【T-SITEロングインタビュー】『新宿スワン』綾野剛&伊勢谷友介 2人の“ターニングポイント”を直撃!

綾野剛&伊勢谷友介

綾野剛&伊勢谷友介

新宿・歌舞伎町を舞台に、スカウトマンたちの熾烈な争いを描いた和久井健の超人気漫画『新宿スワン』。2013年に連載が終了した後も根強い人気をほこる「アウトロー漫画のレジェンド」が実写映画化され、5月30日に公開を控える。

原作のイメージそのままに主人公の白鳥龍彦を演じるのは、さまざまな作品で多彩な魅力を発揮し続ける綾野剛。また龍彦を見出し事態を見守る凄腕スカウトマンの真虎を伊勢谷友介が演じる。

そこで、本作で師弟関係を演じた綾野剛と伊勢谷友介を直撃し、現場の裏話やお互いの印象、そして人生のターニングポイントとなる出会いを聞いた。

「たまたま和久井先生と出会った」(綾野)

─原作の漫画はご存知でしたか? また、読まれた感想を教えてください。

伊勢谷友介(以下I):普段あまり漫画を読まないので知らなかったんですが、出演することになって読ませていただきました。書き込み方がうまいですよね。面白くてファンになりました。僕が演じる真虎の闇の深さがちゃんと描かれていて、設定も相当苦労されて作ったんだろうなと思いました。

綾野は原作を読んで「闇が深くて」

原作は「闇が深くて読み応えがあった」という綾野

綾野剛(以下A):映画化を知って、漫画があることを知りました。まだ出演が決まっていない時に、本当にたまたま食事の席で原作者の和久井先生にお会いしてお話をしたらとても素敵な方だったので、漫画を読みました。

表現を出し惜しみしていないんですよね。漫画的なフィクションの部分とリアルなノンフィクションの部分が混在しているんですが、たった一人の男が、一人の男に復讐するだけの話といっても過言ではないくらい、非常に闇が深い話です。

男同士の関係性や、そこに関わってくる女性の強さがきちんと描かれている。その中でどう頂点を目指して生きていくのか、というのが重要だったので、非常に読み応えのある漫画だと思いました。

園監督は「チャーミング」

─以前、綾野さんは『愛のむきだし』(2008年)、伊勢谷さんは『希望の国』(2012年)で園作品に参加されています。メインキャストとして参加するのは本作が初ですが、園監督とがっつりお仕事をされた感想は?

I:すごく厳しくて、無茶苦茶な監督さんなのかなと勝手にイメージしていたんですけど、本当にお茶目で自分の感覚を信じて、迷わずに現場で指示していらっしゃいました。僕としては、(路上パフォーマンス集団)「東京ガガガ」からの流れで、アートパフォーマーとしてリスペクトしている部分があったので、ご一緒させていただいてうれしかったです。

A:あれだけのパワーのある作品を作って、かつ園さん自体もすごくパワーがある人なんですが、喋るとチャーミングで可愛らしい方です。いつも園さんは園さんでいるので、僕も自分でいられました。

基本的に現場に入った時はある程度コンセンサスが取れていたので、あとは一緒に作っていけばいいかなと。

多少の不安はありましたが、不安よりも先にとにかくブレーキをかけずに、どんなに過大表現だとしても、何もかもやりきってみようと決めていました。そうさせてくれたのは園さんの存在があったからです。また、園さんは能動的にいろんなことを発見し続けていて、現場でも役者が本来気づくべきところを圧倒的に早く気づいて、それをライブかのように演出しているのが非常に魅力的です。演出法もいろいろ試されているんだなと思いました。

「女の人を“モノ”として扱う役。準備はなかなかできなかった」(伊勢谷)

─スカウト役ということで、役作りで前もって準備したことや苦労したことは?

女性に対する感覚で役作りに悩んだという伊勢谷

女性に対する感覚の違いで役作りに悩んだという伊勢谷

I:真虎は女の人を「モノ」として扱っている人なんですが、僕はそういう感覚が一度もなくて、むしろ女の人に理想を求めているところがあるんですよ。それを全部ぶっ壊されていく感じなんで、準備はなかなかできなかったですよね。最初の方のシーンで、龍彦がスカウトした女の人に真虎が仕事を紹介してその人がショックを受けた顔をしますが、実は僕もショックでした。そこが一番苦労したところですね。真虎は目の奥に何かあるような、血気だけじゃないところをどうやって作っていくかで少し悩みましたね。

