「誰しもが送っている当たり前の日常に苦しみとか悲しみがある」―映画『ボクは坊さん。』伊藤淳史×山本美月インタビュー

伊藤淳史と山本美月

伊藤淳史と山本美月

同名人気エッセイを映画化した『ボクは坊さん。』で、24歳で突然お坊さんになった主人公を演じた伊藤淳史と、彼の大切な幼馴染みである女性に扮した山本美月。ふたりが、本作を通して、人生について語ってくれた。

まずは、「お坊さん」について。

伊藤:お坊さんは、特殊なイメージであり、特別な存在。いろんな役をやらせていただいてますが、そのなかでも特別感は大きかったですね。その分、(オファーを受けたときは)不安もあったんですけど、台本を読んでみると、お坊さんの仕事ぶりも描かれていますが、そこよりも(人間としての)日常というか。ちゃんとした人間ドラマになっていたので、安心してお芝居を楽しめました。

山本:お坊さんと聞くと、『高貴』をイメージします。『神様』に近いというか。神聖なお仕事。悟りを開かれたひと。私、高校が仏教校だったんですよ。でも考えてみれば仏教の先生も身近だったなあと。でも、自分にはわからない『神様』という存在がわかっているひと。そんなイメージはありますね。手の届かないような。

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

伊藤:でも、この作品の魅力は、特別なことをたくさん描いているわけではなくて、誰しもが送っている当たり前の日常に苦しみとか悲しみがあるということ。そこも含めての魅力が詰まっていると思います。特別なことを大げさに描いてはいない作品だからこそ、みなさんも自分の日常とか、身近な存在とかを『感じてもらえる』作品になっていると思うんですよね。家族とか友人ってすごく大切な存在なんだけど、当たり前のような感覚になりすぎていて、ありがたさをどこかで忘れてたりする。僕自身、この状況に置かれたら、ということを考えたら、すごく辛かった。でも、その辛さは、あくまでも日常のなかで、誰しもに起こるんだよ、という感覚を大切にしながら演じてはいました。それが届いてくれたらいいなと。

私たちが生きている日常は「当たり前」のようでいて、決して「当たり前」ではない。そのかけがえのなさが、お坊さんを中心とした人々の関係性のなかから描かれる。ドラマティックな出来事も起こるが、そこから感じとれるものもまた、私たち観客全員、身に覚えがあるものばかりだ。

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

伊藤と山本は7歳差。それがごく自然に「幼馴染み」として画面には存在している。山本は先輩である伊藤が「とても接しやすい関係と空気感を作ってくださり、すんなり入れた」と讃える。伊藤は「初めて会ったときから美月ちゃんはすごく大人だし、しゅっとしていた。歳とか関係ないなと思いました」と振り返った。

幼馴染みではないが、濱田岳が、主人公の仏教学校の同級生役で出演している。若き名優である、伊藤と濱田の共演はそれだけでも見応えがあるが、考えてみれば、ふたりとも子役から永きにわたってキャリアを築いてきている。どこかシンパシーを感じていたのではないだろうか。

伊藤:歳はちょっと違うんですけど、子役からやってる者同士なんですよね。岳くんも、何かのインタビューで、自分に対して不安や緊張を抱えている、と話していて。僕自身も、そういうところはあったりします。こうやって仕事ができてることも奇跡だなって思うし。恐怖もあるし緊張感もある。でも岳くんと一緒にお芝居してると、たしかに何か、(自分たちは)ちっちゃい身体、張ってるんだ、みたいな(笑)気持ちにはなりました。確かめ合ったりしたことはないですけど、何かはあるような気がしますね。

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

山本美月は本作に限らず、芝居を作品の世界観に溶け合わせることに心を砕いている印象がある。

山本:自分に任されている立ち位置や役割はどういう部分なんだろう。そこはすごく考えながらやってますね。ファッションモデルもやらせていただいているので、そういうふうに(モデルのように)見えてしまうひともいると思うんですよ。だから、なるべくそういう部分を断ち切りたいなと。役者であるときは役者に見えるように。「どうせモデルあがり」と言われないように、ちゃんと向き合うようにはしています。昔は、すごく気にしていましたね。最近は「モデルさん」と思うひとより、「女優さん」と思ってくださる方のほうが増えてきたような気がしていて。それはすごくうれしい。街で、役の名前で呼ばれたりすると、すごくうれしいです。

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

(C)2015映画「ボクは坊さん。」製作委員会

それにしても、人生の岐路について考えさせられる映画だ。

伊藤:僕の人生に劇的なことはないんですけど(笑)、でも、仕事に対する考え方は、独り身じゃなくなってから感じましたね。「好きだ」という気持ちだけでやってたお芝居から、ちゃんと、生活とか、生きるとか、そういうものも含めた魅力に変わりました。責任とかもそうだと思うんですけど。それはひとつの階段なのかな。たしかに変わりましたね。自分の心のなかの、だれにも気づかれないようなちょっとした変化なんですけど。

山本:私、仲の良い友だちには相談するほうなんですよ。でも、私が往く道は、私が決めていて。相談するときも、自分で考えて「これっておかしくないかな?」と訊いています。この仕事を始める時も、まわりに反対された事もありましたが、結局、決めたのは自分ですし。大学も行くなら、自分の好きな農学部の生命科学が学びたかったので、進学も自分で決めたこと。相談はしますけど、(人生に対して)わりと能動的に動いてるなと思います。後悔はしないように。好きなことができています。

伊藤:この仕事は、まったく能動的には行けない仕事だとも思うんですよ。伊藤にこういう役をやらせたい、と思ってくださる人がいて初めて「与えられる」ものなので、自分から「取りに行ける」ものではない。役に対しては能動的に「向かって行く」んですけど、でも、やる、ということに関しては、あくまでも受動だから。「いただく」ものだから。その反動は、仕事以外ではあるかもしれないですね。だからこそ、そうじゃないところでは極力、自分で決めて選択したい。同じ後悔でも、やらないでする後悔って、ほんと苦しいんですけど。自分で決めたからしょうがない、という後悔はいいと思うんです。

人生は、能動と受動のバランスで成り立っている。そのことが、映画からも、ふたりの言葉からも感じられる。

(取材・文:相田冬二)


映画『ボクは坊さん。』
大ヒット上映中!

出演:伊藤淳史、山本美月、溝端淳平、濱田岳、松田美由紀、イッセー尾形
監督:真壁幸紀
原作:白川密成『ボクは坊さん。』(ミシマ社)

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アーティスト情報

伊藤淳史

生年月日1983年11月25日(34歳)
星座いて座
出生地千葉県

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濱田岳

生年月日1988年6月28日(30歳)
星座かに座
出生地東京都

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