【レビュー】『ジョン・ウィック』―キアヌに久々の当たり役で続編にも期待大

Motion Picture Artwork (c)2015 Summit Entertainment, LLC. All RightsReserved. (c)David Lee

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調子に乗ってしまったクズどもをキアヌが成敗しまくるハードボイルド・アクション!

キアヌ・リーブスを覚えているだろうか。『マイ・プライベート・アイダホ』(91)や『スピード』(94)といった作品でブレイクし、『マトリックス』(99)のネオ役でトップスターに上り詰めた超イケメン俳優だ。しかし最近のキアヌは、スクリーンではなくゴシップに登場するばかり。まるでホームレスのような服装や激太りをパパラッチされ、「メジャースタジオからのオファーも少なくなった…」と自ら述懐するなど、あのネオを演じた俳優とは思えない、冴えないキャリアを送っていた。

…そんなキアヌに久々の当たり役が出た!彼の主演最新作『ジョン・ウィック』は、愛するものを奪われた凄腕の元殺し屋が、調子に乗ってしまったクズどもを成敗しまくるハードボイルド・アクションだ。

物語の舞台はニューヨーク。元殺し屋のジョン・ウィック(キアヌ・リーヴス)は、引退後に結婚して心から愛し合った妻ヘレン(ブリジット・モイナハン)を病気で亡くしてしまう。悲しみに暮れるジョンだったが、ジョンのもとに一匹の子犬が届く。ヘレンは自分の死期を感じていたため、ジョンが寂しくないように、死後に子犬を送る用意を済ませておいたのだ。思わぬ贈り物に戸惑うジョンだったが、デイジーと名付けられた無邪気な子犬に少しずつ心を開いていく。

そんなある日、ジョンはふとしたことから旧知のマフィアのボス、ヴィゴ(ミカエル・ニクヴィスト)の息子に目をつけられて夜襲を受けた結果、大切な車とデイジーを奪われてしまう。ヘレンと結婚した時に二度と銃を持たないと誓ったジョンだったが、遂に殺し屋としての自分を解き放ち、壮絶な復讐を始める……。

Motion Picture Artwork (c)2015 Summit Entertainment, LLC. All RightsReserved. (c)David Lee

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本作の監督を務めたのは、『マトリックス』でスタントを担当したチャド・スタエルスキと、本作のプロデューサーであり、スタントマンとして輝かしい実績を持つデヴィッド・リーチ(クレジットはなし)だ。彼らは、キアヌ主演の『コンスタンティン』(05)、ウォシャウスキー姉弟の傑作SFアクション『V・フォー・ヴェンデッタ』(05)、ザック・スナイダーの『300』(07)など名作の数々でスタントおよびスタント・コーディネーターを務めてきた、正真正銘のアクションのプロだ。

本作の魅力は、チャドとデヴィッドだからこそ実現できた超ハイレベルでこだわりのあるアクション。まずジョンの射撃のスタイルに、「センター・アクシス・リロック・システム」を採用しているのが渋い。これは、標的に対して腕を伸ばすのではなく腕を引いて銃を構えることで、射撃姿勢への移動や照準の調整、素早いマグチェンジ(リロード)を可能にする、戦術的優位性に長けた射撃スタイルだ。アメリカの警察機関などでも実際に採用されているので、その評価は極めて高く、本作のアクションに確かなリアリティを与えている。

また、アクションの見せ方も素晴らしい。一般的なアクション映画は「細かいカットの連続による見せかけの速さ」で観客を騙そうとするが、本作は長回しで展開される「一連の流れで見せる速いアクション」が多く、アクションに嘘臭さを感じさせない。揉み合いのなかで投げ技や関節技を繰り出したジョンが、動きを封じられた敵にヘッドショットで止めを刺しているのも、殺しの描写に手抜きがなく好感が持てる。

そして、アクションに「緊張と緩和」を組み合わせて笑いを生んでいるのも斬新だ。ヴィゴが送り込んだ暗殺チームをジョンが返り討ちにするシーンでは、緊張感あふれる約30秒の長回しの後に思いがけぬ緩和を入れたり、コンチネンタル・ホテルでのジョンとミス・パーキンスの戦いでは、激しい戦闘と、その戦闘が繰り広げられている部屋にホテルマネージャー(ランス・レディック)が電話をかけ続けるのをクロスカッティングで交互に映し出して笑いを誘ったりもする。

アクションだけでなく、洗練された画面構成もグッド。序盤の雨が降る中執り行われる葬儀のシーンでは、本作を象徴する青みがかった画面が美しく、失意に沈むジョンの内面を厳かに物語っている。中盤に登場するコンチネンタル・ホテルのバーでは、豪華なインテリアと美しい色みのライティングが画面を彩る。そして終盤には、物陰から4人の殺し屋が突如現れて「ある人物」を一斉掃射。入れ替わりに「葬儀屋」が登場という、美しすぎる処刑シーンも!

Motion Picture Artwork (c)2015 Summit Entertainment, LLC. All RightsReserved. (c)David Lee

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ジョンと敵対するボスキャラが半端じゃなく強いので、何度も何度もジョンがピンチに陥るという展開もスリリングで面白い。そして、ジョンがピンチに陥る度に彼を助ける意外なキャラクターの存在にもグッとくる。終盤で激化するガン・アクションとカーチェイスからは一瞬たりとも目が離せないし、かっこいいのにちょっと笑えるラストも良い!

ちなみに、ジョンの背中に刻まれているタトゥーも重要。このタトゥーは、ネイティブ・ハワイアンの言葉で「大胆さは幸運を引き寄せる」を意味している。これは本作におけるジョンの行動を匂わせると同時に、彼がアメリカ軍のハワイ基地にいたことを示唆するものでもある。なぜならこのタトゥーは同基地のカネオヘ湾に駐留している第3海兵隊3大隊のモットーだからだ。

監督を務めたチャドとデヴィットは複数のメディアに対して「『ジョン・ウィック』は3部作になる」とコメントしているので、続編ではこういった彼の過去が明かされるのかもしれない。「大胆さは幸運を引き寄せる」の言葉通り、気が早いかもしれないが、続編が大胆な作風で我々を本作以上に驚かせてくれることに、今から期待したい。

(文:岸豊)


映画『ジョン・ウィック』
大ヒット上映中

出演/キアヌ・リーブス、ウィレム・デフォー、イアン・マクシェーン
監督/チャド・スタエルスキ
配給/ポニーキャニオン

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