00:03:10
11. 桜流し 宇多田ヒカル 00:04:40

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PROFILE

1983年ニューヨーク生まれ。1998年のデビューシングル「Automatic/time will tell」からミリオンヒットを記録。翌年発表の1stアルバム『First Love』で日本国内のアルバムセールス歴代1位を獲得した。その後も数々のヒット曲を発表したが、2010年から「人間活動」のため活動を一時休止。そして今年4月の「花束を君に」、「真夏の通り雨」の配信リリースから本格的に活動を再開させた。9月28日、通算6枚目となる待望のニューアルバム『Fantôme』をリリースする。

HP:http://www.utadahikaru.jp/
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