松坂桃李『日本のいちばん長い日』インタビュー 自身が下した「史上最大の決断」の瞬間は…?

太平洋戦争末期、日本がポツダム宣言を受諾し終戦を迎える1945年。

昭和天皇が降伏を決定した8月14日正午から、天皇自ら玉音放送で国民に終戦を知らせた8月15日正午、その24時間に一体何があったのか──。戦後70年を迎える今、日本の未来を信じ、平和への礎を築くために身を挺した男たちのドラマを描く『日本のいちばん長い日』が公開される。

青年将校を演じた松坂桃李

青年将校を演じた松坂桃李

「宮城事件」で昭和天皇をはっきり描く

半藤一利の傑作ノンフィクション『日本の一番長い日 決定版』を基に、『クライマーズ・ハイ』、『わが母の記』(第35回モントリオール世界映画祭審査員特別グランプリ受賞)の原田眞人監督が、今だからこそ描ける歴史の真実に迫る。

これまでに陸軍大臣・阿南惟幾を主人公として宮城事件を扱った日本映画は、阿部豊監督作『日本敗れず』(1954年)と、岡本喜八監督作『日本のいちばん長い日』(1967年)。両作品とも昭和天皇を正面から撮ることはなかったが、本作では昭和天皇の姿や声をはっきりと描いている。

キャスト陣には、役所広司本木雅弘松坂桃李堤真一山崎努ら、ベテランから若手俳優まで日本映画界を代表する面々が揃う。

“日本史上、最大の決断”を迫られる中、終戦に反対しクーデターを決起する青年将校・畑中健二を演じる松坂桃李の鬼気迫る演技が光る。そこで、松坂桃李にインタビューを敢行し、豪華キャストが揃った現場の雰囲気や史上最大の決断の瞬間などを直撃した。

畑中健二は「可哀想な」男

──畑中役をもらい、脚本を読んだ時の心境は?

畑中役と言われた時は緊張というか、不安しかなかったですが、原田監督を信じて走り続けました。

彼は、本当に純粋で日本が勝つことを信じて疑わず、最後まで生き抜いた方なんだなと思いました。今回僕は初めて戦争映画に出させていただいたのですが、今まで日本の戦争映画って緊張感があってすごく激しいイメージを持っていました。今回ももちろん緊張感のあるシーンもありますが、一方では、その時その時代の中で、日常的なものもしっかりと描かれていて、とても僕の中では新鮮な感じでしたね。

──役作りについてもう少し詳しく教えてください。

「純粋な男」として畑中を演じた松坂桃李

「純粋な男」として畑中を演じた松坂桃李

最初に原田監督と「畑中という男は本当に純粋なんだ」と話しました。これまでいろんな方々が口にするんですけど、岡本監督が撮られた作品でも畑中には“狂気”というワードがよく出てきます。でも僕のイメージはちょっと違っていて、純粋な性格で、選択ができる環境ではなく、自分の発言も許されない、そして上に対して殉じていくことによって、ポツダム宣言受諾となった時に信じるものや頼るものがなくなってしまい、そこから彼は間違った正義を持ち始めてしまう。

だから、クーデターを起こして、最終的には自害する。という中での純粋な畑中というのを大事にしていきたかった。完成版を観た時に思ったのは、彼が怖いとか恐ろしいということではなく、可哀想だなと思ったんですよね。選択すらできない状況に追い詰められていく中で、自分が信じる指針というものを持たないと保てていけなかったと思うんですよね。

役所さん演じる阿南陸相とお酒を酌み交わすシーンの中で、「どんどんいけ、どんどんいけ」っていうのがあって、その表情と言葉がすごくフラッシュバックするんですよね。その言葉を信じ続けた結果が、今回僕が畑中を演じたところに行き着いたと思います。

──こうした戦争をテーマにした作品に出演するにあたり、特別に準備したことはありますか?

監督からいただいた資料を読み込み、きちんと理解し体の中に入れること、あと軍事訓練がクランクイン前にありまして、それを受けました。

あとは難しい言葉、言いなれない言葉というのがたくさん出てきますのでそれをしっかりと落とし込んで現場に入るようにして。畑中としては純粋な気持ちを大切に、疑うことを知らずにただ信じて突き進むという気持ちを大事にして作品に臨みました。戦争映画への出演は初めてでしたが、坊主頭には抵抗なく現場にのぞめました。坊主頭はなんて楽なんだろうと思いました。本当に坊主っていいですね(笑)。

「役所さんをかぶりつくように見た」

──実際に軍事訓練をやってみて得たものはありますか?

「軍事訓練で作品の世界観に入るヒントが芽生えた」(松坂)

「軍事訓練で作品の世界観に入るヒントが芽生えた」(松坂)

味わったことのないような緊張感が訓練の時から既にあって。軍事指導の方も僕を軍人として扱ってくれるので、厳しかったです。

軍事訓練は所作がメインで、敬礼もそうですけど、ドアの開け方ひとつとっても、自分の名を名乗ってからドアを開けて、そしてきちんと足を揃えてドアを閉めて、そして相手の方を向いてそのまま行くルートみたいないものがしっかりとあって。ひたすら、そういったことを体に叩き込んで、違和感というものを無くす作業でしたね。そのおかげで、撮影に入る時には違和感がなくなっていました。

訓練を受ける度に、70年前に畑中たちもきっとこういうことを、この緊張感の中でやっていたのかなと、思いました。なので、訓練の時から徐々に作品の世界観に入るヒントみたいな感情が僕の中でポツポツと芽生えました。

──役所さんをはじめとする豪華な面々が集まった現場の雰囲気はどうでしたか?

