『ヴィンセントが教えてくれたこと』と併せて見たい! 笑えて泣ける! 老人と少年の友情についての映画6選

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『ヴィンセントが教えてくれたこと』/(C)2014 St. V Films 2013 LLC. All Rights Reserved.

現在公開中の『ヴィンセントが教えてくれたこと』(14)は、不良老人と心優しい少年の交流を描いた友情譚だ。振り返ってみれば、「老人と少年の友情」というテーマは、国境を問わず、古くから様々な映画のテーマとなってきた。そこで今回は、笑えて泣ける、老人と少年の友情を描いた作品を紹介する。

『老人と子供』(67)

フランス・ヌーヴェルヴァーグの巨匠クロード・ベリ監督・脚本作品の『老人と子供』をご存知だろうか。本作はクロード・ベリの監督デビュー作で、8歳のユダヤ人少年と、身分を隠した彼が預けられた家の主で、熱狂的右翼のユダヤ人排斥主義者の老人が紡ぐ友情の物語だ。

アラン・コーエン演じる少年クロードの愛らしい姿、そして最初はクロードを毛嫌いしていたミシェル・シモン演じる老人ペペが、少しずつクロードに心を開いていく姿には思わず頬が緩んでしまう。しかし、良き友人となった彼らにも別れの時が訪れる。

「ユダヤ人であることを誰にも言ってはいけない」と父に言い聞かされたクロードが、何も知らないぺぺとの別れを迎える悲しく切ないラストには、涙を禁じえない。

『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』(71)

アメリカン・ニューシネマの異色作『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』は、心優しき老女と死に興味深々の少年の交流を描いた物語だ。主人公のハロルド(バッド・コート)は、死んだふりと見知らぬ人の葬儀への出席がやめられないという風変わりな少年。彼は家族や学校から浮いた孤独な存在だったが、ある日葬儀で、自分と同じように他人の葬儀へ出席するという趣味を持つ老女のモード(ルース・ゴードン)に出会い、彼女に特別な気持ちを抱くようになり…。

ハロルドとモードがのんびりとしたテンポで触れ合う姿には、思わずクスッと笑ってしまうと同時に、友情や愛に年の差は関係ないということを教えられる。終盤における「主人公(ハロルド)の挫折」は、70年代にかけてハリウッドで流行したニューシネマの特徴だが、その直後に彼が見せる姿には、ニューシネマらしからぬ「希望」を感じることもできる。

『菊次郎の夏』(99)

当時52歳のビートたけしが演じたチンピラおやじの菊次郎は、老人と呼ぶには若いかもしれない。しかし、彼とひとりぼっちの少年、正男くん(関口雄介)が繰り広げる珍道中を見ていると、そんなことは忘れてしまうほど笑えてくる。芸術に造詣のある北野武監督らしい、絵画を想起させる美しい画面構成と、久石譲作曲のテーマ曲『Summer』の爽やかな旋律も素晴らしい。

本作では、菊次郎が正男くんに競馬などのよろしくない教育を施す姿が笑いを生んでいるが、これは本稿で最後に紹介する『ヴィンセントが教えてくれたこと』に重なるものがある。本作が影響を与えているのかもしれないと考えると、また面白味が増してくる。

『小説家を見つけたら』(00)

『マイ・プライベート・アイダホ』(91)や『グッド・ウィル・ハンティング』(97)で知られる青春映画の巨匠ガス・ヴァン・サントの『小説家を見つけたら』は、ニューヨークのブロンクスを舞台に、世俗から離れて暮らす伝説の小説家ウィリアム(ショーン・コネリー)と、文才に恵まれた黒人少年ジャマール(ロブ・ブラウン)の交流を描くドラマだ。

「才能溢れる少年と、彼を導く大人の交流」というストーリー構造は、『グッド・ウィル・ハンティング』と同じだが、『グッド・ウィル・ハンティング』が異次元レベルの天才の姿を描いたことに対して、本作の主人公であるジャマールは、あくまでも等身大の少年なので、より感情移入がしやすい作品になっている。偏見によって握りつぶされかけたジャマールの才能が、世捨て人だったウィリアムによって救われるクライマックスには感動すること間違いなし。思いがけぬラスト、まさかのゲスト出演にも注目だ!

