ダイアナ・エクストラバガンザがおすすめする「女の在り方、生きざまを描いた」9本

美を追求する美容家が、こよなく愛する往年の名作たち。そこには美に執着し、激動の時代をたくましく生き抜いたさまざまな女の姿が映されている。


ダイアナ・エクストラバガンザがおすすめする「女の在り方、生きざまを描いた」9本

赤線地帯

巨匠、溝口健二の遺作。売春禁止法が施行される直前の売春宿を舞台に、そこで働くさまざまな境遇の娼婦たちを描く群像劇。京マチ子や若尾文子ら人気女優が共演。

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サンセット大通り

『マルホランド・ドライブ』の下敷きとなったとも言われる名作。全盛期を過ぎた女優と彼女に雇われた若き脚本家の関係を通して、ハリウッドの暗部をえぐり出す。

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何がジェーンに起ったか?

30〜40年代のハリウッド黄金期に活躍した女優二人が共演したサスペンス。スターとして喝采を浴びながら、交通事故をきっかけに表舞台から消え去った老姉妹の愛憎。

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永遠に(とわ)美しく…

落ち目の女優マデリーン(ストリープ)と昔からのライバル、ヘレン(ホーン)が美しさを保つ秘薬を飲んだことで、不老不死の体を手に入れるブラックコメディ。

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トーチソング・トリロジー

第37回トニー賞演劇作品賞&主演男優賞を受賞したブロードウェイの舞台を映画化。ゲイの男と彼を取り巻く人々の愛と葛藤の人間模様が3つの物語でつづられる。

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情婦

アガサ・クリスティの原作を映画化したミステリー。殺人事件の裁判で、容疑者の妻が検察側の証人として出廷する。二転三転し迎えるどんでん返しのラストが衝撃的。

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昼顔

何不自由なく暮らす若妻が、マゾヒスティックでみだらな妄想にかられ、欲望を満たすために売春宿で体を売る。第28回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞。

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ひまわり

名匠ヴィットリオ・デ・シーカが描く、戦争によって引き裂かれた夫婦の悲劇。ソ連に出征したまま行方不明の夫を捜す妻。だが夫は別の女性と幸せな結婚をしていた。

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クレオパトラ

巨額の製作費が投じられた歴史スペクタクル。紀元前48年、内乱の続くエジプトに侵攻したローマ帝国の闘将が、女王クレオパトラの美貌と知性の虜になってしまう。

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若尾文子演じる若い女が、したたかで軽やかでたくましい。年増女と対比させて観てほしい

赤線地帯

『赤線地帯』

ラインナップの中で唯一の日本映画になった『赤線地帯』は、溝口健二監督最後の作品。売春宿を舞台に、息子のために商売に専念する主婦など“五者五様”の娼婦の生き方が描かれていきます。とにかく悲惨なお話ですが、黛敏郎さんによる現代音楽がどこかひょうきん。そこがある種の救いになっているのかもしれません。実際、悲劇的なシチュエーションにいる人って、そこまで自分を悲劇のヒロインだと自覚できていないと思うんですよね。それに例え悲しいことがあっても朝は来るし、ご飯も食べていかなきゃいけない。本人たちに悲壮感がないからこそ、観ている私たちは泣けるんです。当時は売春禁止法が成立するかどうかで揺れていた時代。劇中にも先行きの見えない閉塞感が漂っていますが、そんななかでも若尾文子演じる若い女がしたたかで軽やかでたくましい。年増の女たちとの対比にぜひ注目してほしいし、溝口作品を観たことがない人は、この映画を最初の一本にすることをオススメします。

『サンセット大通り』

『サンセット大通り』

女優を見るときの面白さの境目は、自分の行く末を楽しめているか

ストーリーもさることながら、演じる女優のバックグラウンドを知って観るとより楽しめるのが『サンセット大通り』。サイレント映画時代の栄光にすがる大女優がカムバックに執念を燃やすという物語なんですが、これを実際にサイレント映画のスターだったグロリア・スワンソンが演じているというのがとても皮肉ですし、興味深いです。いろんな女優にオファーしたところ、あまりにも常軌を逸した役だったため断られたそう。だからこそ、スワンソンのお芝居には役者魂というか、人間としての器の大きさを感じましたね。私、女優を見るときの面白さの境目って“自分の行く末を楽しめているか?”だと思うんです。『サンセット大通り』のスワンソンはまさにそれを追求していると思いましたね。そして『サンセット〜』とセットで観てほしいのが、『何がジェーンに起ったか?』です。物語の主軸は“姉妹の確執”ですが、子役スター時代のチヤホヤを引きずるあまり、老婆になってもおしろいを塗りたくり、ヨレヨレの髪を縦ロールにし、鏡の前で子どものときに習ったダンスを踊るという、妹役ベティ・デイヴィスのすごみに鳥肌が立ちました。姉を演じたジョーン・クロフォードとは本当に仲が悪かったそうで、言わば自然発生的な狂気に満ちた作品。映画監督って本当に残酷です(笑)。

若さへの執着という意味では、『永遠(とわ)に美しく…』にはいつまでも美しく生き続けたい女二人が出てきます。メリル・ストリープはこういうコミカルな役をトコトン楽しんでいるのがいいですね。最近“ありのままの自分”なんていう言葉が流行っていますが、私からしたら「何を言っているの?」という感じ(笑)。「女は人として繕わなきゃダメよ、みっともない!」と声を大にして言いたいです。

