福田雄一が選んだ「愛すべきダメ人間が笑える」7本

映画を観る基準は笑えるか、笑えないか! 興味のあるものだけをひたすら追い求めるコメディの名手が心から笑った7本を紹介してくれた。


福田雄一が選んだ「愛すべきダメ人間が笑える」7本

Mr.BOO!ミスター・ブー

'79年に日本で公開されブームを巻き起こした風刺コメディシリーズの第1弾。日本語吹替を担当したツービートや広川太一郎らによるアドリブ風のせりふも楽しめる。

⇒作品詳細・レビューを見る

チャンス

主人が死に、子どもの頃から住み込みで庭師をしていた屋敷を追い出された男が、町で政界の重鎮が乗る車にぶつかったことをきっかけに大統領に祭り上げられる。

⇒作品詳細・レビューを見る

幕末太陽傳

50年代当時の日活オールスターが総出演したコメディ。幕末、遊郭に一文なしで遊びに訪れた男がそのまま居ついてしまい、女郎や客たちのトラブルを解決していく。

⇒作品詳細・レビューを見る

サボテン・ブラザース

ハリウッドのスタジオをクビになった芸人トリオが、盗賊の暴挙に苦しむ村からのSOSを、新作のオファーと勘違いして村を訪れる。西部劇のパロディが満載!

⇒作品詳細・レビューを見る

裸の銃(ガン)を持つ男

LA市警の刑事が活躍するTVドラマ『フライング・コップ』を映画化し、シリーズ全3作が作られた。ZAZの一人ジェリーはのちに『ゴースト ニューヨークの幻』を監督。

⇒作品詳細・レビューを見る

ビッグ・リボウスキ

一癖ある登場人物が複雑に絡み合っていく不条理コメディ。ボウリング好きで無職の中年男が、同姓同名の富豪と間違えられて富豪の妻の誘拐事件に巻き込まれる。

⇒作品詳細・レビューを見る

キック・アス

コミックを基にダメヒーローの青春を描くバイオレンスコメディ。世界的なスマッシュヒットを受けて作られた続編では、美少女の殺し屋ヒット・ガールが女子高生に成長。

⇒作品詳細・レビューを見る


アジアにこんなくだらないギャグ映画があることがショックだった

Mr.BOO!ミスター・ブー

『Mr.BOO!ミスター・ブー』

映画は決してマニアと呼べるほどは観ていませんね。興味のないジャンルまで観ようという意気込みがない。基本、ラブに興味はないですし、アクションだって『ターミネーター』がどんな話かもいまだに知らない(笑)。子どもの頃からコメディ一辺倒で、人に薦められてもまず「笑えるの?」って聞くんです。「泣いた」とか言われると、いいやってなっちゃう。

ウチの親父が変わった人で、とにかくお笑いが好きだった。すごく覚えているのが小学生のときに「お笑いスター誕生!!」でB&Bが勝ち抜き10週目に挑戦することになったら「今日は早退して帰ってきなさい」と言われたこと(笑)。クレイジーキャッツの映画のビデオをあるだけ借りてきて、さんざん観せられたり。それがベースにあるせいか、どうしても惹かれるのはコメディなんです。

僕が子どもの頃の日本映画って完全に斜陽な時期で、文芸めいた真面目な映画ばかりだったんです。たまたまアニメを目当てに映画館に行ったら、同時上映されていた『Mr.BOO!ミスター・ブー』に衝撃を受けました。

有名な精肉工場のシーンとか、とにかく本当にくだらない。同じアジアでこんなにくだらないギャグを映画でやっていることがショックでした。これを小学生ながらにすばらしいと感じたことが今につながっているんでしょうね。僕にとっての原体験です。

チャンス

『チャンス』

ダメな主人公が、最後まで変わらずダメな人を貫いているのがイイ

『チャンス』に関しては、主演のピーター・セラーズがとにかく好きなんです。セラーズは『博士の異常な愛情』が有名ですけど、僕は淡々と笑いができる人を一番尊敬しているんですね。『裸の銃を持つ男』のレスリー・ニールセンもそうですが、笑わせにかかってないのに、つい笑ってしまう。ピーター・セラーズは僕にとってはその分野の王者です。

