『愛と青春の旅だち』はただの恋愛映画じゃない!

1982年、リチャード・ギアを大スターへ押し上げた大ヒット映画、『愛と青春の旅だち』が、本当に描こうとしていたものは、何だったのか? 芥川賞候補作家の指摘を元に、その裏側を読み解く。

愛と青春の旅だち

愛と青春の旅だち

恋愛映画は不遇?

恋愛がテーマの大ヒット大作映画というのは、後年、評価が下がりがちなものである。今回取り上げる『愛と青春の旅だち』も、映画データベース・サイトIMDbのユーザー評価では、10点満点中平均7.0点(2015年7月31日現在)で、同年に公開された『ブレード・ランナー』が、同サイトで平均8.2点をマークし、未だに高評価を保っているのと比較すると、なんとなくその立ち位置が見えてくる(ちなみにギア主演の『プリティ・ウーマン』は平均6.9点で、これまた低い)。恐らく、今現在、『愛と青春の旅だち』を、リチャード・ギアという大スターの知名度だけで持ち上げられた大味な恋愛映画、という風に考える向きは少なくないのだろう。いやいや、実は、『愛と青春の旅だち』とはそんな単純な映画ではないのである。

「出自」が映画を読み解く鍵だった!?

私がそれに気付いたのは、芥川賞の候補にもなったことがある作家の小谷野敦が自身のブログ「猫を償うに猫をもってせよ」の2013年8月20日の記事で、この映画を取り上げていたことからだった。そこで小谷野は、唯一の黒人士官候補生であるペリマンへ、相手の人種を意識することなく声をかけてやる女子士官候補生シーガー(演者はリサ・アイルバッハー)に対し、ギア演じる士官候補生メイヨが、実は不快感を覚えている、という指摘をしている。

ここで重要なのは、メイヨとシーガーの出自の差だ。メイヨというのは、父が軍人だった関係から、フィリピンで幼少期を過ごした経験を持つ。しかし、決して恵まれた家庭環境ではなく、父は飲んだくれで、母は自殺している。住んでいる場所も酷いところで、子供だった彼は、現地の子供にいじめを受けて育った。メイヨは生き残るため、タフにならざるをえず、人間に対し相当な不信感を抱いている。士官学校に入っても、メイヨは、同室の仲間に対し、金を払ってもらわない限り親切にすることはない。一方、シーガーは名家のお嬢さんである。そして、彼女は立派な人々に囲まれ、他人を疑うことのないような人間に成長した。

『愛と青春の旅立ちの』見どころ

つまり、生き馬の目を抜くような世界で育ったメイヨとしては、「お前は上流の生まれで、人間の汚さを知らないから、誰にでも親切にできるのだ」と考えているのである。直接的な台詞ではなく、キャラクターの行動と設定だけで、こうした背後関係を浮かび上がらせる脚本は、非常に巧みだと言えよう。

『愛と青春の旅だち』の最も大きな見どころは、メイヨが、そうした自身の中に巣食う人間不信を克服し、ある場所で危機に陥るシーガーを、無償で助けるシーンに集約されている。「恋愛映画なんて、どうせ美男美女がワーワーやってるだけなんだろ」と思っている人に見て欲しい一本だ。

(文:海人さん)


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