A:僕は和久井先生からレジュメをいただいて、それを読みました。そこにはヘビーなものからライトなものまで丁寧に書かれていて。

龍彦は真っ直ぐでいいんだなっていうのはありましたが、基本的に僕は漫画をすごく意識しました。小説となると、どうしても読んだ人の想像力と戦わなくちゃいけないから非常に果てしない。その想像を超えるのは大変なことで、見事に無限にありますから。

でも漫画って最低限2.5次元くらいはあるから。どんな服装をしているのか、どんな髪型をしているのか、どんな表情をしているのか、何が起こるのかっていうことが割と丁寧に描かれているので、現場とのコンセンサスが取りやすいんです。

とにかく漫画をすごく読んで、表情から土下座の仕方まで丁寧に汲み取っていくことによって、それが身体に馴染んでくると体感に変わり、それがあたかも当たり前かのように僕を通して龍彦という人間にリアリティが増す。僕自身そこに説得力が湧いてきました。あとは基本、スカウトしているシーンは台詞がないので、全部即興でやっています。なのでそこだけは自分の管轄管理内なので自分でコントロールしながら演じていました。その他は監督に自分の意見を言いつつ相談して。普通に一般の人にも声をかけて、いきなり車が来ちゃって「どうぞ」っていうアクションも全部ライブなんです。

「伊勢谷さんには自分を全部知ってほしかった」(綾野)

─今回演じられた龍彦と真虎は師弟関係のような間柄ですが、共演前と後ではお互いの印象は変わりましたか?

A:僕らの世代はとくにですが、伊勢谷友介という人は誰も知らない人がいないくらいある種アイコンで、僕たちの中で“伊勢谷くん”という愛称で生きている人です。

そんな伊勢谷さんと一緒に一つの作品を作り上げられることにまず喜びがあったし、その喜びを素直に伊勢谷さんに持っていけばいいと思っていたので、構えたことは一度もなかったです。単純に好きだから好きに演じればいいかなっていう感じが、結果、龍彦にも反映していけばいいと思っていたので。初めてお会いした時に思ったのは、お会いしたこともなかったのに自分が知っている伊勢谷さんだったので、すごく嬉しかったです。イメージは作っていなかったんですけどなんか勝手に知った気になっていて。多分それぐらい見ていたんだと思うんです。

そして真虎役が伊勢谷さんと聞いて、ビジュアルもすごい似ているから最高だなと思いました。あと伊勢谷さんだったら、素直に自分を傾けられて、かなり自由にやっても何でも拾ってくれるんだろうなと。伊勢谷さんにはご迷惑をかけたと思うんですけど、僕はかなりわがままな芝居をしたのですが、そういうのも笑って受け止めてくれる安心感がありました。それぐらい懐が深い方で僕は非常に助かりました。

伊勢谷には素直に自分をぶつけられたという綾野

伊勢谷(左)には素直に自分をぶつけられた綾野

I:どちらかっていうと、綾野くんにはクールなイメージを持っていたんですが、性格は逆でした。人を笑わせて、元気づけて、自分の話が多いタイプで、龍彦っぽい感じですね。それを現場に入って、あえてやってくれているのかなって思ったら、オフで食事した時もそんな感じでした。

A:龍彦の影響もあったけど、伊勢谷さんに対しては自分のことを全部知ってほしかったんで。伊勢谷さんが話してくれる内容は面白いんです。ご自身がやられているプロジェクトを含めて、僕が考えたことのないようなことを考えているから。やっぱり僕たちがガキの頃に思っていた伊勢谷さんのイメージは変わんなかったです。

I:そう言っていただけるのは本当に嬉しいんですけど、彼は皆にもちゃんとしているんですね。今回は師弟のような役だったので、そこの関係性も大事にしてもらったんだと思うんで、映画でもそういう雰囲気になっていたら尚良いんですけど。敵だろうが味方だろうが、皆をちゃんと取り込んであげられる。意外と他人のことを考えているんですよ(笑)。

「綾野くんは論理的じゃない。そこが魅力」(伊勢谷)

─完成した作品をご覧になって、お互いに学んだことはありますか?