『チャンス』はお話のシステムもすごくしっかりしている。主人公が純粋に言っていることを、ただ周りが勘違いしていくという構造が非常にうまくいっているんです。僕は一つのキッカケでどんどん話が転がっていくパターンが大好きで、今でもお手本にしている映画です。あまり映画を観直さないんですが、これはことあるごとに観直しますね。

今回挙げた『キック・アス』にも共通していることですが、主人公がダメな人で、最後までそれが変わらないのもいい。よくプロデューサーに「ダメな主人公に『実はこんないいところがあります』みたいにしませんか?」って言われるんですけど、「それ必要?」って思っちゃう。僕は映画でもドラマでも、まず主人公のダメなところから考えるんです。いいところなんていくらでも作れる。でも面白い欠点っていうのはあと付けではできないんですよ。

幕末太陽傳

『幕末太陽傳』

サボテン・ブラザース

『サボテン・ブラザース』

川島雄三は、この仕事に就くきっかけになった理想のクリエーター像

『幕末太陽傳』は川島雄三監督の代表作。まず僕がこの仕事をやっていること自体、川島雄三の影響が強い。それくらい理想のクリエーター像です。川島監督は45歳の6月11日に亡くなっているんですが、僕は『アオイホノオ』の撮影中に45歳の6月11日を過ぎちゃった。スタッフに「オレの『幕末太陽傳』はまだ撮れていないのに川島監督より長生きしてしまいました」って言ったくらい大きい存在(笑)。

『幕末太陽傳』ははその年(第31回)キネマ旬報ベスト・テンで第4位に選ばれた。黒澤明監督の『蜘蛛巣城』も同じ4位だったんですが、当時コメディが4位を獲ること自体がすごいことだった。日本の喜劇映画の金字塔だと思います。

川島監督はめちゃくちゃたくさん映画を撮っているんですよ。どうしようもないものから傑作まで。そんな風にバカみたいな数の作品を作ったスタンスにも憧れます。『幕末太陽傳』以降も巨匠にならずに、ちゃんとくだらない映画を撮っている。おそらく周囲の期待に従いたくない人だったんでしょうね。

『サボテン・ブラザース』はベストワン映画を聞かれるたびに挙げています。僕はとにかくスティーヴ・マーティン狂で、顔と体だけで笑いを表現できる人を初めて観たんですよね。ジム・キャリーが出てきたときに「あ、流派が一緒だ」と感じたんですけど、まだまだマーティンには及ばない。

彼が出演していたコメディ番組「サタデー・ナイト・ライブ」のビデオも、あらゆる手を使ってアメリカから取り寄せてました。『サボテン・ブラザース』は「サタデー・ナイト・ライブ」黄金期のトップスター3人が主演していて、もう絶対に面白いに決まってる。

みんなが知ってるスリーアミーゴスのポーズ。最後「アン!」って言うヤツ。よくこの時代にあんなすばらしくくだらないことをやっていたなあと(笑)。物語上は絶対に必要ない歌うシーンとか、いちいちギャグが最高。いつかミュージカルにしたいですね。

裸の銃を持つ男

『裸の銃を持つ男』

ビッグ・リボウスキ

『ビッグ・リボウスキ』

『ビッグ・リボウスキ』の主人公みたいに暮らせたら、何てすばらしい人生だ!

