タランティーノが大絶賛、日本映画の影響も!? 映画『オオカミは嘘をつく』監督インタビュー

(左から)ナヴォット・パプシャド、アハロン・ケシャレス

(左から)ナヴォット・パプシャド、アハロン・ケシャレス

2013年の釜山国際映画祭にて、クエンティン・タランティーン監督が「今年のナンバーワンだ!」と大絶賛した映画『オオカミは嘘をつく』。ナヴォット・パプシャド、アハロン・ケシャレスの2人の新鋭監督が手がけたイスラエル発の心理トラップ・ムービーが11月に日本にやってくる。公開を前に来日を果たした彼らを直撃した。

2人の若き新鋭監督が問いかける、「正義」と「悪」の定義

映画冒頭、かくれんぼをしていた一人の少女が姿を消すところからこの話は始まる。残酷な少女連続殺人事件に刑事、容疑者、少女の父という3人の男が絡み合い、本当の『オオカミ』を探るべく物語は進行していく。しかし、最後まで視聴者に決して犯人の確信を持せることはない。その意図についてケシャレス氏はこう語る「リベンジ物の映画は、犯行現場を見せた上で犯人が罰せられる様を見せていくものがほとんど。でもその手法では“復讐”の複雑さが描ききれていないと思う。善い行いをするべきであるヒーロー(主人公)でさえ“復讐”という行為によって悪人にもなりえるし、最後まで犯人を明かさないことで登場人物たちが行う行為が“本当に正しいことなのかどうか”とモヤモヤする。この居心地悪い感じで映画を観て欲しかった」

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間に挟まれる演出にはイスラエルならではの部分も見て取れる。例えば、劇中に登場する馬に乗ったアラブ人男性もそのひとつ。「政治的な要素が分からなくてもサプライズにつながるキャラクター。ユーモラスでもあり、おっ?なんだ?思うだろう。“皆に自分が狙われている”というアラブ人に対するイスラエル人の先入観のようなものをおかしみで描いている部分でもあるし、ジョークもあるから、いろんな面で楽しんでもらえればそれでいい」(ケシャレス氏)

また、ケシャレス氏曰く、女性がほとんど出てこないのにもお国事情が反映されているという。「男尊女卑的なイスラエル社会の不条理さや子供っぽさを登場人物が表現しているから、それを見せるためにも男性ばかりを選んだんだ。理性の声を代弁する存在である女性を登場させたら、男性側が説得されてすぐにお話が終わってしまうからね(笑)」

作品の緊張感の中で際立つギャップ

凄惨さが増してくる物語後半において、とても印象的なシーンがある。それは被害者の父親が流暢にケーキを作り上げる場面なのだが、お国事情が反映されてきた件を踏まえれば、実際も得意そうに思えるが…?「イスラエルの男性は料理やケーキ作りは苦手な部類だと思う。だからおそらく劇中に出てくる父親もはじめてのケーキ作りだったので下手なんだけど、これは僕らなりのジョーク。実際、父親役のツァヒもケーキ作りが初めてだということは現場でも明らかだったし、出来上がったものも恐ろしく不味かったよ(笑)」(パプシャド氏)

このケーキ作りの場面では、強面の男性とのギャップがものすごい、可愛らしい鶏のキッチンタイマーが登場する。このチョイスについてケシャレス氏は「タランティーノの作品なんかを見ていると小道具とか凝ってて、すごく効いている。だから自分たちも普通の時計ではあのシーンは成立しなかったね」と自分たちが影響を受けたものを参考にしていることを明かしてくれた。ちなみにこのタイマー、日本でも3年程前にはダイソーなどで売っていたが今は廃盤になってしまっているレア物。

映画に詰め込まれた要素を探す楽しみ

道徳感を揺さぶるスリラーとうたわれる本作には、実に多くの要素が詰まっているようで「日本映画に影響を受けている部分もあるから、そこも探してみて欲しいね。(パプシャド氏)」「冒頭は赤ずきんちゃんがモチーフとして描かれているけど、実は、グリムのさまざまなおとぎ話が映画の中にたくさん出てきているんだ。それも探してみて欲しいね。(ケシャレス氏)」と2人がそれぞれ明かしてくれた。

ベテランと新人の融合

ほぼ無茶ぶりだが、“この映画で一番言い演技をしてくれた人”を聞いてみると「皆本当にすばらしかった」と言いつつそれぞれ一人をピックアップしてくれた。
「僕はドヴ(少女の祖父役)かな。子供のころから国の一番有名なコメディアンで、30年ほどあまり表舞台に出ていなかったのに、この作品で一緒にやることができた。現場で見せてくれた演技は最高だった」(パプシャド氏)
「僕はロテム(容疑者役)かな。20年くらい“イスラエルのジョージ・クルーニー”ともいわれているリオール(刑事役)、演技派俳優として有名なキャリアのあるツァヒ(少女の父親役)とは違い、ロテムは長編2作目で、イスラエルでもほとんど無名。彼の演技が成立していなければ2人の演技も価値がなくなるという、非常に重要な役どころだったし、本当に期待以上の演技をしてくれたよ」(ケシャレス氏)

(取材・文:ニュース編集部)

(左から)被害者役のロテム氏、刑事役の

(左から)ロテム氏(容疑者役)、リオール氏(刑事役)、ツァヒ氏(少女の父親役)

映画『オオカミは嘘をつく』
11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国ロードショー

【原題】Big Bad Wolves
【監督・脚本】ナヴォット・ペプシャド、アハロン・ケシャレス
【出演】リオール・アシュケナズィ、ツァヒ・グラッド、ロテム・ケイナン、ドヴ・グリックマン、メナシェ・ノイ、ドゥヴィール・ベネデック、カイス・ナシェフ、ナティ・クルーゲル
2013年/イスラエル/カラー/スコープサイズ/5.1ch/110分/日本語字幕:伊藤幸子
【配給】ショウゲート【後援】イスラエル大使館 supported by Embassy of Israel
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