「能力者であっても、日常と近いところに存在しているのが面白い」―『ストレイヤーズ・クロニクル』原作・本多孝好&監督・瀬々敬久インタビュー

瀬々敬久監督と原作者・本多孝好

瀬々敬久監督と原作者・本多孝好

作家・本多孝好のベストセラー小説を、『ヘヴンズ ストーリー』('10)『アントキノイノチ』('11)などを手がけてきた瀬々敬久が、『デスノート』『GANTZ』の製作チームのタッグを組んで実写映画化した『ストレイヤーズ・クロニクル』。極秘機関の実験によって生み出された特殊能力を持った2組の若者たちが、運命に翻弄され、選択に迷い、人生に漂流しながらも、戦いの果てに希望を掴み取ろうとする―。混沌とした現代を生きるすべての人々に贈る、切なくも壮絶なひとつの記録である。

原作の中で描かれる2つのチーム“スバル”“アゲハ”の主軸に、瀬々監督が全幅の信頼を置く岡田将生と、岡田の“陽”に対する対局的な存在としての染谷将太をキャスティング。彼らとともに黒島結菜、成海璃子、松岡茉優、清水尋也、高月彩良、白石隼也などネクストブレイク必至の次世代キャストたちが集結した。

昴役の岡田将生/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

昴役の岡田将生/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

本作を作り上げる上で柱の一つにもなっているアクション。主演の岡田は今回が本格的なアクション初挑戦。これまで経験がなかった彼を起用した理由とは―?

瀬々:岡田君は、自分から発信するだけでなく、相手のものを受けて返せる、すごくコール&レスポンスができる役者だと思っているので、だったらアクションもできるだろうという感じはあったんです(笑)。それから、彼が演じる昴は自分たちの兄弟をすごく大切にしているという設定だったので、岡田将生という役者が持っている優しさや包容力がそれに近いと思い、お願いしました。

では、未来に絶望する、チームアゲハのトップ・学を演じた染谷はどうか?

瀬々:原作では学は中学生くらいの設定で、本多さんは無垢な役として描いています。すごくあやふやな存在というか、レッテル貼りがされにくいというか、カテゴライズされにくいような人物像を思い浮かべました。染谷将太という役者自体がそれに近いと感じたし、彼が持っている発見力や想像力に期待して、学をやってもらいましたね。

劇中では昴の対極にある存在、学役を演じた染谷将太/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

劇中では昴の対極にある存在、学役を演じた染谷将太/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

今回は岡田が最年長という現場。先日開催されたジャパンプレミアでは「出来上がった作品を観た時、現場での演技以上に素晴らしかったのは成海璃子さん」とも明かしていた監督。「映画を撮り終えてから気が付いたんですけど、沙耶は昴の守護天使みたいな存在だなって」。

さらに、「最初はものすごく二枚目を意識したひどい演技で…」と瀬戸利樹の撮影開始を振り返りながら、「撮影の初めと終わりを比べると、驚くべきほど成長しているんですね」とその成長ぶりに目を丸くしたという。

瀬々敬久が自身のフィールドでない「アクション」という分野に挑戦しようと決意したこの作品。原作小説には帯コメントも寄せていた瀬々監督だが、この作品を撮ることになった経緯を聞くと…

瀬々:本作ののプロデューサーと「超能力者ものを作りたい」と話していて、いろいろと試行錯誤する中で本多さんの原作と出会い、とても気に入ったので映画化しようという話になりました。

チームスバル/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

チームスバル/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

企画が立ち上がり、映画化の話が来た時の想いを本多はこう振り返る。

本多:率直な話、映像化の話がくるかもしれないなと思っていました。アクションシーンだけつまめばアクション映画ができるわけで、そういうノリでの話は来るだろうなと思っていたんです。でも話を持ってきたのが瀬々監督だったので、なにかお考えがあるんだろうなと思って話を伺いましたね。

2014年12月には『真夜中の五分前』、そして本作を挟んでこの8月には『at Home』も映画化されるなど、今まさに注目度が一気に高まっている本多。自身の作品が映像化されることをどう捉えているのか?

本多:原作者の立場からすると、なかなか難しいところがあるんです。単純に映画化された作品は売れやすい現実がある一方、映像作品の原作を書いているわけじゃないという小説家としての想いももちろんあります。

それでも本多の心を動かすのは“自分にないエネルギー”。本作に関して言えば、それを持っていたのは瀬々監督たちだ。

本多:ひとつの映像を作るのはすごいエネルギーのいることですから、この小説を映画化したいというエネルギーをもった人が誰かしらいたわけで。だったら「その人の頭の中を観てみたい」という意味で、映像化されることに興味がありました。

チームアゲハ/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

チームアゲハ/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

原作は約800ページにも及ぶ内容。それをまとめ、本多が期待した「アクションシーンだけつまんだアクション映画でないもの」にするために、ずいぶんと瀬々監督も苦労したようだ。

瀬々:原作の中にはとんでもないことも書かれていますから(笑)、それこそハリウッド映画並の出来事が。コンパクトにはするんですけど、ニュアンスは残さないといけない。やっぱり全部やろうとするのは難しいかなという内容でした。ただ、原作の良さである各登場人物のキャラクターや、普通の若者的な部分、能力者であっても、日常と近いところに存在しているのが面白い。そういうところを大事にして、かつアクションを密接にしながら描きたいなと思っていましたね。

2015年3月から連続リリースされた、文庫版「ストレイヤーズ・クロニクル」全3巻(集英社文庫より発売中)/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

2015年3月から連続リリースされた、文庫版「ストレイヤーズ・クロニクル」全3巻(集英社文庫より発売中)/(C)本多孝好/集英社 (C)2015「ストレイヤーズ・クロニクル」製作委員会

苦労したのは脚本だけではない。撮影も全編オールロケにこだわった。中でも代表的なところを幾つか教えてくれた。

瀬々:映画の撮影ではよく使われるんですが、クライマックスシーンは茨城県の高萩。廃墟ですけどね。他には所沢の航空公園。本当は僕の中では、ニューヨークのセントラルパークのイメージがあったんですが(笑)。あと印象的なのは、豊原さんが登場するシーンの通路。あれは、大田市場なんですよ。市場の通路には見えないでしょ? プチ近未来感を出したかったので。あれも探すのが大変でしたね。

そうやって苦労と徹底したこだわりを経て完成した映画を観た本多の感想は「青春期にしか許されないようなある種の悩みのようなものが、“死”や“破綻”というリミットをかけられることで凝縮される有り様が非常に濃密に描かれているなと」と、瀬々監督の手腕が確かなものだったと改めて感じたよう。

最後に2人に「映画を観る前に原作は読むべきか? 読まないべきか?」という、ある種究極の質問をぶつけてみた。

瀬々:観てから読んでも、読んでから観ても、どちらでも大丈夫だと思いますよ。(原作という)ある解釈の中で作られている映画なので。…どっちがいいのかな?

本多:この映画に限らないんですけど、やっぱり映像の持っている力って強いんですよ。特にビジュアルイメージって本当に強いものだと思うし、小説家からすると、映像を観てからの小説はやっぱりちょっと怖いですね。作家としては、できることなら読んでから観て欲しいです。もちろん観てから読んでも全然いいんですけど、映画を観たら、原作もぜひ読んでくださいね(笑)。


映画『ストレイヤーズ・クロニクル』
新宿ピカデリー他 全国大ヒット公開中

監督:瀬々敬久(『ヘヴンズストーリー』、『アントキノイノチ』など)
原作:本多孝好「ストレイヤーズ・クロニクル」集英社刊
キャスト:岡田将生、染谷将太、成海璃子、松岡茉優、白石隼也、高月彩良、清水尋也、鈴木伸之、栁俊太郎、瀬戸利樹/黒島結菜、豊原功補、石橋蓮司、伊原剛志
脚本:喜安浩平(『桐島、部活やめるってよ』“第37回日本アカデミー賞優秀脚本賞受賞”)、瀬々敬久
音楽:安川午朗(『八日目の蝉』日本アカデミー賞最優秀音楽賞受賞、『どろろ』、『ヘヴンズストーリー』)
撮影:近藤龍人(『私の男』『桐島、部活やめるってよ』ほか)
アクション監督:下村勇二(『GANTZ』、『プラチナデータ』、『図書館戦争』)
配給:ワーナー・ブラザース映画

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