我々の足元から20〜30センチメートルぐらいの世界を体感してほしい―『小さな世界はワンダーランド』マーク・ブラウンロウ監督インタビュー

マーク・ブラウンロウ監督

マーク・ブラウンロウ監督

驚きの大自然とそこに住む生き物たちの生態を捉え、映画『アース』『ライフ −いのちをつなぐ物語−』『ネイチャー』としてその映像をスクリーンに映し出してきたBBCアース。彼らが次に挑んだのは、大自然の生き物たちの“成長”を繋ぎ合わせ、よりドラマティックにストーリー化すること。その第1弾となるのがシマリスとスコーピオンマウス、2つの小さな動物の視点で世界を捉えた『小さな世界はワンダーランド』。この映像、一体どうやって撮ったの!? シマリスとスコーピオンマウスってこんな生き物だったの!? 驚きに満ちたこの映画についてマーク・ブラウンロウ監督に話を聞いた。

─シマリスとスコーピオンマウスがさまざまな経験を積んで大人になっていく成長物語が描かれますが、何故シマリスとスコーピオンマウスを題材に選んだのでしょう?

ネイチャードキュメンタリーでは小さい生き物は取り上げられることがとても少ないんです。ですから、僕らとしては、みなさんが見たことのない世界、我々の足元から20〜30センチメートルぐらいの世界を体感してほしいと思いました。それを体験するためにシマリスとスコーピオンマウスは適役。どちらもとても個性が強くてサバイバル能力もある。彼らのスーパーパワーに驚嘆すると思います。というのも、スコーピオンマウスはとてもかわいいルックスですが、実はどう猛な捕食者。自分よりも大きな生き物と戦って、殺して、食べてしまうし、狼みたいに遠吠えもする。そんな見たことのない足元の世界を捉えるのは野心的な試みでした。彼らにとって落ちてくるドングリは隕石、襲ってくるヘラジカは巨大な恐竜ですからね。

(C)BBC 2014

(C)BBC 2014

─まるで『ジュラシック・パーク』や『インディージョーンズ』などのアドベンチャー映画のようでした! ですが、撮影の対象となる世界が小さければ小さいほど難しさは増しますよね?

もちろん、技術的な挑戦はありました。カメラのレンズやシステム自体を作り直さなくてはならなく……力添えいただいたのはピーター・パークス氏。アカデミー賞受賞歴のあるイギリスの特殊撮影監督である彼がゼロリグ(装置)という小さな広角レンズを開発したんです。そのレンズによってすごく低い場所でも小さな対象に近づいて撮ることができうえ、広角なのでものすごい奥行きも撮れる。生き物たちと同じ目線、同じ体感で、どこまでも続いていく世界観(=奥行き)を撮ることができました。

─本当に、自分自身が小さな生き物になったようでした。ただ、自然に生きる彼らにどうやって近づいたのでしょう。彼らはカメラを警戒したりしなかったのでしょうか?

ふつうの野生のシマリスはカメラを見ただけで逃げます。僕らがどうやってあれだけ近づくことができたかというと──カナダのモントリオール付近に森林を保護区にして、そこに住むシマリスたちを観察しているところがあるんです。今回は彼らの強力を得ています。その専門家の方たちは20年間にわたってシマリスを観察しているので、シマリスたちには名前が付けられています。この映画のなかでメインに撮っているのはサイモン。彼はけっこう怠け者な性格で、朝の寒いうちはまだ巣穴から出てこない(笑)。眠っている間に僕らは巣穴の横に機材をセッティングして、サイモンが起きてくるのをじっと待つ。そうやって彼らの森林のなかでの生活を撮ることができました。

(C)BBC 2014

(C)BBC 2014

─かわいいだけじゃない、シマリスの知らなかった一面を見ることができました! 驚きました!

そうでしょう(笑)。とはいってもシマリスのすべての行動を保護区だけで撮ることはできなかったので、彼らの世界を再現したセットを作り、彼らがそこに慣れるまで待って撮影をしているシーンもあります。スコーピオンマウスの場合は、遮へい物や囲いのある場所に何週間も住んでもらって、慣れてもらって、野生にいるのと変わらない行動をし始めたら撮影をする。直接人間とは触れてはいないけれど照明やカメラに慣れてもらうことで、ああいう映像を撮ることができました。そうやって撮ることに関して「ネイチャードキュメンタリーなのにそのままの自然界で撮らなくていいのか?」という人がなかにはいますが、セットとは言っても、生き物たちがその環境に慣れて落ち着いていないと見られない行動ばかりなんです。

(C)BBC 2014

(C)BBC 2014

─何週間もその時を待つ、監督をはじめスタッフは我慢強い人ばかりですね。

そうですね(笑)。生き物たちの行動はすごく圧縮しているんです。何もしていない時間がものすごく長くて、いろんな行動はとても短い瞬間にしか見られない。その瞬間を撮るため、僕らはずっと待ちます。過去には、現場に行ってカメラを回しているのに、何の成果もなく何も撮れなく、4週間待ち続けたこともありました。そうやって決定的瞬間を待ち続けるのは、失敗することを恐れているからかもしれないですね。僕らは長年の経験と膨大なリサーチと綿密な計画を立てて撮影に行っているわけなので、絶対に失敗したくない! ちゃんと撮りたい! という想いがある。だからこそ待ち続けることができる。何より、生き物たちの新しいストーリー、新しい行動が撮りたいという強い想いがあるんです。

─その新しいストーリーや決定的瞬間は『小さな世界はワンダーランド』にもたくさんありますね。思わずガッツポーズをとってしまうほど撮ることができて嬉しかったシーンはどのシーンですか?

やっぱり、シマリスの空中戦です。サイモンがコソ泥リスと対決する物語のクライマックスでもありますし、あの瞬間を撮影するために何週間も待ち続けましたから。でも、いざ戦い始めたらあっという間に終わっちゃうんです(笑)。シマリスが空中で戦う、そういう行動をすること自体は以前から分かっていていましたが、あまりに一瞬すぎてカメラに収めることができなかった。今回は1秒に1,000コマ撮れるハイスピードカメラを使って撮っているので、一瞬の出来事を40倍スローモーションで見ることができるんです。空中戦だけでなく、とにかくシマリスもスコーピオンマウスもドラマティックなストーリーを持っているんです。

(C)BBC 2014

(C)BBC 2014

(取材・文:新谷里映)


映画『小さな世界はワンダーランド』
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STORY
神秘的な原生林に住むシマリスと、見渡すかぎり空っぽな砂漠に流れついたスコーピオンマウス。かれらは大人になるために、生まれて初めて家族と離れ、不思議の世界へ歩を進める。そこは、まるでおとぎ話の世界。しかし、このおとぎの国には、色彩豊かな生命たち以外にもキケンが常に付きまとう。彼らより大きく、おとぎ話でも悪役のクマやオオカミ、そして、いのちを狙うハンターたち、さらには、はじめて過ごす、来たる厳しい冬。彼らの世界を生き抜くため、そして、大人になるには、何もかもが一大事。初めて勇気をふりしぼり、 確かな一歩を踏み出す。小さいけれど世界一大きな成長ものがたり―。

監督/脚本/製作:マーク・ブラウンロウ『プラネットアース』
脚本/製作:マイケル・ガントン『ライフ -いのちをつなぐ物語-』
原題:TINY GIANTS3D/2014年/イギリス/カラー/5.1CH/ビスタ/44分/吹替翻訳:中島多恵子/提供:BBCワールドワイド ジャパン
配給:ギャガ

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