グラン・トリノ』(08)

クリント・イーストウッド主演・監督作品『グラン・トリノ』は、妻を亡くした頑固な老人ウォルター(クリント・イーストウッド)と、隣家に引っ越してきたモン族の少年タオ(ビー・ヴァン)が織り成す感動のドラマだ。

最初は得体の知れないモン族の人々を毛嫌いしていたウォルターだったが、不良に絡まれるタオの弱々しい姿を見ていられず、彼を強い男にするため手助けするようになる。そしてタオも、一見すると頑固で不器用なウォルターが見せる優しさに心を開いていくのだが…。

タイトルにもなっているグラン・トリノは、アメリカの自動車産業の最盛機を象徴する車種だ。しかし、劇中ではウォルターが働いていた自動車会社、そしてウォルターが住むデトロイトを中心とするアメリカの自動車産業が、日本車の流入によって衰退していることが示されている。

いわばグラン・トリノは過去の遺物である。それでもウォルターは愛車であるグラン・トリノを磨き、愛し続けている。なぜなら、グラン・トリノは彼の人生を象徴する車だからだ。

そんな本作最大の見所は、その高貴な精神に心を打ち抜かれること必至の、ウォルターとモン族の不良の対決シーン。『夕陽のガンマン』シリーズや『ダーティハリー』シリーズで、銃を使って多くの人々の命を奪ってきたイーストウッドが本作で見せた新たな一面は、映画ファンだけでなく、多くの映画評論家をも唸らせた。

『クーキー』(14)

老人と少年の友情は、人間の間だけにあるのではない。チェコの名匠ヤン・スヴェラーク監督の『クーキー』で描かれたのは、持ち主の少年と離れ離れになった泣き虫で甘えん坊のぬいぐるみクーキーと、彼が出会った森の長ヘルゴットが織り成す冒険譚(たん)だ。

可愛くてたまらないクーキーの冒険と、彼の帰りを待ち続ける持ち主の少年オンドラとの愛にも感動できること間違いなしの本作だが、ファンタジックな世界観の中に、自然と人工物、独裁と民主主義といった社会的な要素を孕むコントラストが組み込まれているので、単純なエンターテイメントに留まらない深みを感じることができるのも素晴らしい。クーキーとオンドラを演じ分けた監督の実子オンジェイくんの演技にも注目!

『ヴィンセントが教えてくれたこと』(14)

最後は、現在絶賛公開中のビル・マーレイ主演最新作『ヴィンセントが教えてくれたこと』を紹介しよう。酒とギャンブルが大好きな不良老人ヴィンセント(ビル・マーレイ)は、隣家に引っ越してきた少年オリバー(ジェイデン・ライベルハー)を、ひょんなことから預かることに。互いに気まずい雰囲気だったものの、ふとしたことから打ち解けた2人は、毎日一緒に遊ぶ友達になり…。

自由気ままで「子供な大人」であるヴィンセントと、寛大な心を持つ「大人な子供」であるオリバーが築く友情には、思わず笑ってしまうギャグがたくさん詰め込まれている。

主演のビル・マーレイは、さすがの「抜け感」のある名演を見せており、本作がデビューとなったオリバー役のジェイデン・ライベルハー、オリバーのシングルマザーを演じたアメリカNO.1コメディエンヌのメリッサ・マッカーシー、ロシア系の娼婦ガタをインパクト大に演じた名女優ナオミ・ワッツらの熱演にも注目だ。コメディ性の強い本作だが、ラストでは思わぬ感動が鑑賞者を包み込むのが素晴らしい。ヴィンセントへの思いが込められたオリバーの感動的なスピーチは、あなたの瞼の裏をきっと熱くさせることだろう。

(文:岸豊)

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