A:伊勢谷さんが出てくると、皆「聞こう」「見よう」としますよね。ちょっと芝居というものとはかけ離れている感じがありますが、それに尽きます。役柄もあるかもしれないですが、やっぱりそういった何かをまとっているから。伊勢谷さんが出てきた瞬間に何か違う空気が、違う時間が流れ出す。そういうのはやっぱり人間力といいますか…素敵ですよね。

I:ありがとうございます。綾野くんのすごいのはまったく迷っていないところ。芝居の現場でも出来上がった作品でもそうなんですけど。百面相くらい色んな顔をしているんですけど、あれは全部彼が自分で作っていて。論理的に話しているようにみえて、全然論理的じゃない。でもそこが逆に役者でいうと魅力的に映るところだと思うんですよ。彼は自然にそれをやっている感じがして、キャラクターを生かしているんですよ。それは自分の心の動きのまま、普通に演じるというシンプルなことなんですけど、それが一番難しい。それを彼は常にやっているので、尊敬します。

A:ありがとうございます。

I:僕が言ったの聞いてた? 全然論理的じゃないって言ったんだよ(笑)。でも、論理的な役者って全然魅力的じゃないから。それは女の人もそうですよね。

A:論理的でいたいっていう願望はあります。

I:願望はわかる。言葉を聞いていると、そんな感じがするよ。でも違うところが綾野くんの魅力なんだな。

ターニングポイントは『仮面ライダー』(綾野)

─龍彦は真虎に出会って、そこから人生が変わっていきます。お二人にとってターニングポイントとなる出会いはありましたか?

綾野のターニングポイントとなった『仮面ライダー555』 (C)東映アニメーション/京騒戯画プロジェクト

綾野のターニングポイントとなった『仮面ライダー555』 (C)東映アニメーション/京騒戯画プロジェクト

A:デビュー作品仮面ライダー555(2003年)に出演したことですね。仮面ライダーシリーズの石田秀範監督に出会ったから、今の僕があると思います。それと同時に、これまで演じてきたすべての役もそうです。

I:自分の映画『カクト』(2002年)を撮ったことですね。監督をすることが自分の夢のゴールだと設定していたんですが、撮ったはいいけどそれは目的じゃなくて手段だったと気づきました。

じゃ、自分の人生の目的って何だろうと考えた時に、人類の未来をどうやって作るかを考えて生きる人にならないといけないなと思って、その活動をするために「リバースプロジェクト」を作りました。それがひとつのターニングポイントですね。あとは、その途中途中に白洲次郎や吉田松陰という役を演じさせてもらって共有できる部分があったり、(映画『ブラインドネス』で)フェルナンド・メイレレス監督に出会ったりしたことですね。

彼は自分の撮影を早く終えて、移動で出た二酸化炭素の量を計算して、それを賄えるだけの材木を自分の土地に植えるというのを、映画制作の予算から出す取り組みをしているんですよ。そういう人と出会って「映画監督も捨てたもんじゃないな」と思いました。そんな時代になったんだなと感じて、僕もそうやって生きていけばいいんだって思わせてくれました。

「オリジナル作品をやってみたい」(綾野)

─本作は漫画原作ですが、今後出演してみたい、監督してみたい原作物はありますか?

I:シャン・サの『碁を打つ女』がいいですね。これ、テレビマンユニオンの亡くなられた前会長が「伊勢谷、こういう映画やれよ」って渡してくれた小説で、第二次世界大戦中の中国人のスパイの女性と日本人の青年士官が恋に落ちる内容なんですけど。アドベンチャーとしても面白いし、社会的に観ても「戦争はダメだ。なぜならば……」っていう理由を自分たちの意志を持って選択しているのがかっこいいんですよね。でも、舞台が大きすぎるので、僕や日本人が監督するべきではないと思います。あと、村上龍さん原作の『愛と幻想のファシズム』もいいですね。でも今の時代では無理かもしれないですね。

A:僕もありますけど、絶対に現実にするので、今は内緒です。でも僕はやっぱりオリジナル作品がやりたいです。上の世代の人たちに「オリジナルが果敢だった時代は楽しかった」と言われ続けるのは嫌なので。オリジナルをやってみたいです。

I:監督するなら、やっぱり僕もオリジナルやりたいな(笑)。

A:そうですよね。オリジナルの伊勢谷監督作品が観たいです。

(取材・文:クニカタマキ)
スタイリスト:長瀬哲朗、ヘアメイク:井村曜子(綾野剛)/スタイリスト:葛西信博、ヘアメイク:ShinYa/プライマル(伊勢谷友介)

 

『新宿スワン』
5月30日(土)TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー
監督/園子温
出演/綾野剛、山田孝之、沢尻エリカ、金子ノブアキ、深水元基、村上淳、久保田悠来、真野恵里菜、安田顕、山田優、豊原功輔、吉田鋼太郎、伊勢谷友介
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
shinjuku-swan.jp
(C)2015「新宿スワン」製作委員会

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綾野剛

生年月日1982年1月26日(36歳)
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出生地岐阜県

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生年月日1976年5月29日(42歳)
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