妖艶でカッコいい女たちが魅せるクライムサスペンス『バウンド』

(C) 1996 DINO DE LAURENTIIS COMPANY

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初めて出会ったエレベーターで目線をからめた瞬間、2人のオンナの運命が動き出す。その出会いは人生を切り開くのか?それとも破滅へと導くのか…

才能と魅力的なキャラクターの化学反応

映画「ショーガール」で、人を威圧するほどの妖艶さが際立ったジーナ・ガ―ションがレズビアンを演じ、カルト的人気を博したこの映画。もともと女性らしい体つきだった彼女は、この映画への出演が決まった時点で長い爪を短く切り、体を男性的な筋肉質体型に改造したらしい。この映画で彼女が演じた中性的な女性コーキーを見れば、その役者魂を感じてとれる。実のところ、ラジー賞を総ナメにしてしまった「ショーガール」の次に再起をかけるのが、まだ無名だったウォシャウスキー姉弟(当時は兄弟)の初監督映画で、レズビアン&前科者の役柄ということに対して、ずいぶん周囲からは反対されたらしいが、結果ビックリするほどのハマり役となった。

また、同じく観客を魅了したのはジェニファー・ティリー演じるヴァイオレットの、甘ったるくて、したたかな悪女っぷり。女の香りで男も女もおびき寄せ、“従いながら支配する”テクニックに感服する。この映画の評価が高いのはウォシャウスキー姉弟の独特な世界観と、テンポが良くひねりが効いた脚本によるものが大きい。しかし、彼女たちが演じたキャラクターの魅力が化学反応を起こし、より絶大な魅力を発揮したのは間違いない。

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スタイリッシュで粋な色っぽさ

ウォシャウスキー姉弟といえば言わずと知れた「マトリックス(1999年)」を生み出した張本人たち。当時はCGやワイヤーアクションによる映像革命ばかりが話題になったが、今となれば、あの時代既にコンピューター内部の世界観を表現していた物語の奥深さに驚く。そんな映画界の先駆者たちが、初めて監督、脚本、製作総指揮、音楽など多くの役割を務めた「バウンド」は、またそれとは違う世界観を持ち異彩を放っている。

キーワードを挙げるとしたら「スタイリッシュ」「色」「粋」だろうか。同性カップルの大胆な濡れ場シーンもあるが、ただ女たちが目線を絡ませたり、排水管をひねり手が水に濡れていくアップなど、一見些細なシーンにも色を感じる。そして、無機質とアンティークな雰囲気をあわせ持つインテリア、女たちが犯罪を企てるシーンと陥った状況、実際に行うシーンの絶妙な同時進行、数々の「粋」なセリフたち、どれもが映画をスタイリッシュに仕上げ、テンポを良くするので観客を飽きさせない。

「セックスと犯罪は似ている」と女は言う。根底にあるものが愛なのか、欲なのか、支配なのか、それとも全てなのか区別がつかない戸惑いが、観客にも起るだろう。

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不思議な爽快感を持つクライムサスペンス

この映画は、状況がわからない冒頭シーンから始まり、徐々に事実が明かされていくために、早く知りたいという逸る気持ちがラストシーンまで暴走する。手に汗握るのは、終始、女たちの目線で物語が進行するため共感してしまうからだろう。しかし、この映画には女たちのほかに、味わいある男性キャラクターも登場する。

組織の重鎮ジョン・P・ライアン演じるミッキーは、温かく男気にあふれ、マフィアではあるが「組織の良心」ともいうべき存在だ。また、ヴァイオレットが情婦として一緒に暮らす、ジョー・パントリアーノ演じるシーザーは、私利私欲のためには手段も選ばない男だが、最後には同情してしまう人もいるようだ。

ちなみに、シーザーはマフィアのマネー・ロンダリング(犯罪がらみの資金洗浄)担当。もちろん、その言葉のまま洗浄するわけではなく、追跡を逃れるためお金の出所をわからなくする仕事だ。しかし、途中、本当に洗われて洗濯バサミで干された、莫大な量の紙幣を観客は目撃するだろう。まさに、曲がりくねったハイセンスに観る側が翻弄されるクライムサスペンス。観終わったあとに不思議なほど爽快感が生まれるのもこの映画の特徴と伝えておこう。

(文:陽子さん)


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