僕は役所さんと絡むシーンが多かったので、役所さん演じる阿南陸相の姿をかぶりつくように見ていました。それが自分が役者をやっていく上で、その空気を味わえたというのが非常に大きな経験になりました。作品同様、結構現場もピリピリしていたので、和やかに話すことはなかったのですが、緊張感を一緒に共有できたことが僕の中では財産というかすごくいい思い出になりました。

──以前、堤真一さんが理想の俳優だとおっしゃっていましたが、共演されていかがでしたか?

堤さんとお会いできたのは一瞬だけだったんですよ。ご挨拶するくらいで話せなかったで、これを機に次こそはっていう期待を込めて、また違う作品でご一緒できたらと思います。

「静」と「動」の怖さ、3回観たらわかる

──昭和天皇をはっきりと描いた日本映画は本作が初となりますが、7年振りのスクリーン復帰となる本木さん演じる昭和天皇を間近でご覧になった感想は?

共演シーンはなかったのですが、記念撮影のシーンでお会いしたときは、姿勢から発する言葉も含めて、動きのひとつひとつが「昭和天皇ってこういう人物だったんじゃないか」という説得力がありました。僕は本木さんの立ち姿に圧倒されましたね。

──戦後70年を迎える今、本作に出演して戦争に対する意識は変化しましたか?

僕は戦争に対して、常に皆がピリピリしていて、日本が勝つことだけを考えて、それこそ狂気じみた空気だったというイメージを持っていました。70年前に生きた畑中を演じて、勿論日本が勝つということは信じてはいたけど、それだけではなく、彼らにも穏やかな時間を過ごしていた時があり、今の日常と共通する部分も確かにあったというのが今回の作品を通して実感できました。

「この作品に出会わなければ、ずっと違うイメージを持っていた」(松坂)

「この作品に出会わなければ、ずっと違うイメージを持っていた」(松坂)

この作品に出会わなければ、ずっと違うイメージを抱いたままで、僕にはわからなかったと思います。戦後70年ですが、もしかすると近い将来に戦争が起こるかもしれないですからね。そうなると、選択や表現の自由が許されている今、自分の考えや行動をしっかりと持たなければいけないなと。ただ今だけのことを考えるのではなく、戦争を知らない世代の人を守るために、その先のことを考えていたのは、本木さんが演じた昭和天皇だったなと僕はこの作品を観て思ったんですよね。そうやって先のことを考えている人もいたんだと。それこそ、畑中は今のことしか考えていなくてクーデターを起こしてしまう。でも昭和天皇は日本国民が滅びないために、先の未来を考えて行動したということを忘れず、僕らもしっかりとした考えを持たなければいけないと思います。

──これから映画をご覧になる方に注目してもらいたいところを教えてください。

僕は青年将校の畑中を演じさせていただいたわけですけども、畑中含め若い者たちが「動」とするならば、役所さんや本木さんは「静」かなと僕は作品を観て思いました。原田監督が撮っていてスピード感もある中で、「動」と「静」それぞれが国を思い、どのように動き、変わっていくのかというのが非常に怖いなと思いました。これから観ていただく皆さんはそういう感想になるかどうかはわかりませんが、僕がどうして怖いなと思ったのかは、観て感じていただければいいと思います。そして、おそらく3回くらい観たらもっとより深いところがわかってくるのではないかなと思います。

──本作で描かれる8月15日の終戦は、降伏か決戦か、いわば日本史上最大の決断であるともいえます。松坂さんにとっての史上最大の決断の瞬間は?

僕は大学を辞めた時ですかね。大学の在学中にこの仕事を始めて休学期間が2年間あったんです。それで期限が迫った時にこのまま役者という仕事でやっていくのか、それとも復学するのか悩みました。結果、大学を辞めてこの仕事をやろうという決断をしたんですが、やっぱり親は怒っていましたね。でも後悔は、無いです!

(取材・文:クニカタマキ)

 

『日本のいちばん長い日』

『日本のいちばん長い日』

『日本のいちばん長い日』作品情報
8月8日(土)全国ロードショー
監督・脚本/原田眞人
出演/役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山﨑努
原作/半藤一利『日本のいちばん長い日 決定版』(文春文庫刊)
配給/アスミック・エース、松竹
(C)2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
www.nihon-ichi.jp

ジャケット¥70,000 トラウザーズ¥28,000(共にポール・スミス ロンドン) ネクタイ¥10,000 靴¥74,000(共にポール・スミス)/全てポール・スミス リミテッド tel 03-3486-1500シャツ¥15,000(ブラックレーベル・クレストブリッジ)/SANYO SHOKAI (C.R.室) tel 0120-340-460チーフ ソックス(スタイリスト私物)

このタグがついた記事をもっと見る

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

松坂桃李

生年月日1988年10月17日(29歳)
星座てんびん座
出生地神奈川県茅ヶ崎市

松坂桃李の関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST