【レビュー】『ピッチ・パーフェクト2』―映画ファンたちが求めていた「新しさ」そのもの

(C)2015 Universal Studios.

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べラーズ、今度は世界へ!

大学に入学した主人公ベッカ(アナ・ケンドリック)が、嫌々ながらもアカペラ・グループ「バーデン・ベラーズ」に入部し、ライバルチームとの激闘を通じて成長していく姿をコメディタッチで描いた『ピッチ・パーフェクト』が世界中を爆笑の渦に巻き込んでから3年…映画ファンが待ち望んだ続編がいよいよ完成した。

前作では出演者の一人だったエリザベス・バンクスがメガホンを取った本作『ピッチ・パーフェクト2』では、ベラーズがアカペラ世界大会に出場するまでの過程と、世界一と評されるドイツ代表との激闘、そして卒業を控えるベッカが直面する「オリジナリティの壁」が描かれる。

「トレブル・メーカーズ」との激闘から3年。ベラーズは、今や全米一のアカペラ・グループとして大人気を誇っていた。ある日ベラーズは、大観衆とオバマ大統領夫妻(なんとご本人!)を前にパフォーマンスを行う。順調に進んだステージだったが、クライマックスで満を持して登場した「太っちょエイミー」(レベル・ウィルソン)が思わぬミスを犯してしまい、全米に醜態が放送されてしまう。事態を重く見た連盟は、ベラーズに国内大会への1年間の出場停止を命じる。これを不服としたベッカは、国外で行われる「アカペラ世界大会」で優勝したら、出場停止を取り消すと連盟に約束させる。しかし、優勝候補と言われるドイツ代表の「DSM」の実力はべラーズ以上。焦るべラーズだったが、ベッカはインターンで多忙を極めており…。

前作では、常勝の男性アカペラ・グループ「トレブル・メーカーズ」に対して、落ちぶれた女性アカペラ・グループのベラーズがベッカと新入生の加入によって再生し、最後には勝利を収めるという展開を見せた。この明確な「男性vs 女性」の構図における女性の勝利が意味していたのは、「男性優越主義の否定と女性の勝利」という、フェミニズム的なメッセージだった。通常、ハリウッド映画では男性が主役を務めることが多く、女性は脇役に甘んじることが多い。つまり、男性優越主義が罷り通っているのだ。

しかし、『ピッチ・パーフェクト』は女性主体の映画であり、その傾向を正面から否定した。しかも、男性ばりに体を張り、下ネタも厭わない若手女優たちの頑張りは、「男性が主体の映画」に飽きていた映画ファンたちが求めていた「新しさ」そのものだったので、大ヒットは必然だった。その続編である本作では、コメディ性、そしてフェミニズムの色合いが、当然ながら前作以上に高められている。

本作は「アカペラ世界大会」を軸にストーリーが展開されるが、着目すべきは「アメリカ代表vsドイツ代表」という、第二次大戦内の構図だろう。ドイツ代表の「DSM」がやけに「軍隊的な」グループであることに加えて、終戦70周年の年に公開されたことからも、本作が第二次大戦を意識していることは疑いようがない。とはいえ、あの悲惨な戦争のイメージがそのまま本作で表現されているわけではない。本作では、アカペラが戦闘のメタファーとして表現されているのだ。つまり、ベラーズとドイツ代表の戦いは、銃を歌に持ち替えた平和的な戦争なのだ。こうして考えると、本作が終戦70周年の年に公開されたことに納得がいく。

(C)2015 Universal Studios.

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そんな本作では、やはり優れた選曲センスによるべラーズや他のチームによるパフォーマンスが見所になっている。筆者としては、べラーズのライバルである「DSM」がお気に入りだ。彼らを偵察に来たべラーズが目撃する、英国のバンドMUSEの「Uprising」を用いたパフォーマンスは圧巻の一言に尽きる。「長官」(ビアギッテ・ヨート・スレンセン)を中心とした、完璧に統率された無駄のない構成には痺れた。あまりにも完成度が高いので、思わず「べラーズがこれに勝てるの?」と思ってしまうのだが、ある新入生の存在によってベラーズに希望が生まれる。

その新入生とは、良質な音楽映画として好評を得た『はじまりのうた BEGIN AGAIN』に出演して歌声とギターの腕前を披露し、その結果レコード会社からオファーを受けて歌手デビューを果たしたことでも話題になった新人女優ヘイリー・スタインフェルド演じるエミリーだ 。彼女は、インターン先の社長に「オリジナリティに欠ける」と指摘されたベッカ、そして方向性を見失いかけたべラーズに、ある楽曲をもたらす。そして、この楽曲が打倒「DSM」の糸口となり、迷走していたべラーズを目覚めさせ、さらにはベッカの将来にも光明を差す。最初は足を引っ張っていたエミリーが、終盤では頼れるエースに成長し、チームを次のレベルへと昇華させていく姿は、ベッカに代わるべラーズの新たなリーダーに相応しいと感じられた。

名曲の数々がぶつかり合うドイツ代表とべラーズの最終決戦は大興奮間違いなし。アカペラの常識を覆す、べラーズの驚きの選曲には是非とも期待して欲しい。また、エンドクレジットには思わぬおまけがあり、「アイツ」と「まさかのゲスト出演者」が最後まで観客を楽しませてくれるサービス精神も。この秋最高にアガる『ピッチ・パーフェクト2』は見逃し厳禁だ!

(文:岸豊)


映画『ピッチ・パーフェクト2』

大ヒット公開中

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アーティスト情報

アナ・ケンドリック

生年月日1985年8月9日(33歳)
星座しし座
出生地ポーランド

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エリザベス・バンクス

生年月日1974年2月10日(44歳)
星座みずがめ座
出生地米・マサチューセッツ

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