巨匠・コーエン兄弟の注目作。あのボブ・ディランが憧れた男の生き様がベースに

  

Photo by Alison Rosa ©2012 Long Strange Trip LLC


新作DVDからシネマコンシェルジュがオススメするのは?

『グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃―デイヴ・ヴァン・ロンク回想録』 (デイヴ・ヴァン・ロンク、イライジャ・ウォルト 著、真崎 義博 訳、早川書房 刊)。 60年代に最盛期を迎えたNYフォーク・シーン。 その中心人物であり、若き日のボブ・ディランも憧れた伝説のミュージシャンの回想録。 映画の原案となった本

『グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃―デイヴ・ヴァン・ロンク回想録』 (デイヴ・ヴァン・ロンク、イライジャ・ウォルト 著、真崎 義博 訳、 早川書房 刊)。 60年代に最盛期を迎えたNYフォーク・シーン。 その中心人物であり、若き日のボブ・ディランも憧れた伝説のミュージシャンの回想録

ロックの“生ける伝説”とうたわれるボブ・ディランが憧れ、「彼なしにはボブ・ディランの成功はなかった」とまで言われる人物がいる。1960年代アメリカ・ニューヨークで活躍したフォークシンガー、デイヴ・ヴァン・ロンクだ。

代官山 蔦屋書店のシネマコンシェルジュ冨丘紗里氏が数ある新作のなかからオススメするのが、彼の著書『グリニッチ・ヴィレッジにフォークが響いていた頃-デイヴ・ヴァン・ロンク回想録』が元になっている映画『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』。『ファーゴ』『オー・ブラザー!』などで知られ、アカデミー賞や映画祭の常連、ジョエル&イーサン・コーエン兄弟が本著にインスパイアされて生み出したこの作品は、第66回カンヌ国際映画祭(2013年)でグランプリを受賞し、第86回アカデミー賞(2014年)、第71回ゴールデングローブ賞(2014年)にもノミネートされている。

世界中をうならせたその魅力とは? 冨丘氏は以下のように語る。


「譲らぬこと」で世界が変わる…その事実が心に残る

  

Photo by Alison Rosa ©2012 Long Strange Trip LLC 

主人公のルーウィン・デイヴィスは、モデルになったデイヴ・ヴァン・ロンクとは違い、なかなか芽が出ないフォークシンガー。

「結論から言うと、ルーウィン自身は成功しません。ですが、彼に憧れた人がいたからこそ、大物が生まれた。その矛盾をはらんだ哀愁がなんとも言えないのです」と冨丘氏。

劇中は、この男の1週間を描いたものだ。

ルーウィンは、いわゆる『ダメ男』。お金はなく、その日の宿として友人の家を練り歩きながら、ライブハウスで歌う日々を送る。歌手を辞めてふるさとで他の職を探そうとするもうまくいかず。有名なライブハウスを目指して旅に出るも、そこでも『売れない』と言われて、結局は振り出しに戻る…。

「ただし、ただ振り出しに戻るのではないんです。ここの演出が、実にコーエン兄弟らしい巧みさです。ルーウィンが旅のお供に連れて行く1匹のネコ。冒頭で友人の家で起きるシーンで、友人から預かったその猫を逃がしてしまうんです。しかし1週間後を描いたラストでは、まったく同じ場所、シチュエーションで、彼は猫を捕まえることに成功する。猫を部屋に残して、自分だけが外に出て行く…。旅を経ても、まったく変らない生活に戻っただけですが、小さな何かが動き出している予感をさせるのです」

また、次のシーンの描き方も“映像の魔術師”とも称される監督の手腕が光る。

「最後にボブ・ディランと思われる人物が、ルーウィンの後で歌うシーンがあります。交わることなく行き違うのですが、ルーウィンが存在したことで、歴史が変わった。彼自身は何も変らないのですが。それがうまく描かれています。コーエン兄弟は、シュールな笑いをミステリーに入れていく監督で、クスッと笑えるシーンもあります。よくあるサクセスストーリーではないけれど、愛さずにはいられない。ちょっとした心情や状況の動きというのを、繊細に描いた作品です」



ルーウィンが歌うことを「譲らなかった」ことで、彼の何気ない日常から大きな歴史が生まれた。コーエン兄弟をうならせた、ルーウィン役の俳優、オスカー・アイザックの生歌を楽しみつつ、作品のテーマと主人公の心の機微を、美しい映像と演出で堪能したい。

(文:高橋七重)

『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』

12月17日Blu-ray&DVD発売

Blu-ray4,700円、DVD 3,800円(いずれも税抜) 発売・販売元:東宝

1960年代、冬のニューヨーク。ライブハウスで歌う売れないシンガーソングライターのルーウィン・デイヴィスは、何をやっても裏目に出る日々が続いていた。彼はトラブルから逃げ出すように、ギターと猫を抱えて旅に出る。そして旅から戻り、NYのライブハウスのステージで見たものは…。

【代官山 蔦屋書店】
シネマコンシェルジュ 冨丘紗里 氏

2011年10月から同店のコンシェルジュに。大学では映画について研究。年間150~350本の映画を観ている。国を問わず海外ものが得意分野で、単館系からヒット作まで幅広く網羅している。今気になっている作品は、海外ドラマ『ウォーキング・デッド』(DVD、Blu-ray 12月リリース)。

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