黒木華がおすすめする「夜に一人で観たい」10本

舞台、映画、TVドラマでキラキラと輝く女優、黒木華さん。“感情”を思い出すために映画を観ることも多いという彼女が、夜にじっくり浸りたいとっておきの10本を挙げてくれた。


黒木華がおすすめする「夜に一人で観たい」10本

ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

オフ・ブロードウェイで熱狂的人気を博したミュージカルを映画化。女性への性転換手術に失敗したロックシンガーの、波乱に満ちた半生をグラムロックにのせて描く。

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ダンサー・イン・ザ・ダーク

息子を持つシングルマザーを襲う不条理な運命をミュージカルシーンを交えて描いた人間ドラマ。第53回カンヌ国際映画祭でパルムドール&女優賞(ビョーク)を受賞。

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バタフライ・エフェクト

日記を書き直すことで過去の出来事を変えられる能力に気づいた男。彼は最愛の女性を救うため、何度も過去を修正するが、彼の人生も予期せぬ方向に転がり始める。

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うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー

世界的に知られる押井守の出世作となった劇場用アニメ。文化祭を明日に控え、準備で大騒ぎの友引高校。だが翌朝、どういうわけかまた文化祭前日に戻っていた。

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ルビー・スパークス

スランプに陥った小説家と、彼が作り上げた理想のヒロイン、ルビー・スパークス(カザン)が織り成す恋愛物語。監督は『リトル・ミス・サンシャイン』の監督コンビ。

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ウォールフラワー

全米で社会現象を巻き起こしたベストセラー青春小説を若手スター共演で映画化。内気な高校生が自由奔放な先輩たちと出会い、生活が一変。初めての友情と恋を知る。

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エターナル・サンシャイン

ジム・キャリー主演のホロ苦いラブストーリー。別れた恋人が自分との思い出を消すために記憶除去手術を受けたと知った男が、自らもその手術を施そうとする。

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ポンヌフの恋人

孤独な大道芸人と失明の危機にある画学生の恋。監督の恋人だったジュリエット・ビノシュがヒロインを演じたが、多大な費用と時間を費やした本作の撮影中に破局。

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下妻物語

田園風景が広がる茨城県の田舎町、下妻を舞台に、ロリータ少女とヤンキー女の友情を描いた青春映画。劇画調の画面構成と極彩色の映像は、中島哲也監督の真骨頂。

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胸騒ぎの恋人

カナダの俊英グザヴィエ・ドランの長編第2作。親友同士だったゲイの青年とストレートの女性。だがパーティで出会った美青年に二人とも一目惚れしてしまう。

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『ヘドウィグ〜』は、自分にとって大切なことってなんだろう?という葛藤に心を揺さぶられた

映画館に一人で行くのが好きなんですけど、あの暗い空間を家でも味わいたくて、夜にDVDを観ることも多いです。そして観たあと、余韻に浸りながら眠りにつくのが好き。たまにホラー映画を観たあと、夢の中で映画の続きが始まって、思わず飛び起きちゃったりもしますけどね(笑)。とにかくいい映画は人にも教えたくなるんですが、いざ観るときは“独り占め”したい。今回はそんなきちんとかみしめて観たい映画を選んでみました。

『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』は、観るなら昼間よりも断然、夜ですね。主人公のヘドウィグは、セクシャルマイノリティで自分とはかけ離れた世界の人に思えますが、全編通して「自分にとって大切なことってなんだろう?」という普遍的な葛藤が描かれていて、心を揺さぶられました。主人公の感情を歌詞で表現した曲も全部いい! しかも俳優さんが全身全霊で歌い上げている姿が心にグサッとくるし、本当に歌が好きなんだなってことがひしひしと伝わってくるんです。森山未來さんが演じた舞台版もとてもすばらしかったですし、今度舞台化されるときはぜひ参加させてほしいです。

音楽映画でいうと『ダンサー・イン・ザ・ダーク』も好きですね。ヒロインの苦しさと、演じるビョーク自身が放つ明るさや楽しさのギャップには、いつも泣けてきちゃう。

『バタフライ・エフェクト』(C)MMIV ALL RIGHTS RESERVED

『バタフライ・エフェクト』(C)MMIV ALL RIGHTS RESERVED

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(C)高橋留美子/小学館

『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(C)高橋留美子/小学館

先の読めない『バタフライ〜』一日を繰り返す設定が映画的な『〜ビューティフル・ドリーマー』

『バタフライ・エフェクト』は、シリーズの中でも、やっぱり第1作がいちばん好きです。現実を変えるためにタイムスリップする映画はたくさんあるけど、この作品はどんな結末になるのか、先の読めない展開がスリリング。SF的な要素に加えて、恋愛の切なさも描かれていて、キュンときます。同じくちょっと変わったSFモノだと、『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』も好きな一本。アニメなんだけど、同じ一日を何度も繰り返すという設定がとても映画的だなと思いました。もともと原作コミックの大ファンだったんですが、この作品は非日常の描写がちょっと不気味で、いつもの『うる星やつら』じゃないぞという感じです。「みんなと一緒にいたい!」って言うラムちゃんのセリフがかわいらしくて大好き。ちなみにシリーズ通して好きなキャラクターはあたるくん。いつもはサエないあたるくんが初めてカッコよく見える映画でもありますね(笑)。

『ルビー・スパークス』(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ルビー・スパークス』(C)2013 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『ウォールフラワー』(C) 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

『ウォールフラワー』(C) 2013 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved.

恋愛映画はニガテだけれど人間的な成長が描かれている作品にはキュンとくる

『ルビー・スパークス』は俳優の間宮祥太朗くんからオススメされました。そもそも私、ストレートな恋愛映画がニガテで……。でもこの映画は、そんな自分が観てもキュンとする作品でした! ストーリーは、小説家の前に、彼が妄想したヒロインが現れて恋に落ちるというちょっと突飛なもの。でも現実に引き戻されるにつれてワンシーン、ワンシーンにロマンチックなだけじゃない苦しさが加わっていくのが切なくて。最初はとにかくダメで屈折していた主人公が、恋愛を通して人間的に成長する姿が描かれ、最後は彼のことがとても愛おしく感じるんです。ちなみに、主人公を演じたポール・ダノとヒロイン役のゾーイ・カザンが実際の恋人同士だというのをあとから知って、彼らのステキな関係性が画面にも表れていたんだなと納得しました。そして同じく“こじらせ系青春映画”の『ウォールフラワー』は、『少年は残酷な弓を射る』のエズラ・ミラーが主人公の先輩役で出ているので観ました。孤独な高校生が、友情や恋をきっかけに自分の殻を破ろうとする過程が丁寧に描かれているのでオススメです。

『エターナル・サンシャイン』(C) 2004 FOCUS FEATURES,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『エターナル・サンシャイン』(C) 2004 FOCUS FEATURES,LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

ミシェル・ゴンドリーの作品は“オシャレ”だけじゃない人間ドラマとしても見ごたえがある

恋愛を通して成長していくという意味では、『エターナル・サンシャイン』ははずせない映画。この作品をきっかけにミシェル・ゴンドリー監督が好きになりました。まずヒロインの髪の色が変わっていくという映像のトリックがゴンドリーらしいですよね。家が砂に埋まっていったり、ジム・キャリー演じる主人公が急に赤ちゃんになっちゃうシーンも好きでした。でも、そんな子どもっぽい遊び心を盛り込みつつ、テーマとして、相手をちゃんと見つめることの大切さみたいな“大人の部分”も描いているのが、彼の作品の本当の魅力だと感じていて。ゴンドリー作品は“オシャレ映画”としてくくられることが多いですが、人間ドラマとしても見ごたえがあるんです。自分も誰かに言われてみたいなって思うステキなセリフがたくさんありますし。私、自分の“感情を思い出す”ために映画を観ることが多いんですね。「苦しくなりたい」とか「楽しくなりたい」とか。お芝居以外の日常ではあまり感情の起伏が激しくない自分にとって、『エターナル・サンシャイン』はいろんな感情を教えてくれる存在です。…って、もう映画と付き合っているみたいな感覚ですね(笑)。

レオス・カラックスの作品は寡作だからこそ一つひとつが輝いて見える

いろんな感情を教えてくれるというより、“感情が引き出される”のは、レオス・カラックス作品。どれを挙げるか迷いましたが、なかでも『ポンヌフの恋人』は、温かいココア片手にきちんとかみしめたい系の映画です。地下鉄駅構内を走るミシェルと彼女を追うアレックスのシーンは鮮烈でした。ドニ・ラヴァンの、情けないけど実直で愛情にあふれた演技もすばらしくて。一緒にいたらダメになるのがわかっているのに惹かれてしまうラブストーリーにグッとくるし、もろいものとは何て美しいんだろうと思わされました。同じカラックスの『ホーリー・モーターズ』も夜に独り占めしたいですね。監督自身が扉を開けて劇場に入る冒頭シーンから「これぞ映画だ」という映像が切り取られていきます。教会の中をアコーディオンの楽隊が行進していくインターミッション(休憩)は圧巻でした。カラックス自身の人生を映画にしたと言われていますけど、人生と映画が地続きだなんてすごくステキですよね。『ポンヌフの恋人』で橋のセットを作っちゃったのも納得です(笑)。カラックスは長編は5作品しか撮っていない監督ですが、だからこそ一つひとつの作品が輝いて見えるんでしょうね。

『下妻物語』(C)2004「下妻物語」製作委員会

『下妻物語』(C)2004「下妻物語」製作委員会

『胸騒ぎの恋人』(C)2010 MIFILIFILMS INC

『胸騒ぎの恋人』(C)2010 MIFILIFILMS INC

グザヴィエ・ドランは色彩感覚、映像スタイル全部含めてセンスが抜群

ほかにオススメしたいのは、『下妻物語』。もともと嶽本野ばらさんの原作が好きで、映画化された当時は「絶対観なきゃ!」と思いました。自分が思い入れのある作品だとたまにガッカリすることもあるんですけど、この映画はキャスティングがピッタリ。そして中島哲也監督の演出で、原作の持つエキセントリックさがさらにパワーアップしていて面白かったです。それとここ最近、注目しているグザヴィエ・ドラン監督の作品も一本挙げたいです。『わたしはロランス』も好きなんですが、独り占めしたい度で言うと『胸騒ぎの恋人』かな。男女のやりとりや色彩感覚、映像スタイル、全部含めてセンスが抜群。監督自身がセクシャルマイノリティということもあってか、作品にも彼の繊細な感情が見え隠れしているところが好きです。こうやってラインナップを並べてみると、どこか屈折している主人公の映画が多いですね。そしてどれもロマンチック。「なぜ一人で観たいか?」を改めて考えると、恋愛映画はどうしても照れちゃうし、誰かと一緒だと単純に恥ずかしいというのもあるかもしれない(笑)。でもいつかは二人で観る日がくればいいなと思っています。


黒木華

1990年大阪府生まれ。『小さいおうち』('14)で第64回ベルリン国際映画祭銀熊賞(女優賞)を受賞。連続テレビ小説『花子とアン』('14)やTBSテレビ60周年特別企画『天皇の料理番』('15)ではヒロインの俊子を好演した。

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