「私が見つけたのではなく、彼らが私を見つけてくれた」―『ミケランジェロ・プロジェクト』原作者ロバート・M・エドゼル インタビュー

ロバート・M・エドゼル氏

ロバート・M・エドゼル氏

ジョージ・クルーニーが主演・監督・共同脚本・製作を兼ねた映画『ミケランジェロ・プロジェクト』は、第二次世界大戦下、ナチスによって略奪され破壊されようとしていた500万点の美術品を救い出した英雄“モニュメンツ・メン”を描いた物語。彼らの活躍がなければ、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」「モナ・リザ」、ファン・エイクの「ヘントの祭壇画」ゴッホの「ひまわり」、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」……名だたる絵画を目にすることはできなかった! という衝撃の実話がもとになっている。モニュメンツ・メンの存在を知り、15年間リサーチを続けるロバート・M・エドゼル氏に話を聞いた。

─この映画はエドゼルさんの書いたベストセラー・ノンフィクション「ミケランジェロ・プロジェクト(原題:The Monuments Men)」が原作となっていますが、モニュメンツ・メンについて知るきっかけは何だったのでしょうか?

1996年の頃、私はイタリアのフィレンツェに住んでいました。ある日、橋(ポンテ・ヴェッキオ…フィレンツェ最古の橋)の上でふと思ったんです。第二次世界大戦があったのに、何故これだけの芸時術作品が残ったのだろう? 誰がこの芸術作品を救ったのだろう? と…。そこからすべてが始まりました。ただ、当時は本にするとか映画にしたいとかそういう野心は全くありませんでしたが、調べていくうちに、モニュメンツ・メンのことは語られるべき大きな物語だと実感するようになりました。

─エドゼルさんはもともと芸術関係の仕事をしていたのですか?

まったく(笑)。以前はプロテニスプレーヤーを目指していました。テニス選手だった頃は、教会や美術館を訪れて「素敵だなぁ」と思う程度で。その後、起業していろいろあってフィレンツェに住み始めて、先ほど言った「なぜ?」という疑問にぶつかり、それを探ることで芸術知識は徐々に深まっていきました。ですが、第二次世界大戦に何が起きたのか? という好奇心と、美術や美術史に対する興味がまさか書籍になって、さらに映画化になるとは思ってもみませんでした。疑問を抱いてから15年、ずっとリサーチし続けています。

(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

─フィレンツェを訪れたことがきっかけとなったわけですが、移住先にフィレンツェを選んだのはどういう理由があったのでしょうか?

起業したものの自分にはまだ何かやりたいことがきっとあるはずだ、このままだとあっという間に年月が過ぎていってしまう……という思いから仕事を辞め、家族と一緒に世界を旅する時間を作ろうと考えました。最初はパリ、その後ローマに移住したのですが、ローマに移ったのが8月だったこともあり、あまりの暑さでローマからフィレンツェへ(笑)。避暑地として選んだのがフィレンツェでした。ローマよりも小さくて、こじんまりしていて緑も豊かな街です。アメリカのキャンパスもたくさんあり、息子の幼稚園や学校を探すのも楽だったこともあり、かれこれ5年ぐらい住みました。

─自分にはまだ何かやりたいことがあるのかもしれないと思ってたどり着いたフィレンツェの街。移り住んだのは偶然とはいえ、それがモニュメンツ・メンとの運命的な出会いになったわけですね。

モニュメンツ・メンの話をするときに私がいつも言うのは「モニュメンツ・メンは私が見つけたのではなく、彼らが私を見つけてくれたんだ」と。私は、歴史や美術史、第二次世界大戦の史実を学術的に学んだわけではありませんが、逆にそれが強みとなったと思います。私自身が理解できる形で彼らの物語を学んだことで、一般の人に伝えるときに学術的ではない、分かりやすい言葉で伝えることができたと思うのです。もちろん、足りないこともありましたが、それは努力で補いました。モニュメンツ・メンの物語は、いかにも勝ちそうにない人たちが頑張って勝利を勝ち取る、人間の力を感じる、誰もが共感する物語でもあります。逆風のなか気高さをもって行動し、そして達成した。そんな彼らの活躍に誰もがワクワクすると思います。

(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

─彼らの「芸術品を守りたい!」という想いと行動力に心打たれました。エドゼルさん自身が長年のリサーチのなかで、いちばん驚かされたことはどんなことですか?

1冊目の「Rescuing Da Vinci」は写真がメインでしたが、それを出すまでにリサーチに3年を要しました。今回の映画の原作「The Monuments Men」もリサーチに3年、執筆は1年かかりました。3冊目の「Saving Italy」は、モニュメンツ・メンのイタリアでの活動を追ったもので、これもリサーチに3年かかっています。また、この3冊以外にドキュメンタリー映画「The Rape of Europa」も共同製作で手がけています。それらの執筆と制作のために出会ったモニュメンツ・メンは20名、うち3名が女性でした。(高齢の方が多いため)彼らに会って話を聞くことは時間との闘いでもありました。一番驚いたことは、おそらくみなさんと一緒です。まずは、第二次世界大戦という最も大きな戦争に遭いながらも、これだけの芸術作品がどうやって生きのびたのか、誰が救ったのか、という事実です。そして、これほどの驚くべき大きな物語が目の前にあるのに、誰も知らないことが何よりも驚きでした。そのヒーローの物語を伝えたいと思った。今日、私たちが楽しんで見ることのできる芸術作品が、彼らの手によって守られたことを知ってもらえたら嬉しいです。

(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

(C)2014 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved.

─モニュメンツ・メンの活躍も、それをこうして伝えているエドゼルさんにも感謝です。執筆活動だけでなく、「Monuments Men Foundation for the Preservation of Art」を創立し代表を務めていますが、このプロジェクトはこれからも続いていきますか?

実はもう次なる物語のリサーチをしているところです。戦後の日本でのモニュメンツ・メンの活躍や役割も非常に面白いストーリーがあることが分かりました。ですが、このプロジェクトのリサーチは世界各国を旅しなくてはならないので、時間と経費がものすごくかかるんです。ある程度、時間はかかってしまいますが、こうして私がモニュメンツ・メンたちを世界の人たちに伝えることは、ものすごい特権であり特別なことだと思っています。何と言っても、私の人生をこれほど大きく変えてくれたのですから。これからもリサーチは続けますよ(笑)。

(取材・文/新谷里映)


映画『ミケランジェロ・プロジェクト』
2015年11月6日(金)全国ロードショー!

監督:ジョージ・クルーニー
脚本・製作:ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロヴ
原作:「ミケランジェロ・プロジェクト」ロバート・M・エドゼル著(角川文庫、上下巻)
出演:ジョージ・クルーニー、マット・デイモン、ビル・マーレイ、ジョン・グッドマン、ジャン・デュジャルダン、ボブ・バラバン、ヒュー・ボネヴィル、ケイト・ブランシェット

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