『裸の銃を持つ男』は、デヴィッド&ジェリー・ザッカー兄弟とジム・エイブラハムズ、いわゆる“ZAZ”トリオの傑作コメディ。僕、人間として憧れるのは川島雄三なんですけど、作風としてはZAZなんです。率先してパロディをやるのは確実にZAZの影響ですね。

一番面白いのは、主人公の警部が絶体に笑わないこと。ボケてますという色を一切出さないんです。車でいろんなものにぶつかるのがお約束なんですけど、絶対に真面目な顔して降りてくる。ふざけた顔をしてふざけたことをしていても何にも面白くない。僕が作るコメディの主人公が笑わないのは『裸の銃〜』から学んだことでもありますね。

『ビッグ・リボウスキ』はコーエン兄弟の映画で、一時期コーエン兄弟をほめておけばカッコいいみたいな時代があって、僕はすごく反発していたんですね。またスカした映画だろうと高をくくって観始めたのに、なんかね、楽しかったんですよ(笑)。

主人公のデュードって中年男が、ホントにダラダラとだらしなく暮らしていて、まずあんな人生を送りたいとうらやましくなった。スーパーに行って牛乳パックを勝手に開けて、一口飲んで棚に戻すみたいな(笑)。風呂に入ってると悪党がやって来て、脅しで浴槽にフェレットを投げ込むんです。「おうっ!おうっ!」って慌てるんですけど、こんなくだらないシーンが楽しくてしょうがない。

極楽とんぼの加藤(浩次)君とココリコの田中(直樹)君と話していた時、田中君が「『ライフ・イズ・ビューティフル』を観て人生って何てすばらしいんだろうと思った」なんて言ったんですね。すると加藤君が「いや、本当に人生がすばらしいと思えるのは『ビッグ・リボウスキ』だよ」って。僕もまったく同じ考えだったんです。初めてセルのVHSを買って、今も必ず家の見えるところに置いてある。面白いものは面白いとちゃんと言おうっていう自分への戒めと、デュードみたいに生きようという人生の希望として。

キック・アス

『キック・アス』

本当は自分が先にやりたかった! 『コドモ警察』の原点はヒット・ガール

『キック・アス』は、監督として好きなものをやらせてもらえる状況になって初めて、あまりにも悔しすぎて心から「やられた!」と叫んだ映画。絶対に夢中になりそうで、映画館でもわざわざ一番後ろの席で観たんです。でも「危ない、絶対にもっていかれる!」って、『アオイホノオ』の主人公ホノオモユルと完全に一緒ですよ(笑)。

ダメな主人公がヒーローに憧れるっていう話自体は新しくない。ただヒット・ガールがいることで今までにないものになる。小さな女の子が悪党の首をバッサバッサと斬りまくる。それが最高に魅力的で「何でこんな簡単なことを思いつかなかったのか!」と。

子どもが大人びたことをするコメディをやろうとしたのが『コドモ警察』ですが、原点は完全にヒット・ガールなんですよ。たぶんクリエーターの大勢が思い浮かべていたネタだったと思うんです。でも決定打がなくてカタチにできていなかった。そこにガッツリと面白いものを観せられた、近年最大のショックでしたね。


(C) 1993, 2004 STAR TV Filmed Entertainment (HK) Limited & STAR TV Filmed (C) 1979 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved. (C) 日活 (C) 2009 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved. Distributed by Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. TM & COPYRIGHT (C) 1988 BY PARAMOUNT PICTURES. All Rights Reserved. The Naked GunTM is a trademark of Paramount Pictures. All Rights Reserved. (C) Polygram Filmed Entertainment、Inc. 1998 (C) KA Films LP. All Rights Reserved. TM & Copyright (C) 1988 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. THE NAKED GUNTM is a trademark of Paramount Pictures. TM, (R) & Copyright (C) 2004 by Paramount Pistures. All Rights Reserve

福田雄一

1968年栃木県生まれ。映画『逆境ナイン』('05)の脚本などを手がけ、『大洗にも星はふるなり』('09)で監督デビュー。以降、TVドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』('11)、『アオイホノオ』('14)、映画『女子ーズ』('14)ほか、TV、映画、舞台で多忙を極める。

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

福田雄一

生年月日1968年7月12日(50歳)
星座かに座
出生地栃木県小山市

福田雄一の関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST