【レビュー】『キングスマン』―見逃し厳禁の傑作スパイアクション!

(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

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本作の監督を務めたのは、『キック・アス』(10)のマシュー・ヴォーン。同作におけるド派手なアクションと教育上よろしくない描写で世界中から圧倒的な支持を受けた彼は、スパイ映画というジャンルに挑んでもその作風を変えることはなかった。彼の最新作『キングスマン』は、イギリス・ロンドンに拠点を置く、どの国にも属さないスパイ機関「キングスマン」の活躍を描いた傑作スパイアクションだ。

近年のスパイ映画では、『ボーン』シリーズと『007』シリーズ、そして『ミッション: インポッシブル』シリーズが三大勢力として挙げられるが、この三大勢力で見所となってきたのは、いずれも本格志向のアクションだった。『ボーン』シリーズでは実践的な近接格闘とフリーランニングの要素が批評家から高く評価され、『007』シリーズでも、ダニエル・クレイグがボンドを演じた最初の作品『007 カジノ・ロワイヤル』(06)ではパルクールが取り入れられ、それ以降も先代たちの作品より激しいアクションが描かれるようになっている。『ミッション: インポッシブル』シリーズでは、トム・クルーズがスタントなしで挑む超人的なアクションが人々を驚かせ続けてきた。

(C)2015 Twentieth Century Fox Film Corporation

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もちろん、アクションを売りにしないスパイ映画も存在する。元MI6の諜報員で現在は作家のジョン・ル・カレの原作を映画化した『裏切りのサーカス』(11)がその代表だ。ゲイリー・オールドマンやベネディクト・カンバーバッチらイギリス出身の演技派を配した同作は、複雑なストーリーと、気品を感じさせる「英国的な美意識」が、従来のスパイ映画とは一味違う魅力を醸し出し、批評的に成功を収めた。

マシュー・ヴォーンは、これらのスパイ映画の存在を踏まえて、三大勢力に見劣りしない本格アクションと、『裏切りのサーカス』で描かれたものに通じる「英国的な美意識」を本作に組み込み、さらには彼らしいギャグを調和させることで、斬新なスパイ映画を完成させている。

アクションではハイスピードとスローモーションを使い分けることで緩急を付け、アクション映画初出演のコリン・ファースとタロン・エガートンのアクションを一級品に仕立てている。巧みな編集によって実現された超長回し(に見せかけた)アクションは、他のスパイ映画に類を見ない圧倒的な爽快感を感じさせるし、潜水やスカイダイビングなどの大掛かりなアクションが与えるスリルは、是非とも劇場の大画面で味わってほしい。
一方で、歴史あるロンドンの仕立て屋街「サヴィル・ロウ」を中心とする美しい街並み、コリン・ファース演じるハリーが見せる一つ一つの振る舞いと“Manners maketh man”の名台詞は、若干ステレオタイプな嫌いはあるものの、激しいアクションとは対照的な落ち着きのある「英国的な美意識」を強く感じさせ、鑑賞者をストーリーに引き込む。

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スパイものでは悪の存在も重要になるが、「キングスマン」と対決する、サミュエル・L・ジャクソン演じる悪役ヴァレンタインは、いかにもアメリカ的な悪役として抜群の存在感を放っている。アメリカで通信会社を経営するヴァレンタインは、大統領に説教するほどの実力者だが、ベースボール・キャップにスーツを合わせるというポップな出で立ちで、ハリーら「キングスマン」とは真逆。もはや存在そのものがギャグだ。そんな彼が従える、アルジェリア系の新鋭女優ソフィア・ブテラが演じる暗殺者ガゼルの、両足が鋭利な凶器という、アメコミ的でブッ飛んだキャラクターデザインにも拍手を送りたい。彼らの存在があるからこそ、マシュー・ヴォーンらしいポップさ、コメディ性が一層際立っている。

終盤にかけて加速するアクションは超絶爽快。そして「威風堂々」なラストには爆笑必至。この秋、「間違いない一本」だと断言できる本作を見逃すな!

(文:岸豊)


映画『キングスマン』
大ヒット上映中

原題:Kingsman:The Secret Service
監督:マシュー・ヴォーン
原作:マーク・ミラー
製作:Marv Films
出演:コリン・ファース、マイケル・ケイン、サミュエル・L・ジャクソン、タロン・エガートン、マーク・ストロング
配給:KADOKAWA
映倫区分:R+15

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