“女装のゲイ”である主人公を原作者本人が演じている。なかなかできることじゃない

『トーチソング・トリロジー』はこのラインナップの中でいちばんホッとする映画です。主人公は女ではなく“女装のゲイ”。原作者ハーヴェイ・ファイアスタインの半生を映画化したものですが、面白いのはハーヴェイ自身が本人役で主演しているところですね。自分の人生を自分で演じるって、なかなかできることじゃない。でも彼は、自分のセクシャリティやガラガラ声を面白がれている人。パートナーは同性愛者狩りで殺されてしまうし、母親とは口論になってしまうし……という悲しい話なのに、彼のキャラクターのおかげでどこか明るさを感じるんです。それに、説教くさいメッセージが目立つゲイ映画にしては珍しく啓蒙的ではないので、気軽に観られるんじゃないかなと。私の人生を映画化するとしたらですか? う〜ん、どうでしょう。そんなに面白くないんじゃないかな(笑)? ハーヴェイ本人が半生を振り返る音声解説が収録されたセル版のDVDも出ていたようなのでいつか聞いてみたいですね。

『情婦』

『情婦』

捨て身の女のすさまじさを見てほしい『情婦』は、ディートリッヒの“現役感”がすごい

ビリー・ワイルダー監督作『情婦』は、二転三転する法廷劇として十分楽しめますが、何と言っても、マレーネ・ディートリッヒ演じる捨て身の女のすさまじさを見てほしい。詳しくはネタバレになるので言えないんですけど、あそこまで冷静に計算できる女が、愛する男のためになりふり構わずに突っ走る姿が印象的でした。これもディートリッヒが歩んだ波乱の人生を知ってから観るとより楽しめるかも。それとディートリッヒは撮影当時55か56歳。年齢を感じさせないその美脚にも驚かされました。70代に突入してもなおライヴ活動をしていたみたいですし、ディートリッヒにはなんというか、“現役のオンナ感”を感じます。

“現役のオンナ”という意味では、カトリーヌ・ドヌーヴがその最たる例ですよね。今ではなんだか肉食の獣みたいになってしまいましたけど(笑)、やはり『昼顔』のドヌーヴは最高にきれいでした。優しいダンナじゃ我慢できず、陵辱されたいがために昼間に春を売るという特殊な性癖をもった主婦を演じていますが、そんな女のドロドロした欲望を、ガラスのように美しいドヌーヴが演じているのがいいんです。それにドヌーヴはヌードこそ披露していませんが、逆に白やベージュのブラジャーの色気がたまりません。ほかの女優が演じていたら、ここまでの名作にならなかったような気がします。

『ひまわり』

『ひまわり』

ソフィア・ローレンがイタリア女性のたくましさともろさを見事に演じた

『ひまわり』は、ヘンリー・マンシーニの美しい楽曲についウットリしてしまう映画ですが、よく考えると本当にろくでもないストーリーですよね(笑)。というのも、マルチェロ・マストロヤンニ演じるイタリア男が徴兵されるんですが、第二次大戦が終わっても帰って来ず、ロシアの若い女とデキてしまい、子どもまで作ってしまう。とにかくフワフワしているんです。そんなダメ夫を捜し続ける妻を演じるのが、名女優ソフィア・ローレン。彼女は、イタリア女性のたくましさと、内に秘めたもろさ、その両面を見事に演じていました。ラストのひまわり畑が広がるシーンは、映画史に残る名場面。ヒロインにとっては悲しいシーンかもしれませんが、私は「それでも明日も生きていくんだ」という“命”みたいな力強さを感じました。

『クレオパトラ』

『クレオパトラ』

エリザベス・テイラーは美しいからスターだった。女性にとって“美は正義”

ここまでいろんな女性、そして女優の映画を取り上げてきましたが、私にとって一番“女優らしい女優”はエリザベス・テイラー。主演作のなかで『クレオパトラ』は駄作なんて言われていますけど、リズがいちばん輝いていた時代の映画です。当時、共演のリチャード・バートンと不倫関係にあった彼女は、「こんな泣きはらした目で撮影なんかできない!」と現場に来なかったりと、とにかくワガママ放題。リズを見ていると、女優はスキャンダルも踏み台にするぐらいじゃないとダメだと思えますね。最近の芸能ニュースがいかにどうでもいいかがわかります。『クレオパトラ』は、製作費がかさんで製作会社である20世紀フォックスの経営が傾いたといういわくつきの映画でもありますが、リズのようなたくましい女性がハリウッドのスターシステムをブッ壊したのは実に痛快。彼女の後ろにはたくさんの屍が見えますけど(笑)。そんなエリザベス・テイラーが、なぜ数々の映画に起用されたのか。それはやはり「美しいから」に尽きるでしょう。まさしく、女にとって“美は正義”!


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ダイアナ・エクストラバガンザ

1975年大阪府出身。近年は、美容家として注目を集めている。TOKYO MXで放送中の「バラいろダンディ」で映画に特化した金曜日にレギュラー出演中。銀座の高級クラブにも勤務。

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