【レビュー】『コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)』(15)-ガイ・リッチーが放つ痛快スパイ・アクション

(C) 2015 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved

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「冷戦期にアメリカとソ連が手を組む」…こんなバカげたアイディアを待っていた!

第二次大戦の終戦から70周年の今年は、同大戦に対する反省や悔恨を描いた作品が多く公開されており、映画界にも重苦しい雰囲気が漂っている。しかし、『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(98)や『スナッチ』(00)で知られるガイ・リッチー監督の最新作『コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)』は、舞台を冷戦期のドイツに置いた、軽快なコメディとスパイ・アクションを融合した極上のエンターテインメント作品だ。

CIA(アメリカ)で最も有能なエージェントだが女性関係に問題ありのナポレオン・ソロ(ヘンリー・カヴィル)は、上官からドイツが秘密裏に進めているとされる核爆弾の開発を阻止するよう命じられる。彼は核開発に関わったウド・テラー博士(クリスチャン・ベルケル)の実娘で自動車整備士のギャビー(アリシア・ヴィキャンデル)に接触するが、その直後に敵対するKGB(ロシア)の天才エージェント、イリヤ・クリヤキン(アーミー・ハマー)の襲撃を受ける。辛くもイリヤの追跡を躱したナポレオンだったが、翌日偶然にもトイレでイリヤに遭遇。しばしの乱闘の末に、ナポレオンは上官から、今回のミッションではイリヤが相棒であることを告げられる。こうしてナポレオンとイリヤは相棒としてドイツの核開発を阻止することになるのだが、2人の相性は最悪で……

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とまあ、「そんなのありかよ」と言いたくなるような本作だが、監督を務めたのはあのガイ・リッチーだ。思い返せば、彼は常に現実離れした「嘘みたいな話」を作ってきた。最初に商業的に成功を収めた『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や、ブラッド・ピットを主演に据えた『スナッチ』では、嘘のようなギャングとチンピラのドタバタ劇を描き、コメディとバイオレンスを見事に融合して大成功。近年の『シャーロック・ホームズ』シリーズでも、原作を大胆に脚色し、当代きっての曲者俳優でアメリカ人のロバート・ダウニー・Jrをイギリス人であるホームズ役に据え、さらにはアクションの要素を多分に注ぎ込むことで、従来のホームズ像とは全く異なる、やんちゃでやりたい放題なホームズのイメージを打ち出し、ホームズの故郷イギリスを含む世界中で成功を収めた。

本作でも、「スパイもの」、特に「冷戦期のスパイもの」のイメージを覆す、コメディの要素を多分に含んだ作劇が素晴らしい。冷戦の時代を舞台にした映画において、アメリカとソ連が手を組むというストーリーは、いわば「禁じ手」だ。リアリティの観点から言えば、まずありえない。もはやギャグだ。しかし、そのありえないギャグのような図式を使ったからこそ、本作は大きなインパクトを観客に与え、引き込むことができる。

「バディ」は刑事や警察官を主体とした映画では多いが、スパイものではなかなか見ない。本作では、ナポレオンとイリヤという真逆な性格の2人を常にカメラに映し出すことで、それぞれの行動理念やどうでもいいこだわりがことあるごとにぶつかる。しかしそこに緊張感はなく、世界が危機に瀕しているというのに、それを微塵も感じさせないような笑いが生まれる。これは、『シャーロック・ホームズ』シリーズにおけるホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)とワトソン(ジュード・ロウ)の関係性に通じるものがあり、バディもので笑いを生むというアプローチは、近年のガイ・リッチーの作劇の特徴と呼べるものなのかもしれない。

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キャスティングも素晴らしい。『マン・オブ・スティール』(13)で今ひとつ役にはまりきれていなかったヘンリー・カヴィルも、アメリカのプレイボーイ的な軽い雰囲気を漂わせながらも、所作や言動には気品と教養が漂っており、ナポレオンというキャラクターを見事に演じており、彼のキャリアの中でも特筆すべきキャラクターになることは疑いようがない。

イリヤ役のアーミー・ハマーも、『ローン・レンジャー』(13)などの大作に出演していながらも、「はまり役」と呼べるキャラクターは今までなかった。だが、本作でようやく出会えたようだ。超優秀ながら直情的という矛盾したキャラクターを持つイリヤを、巨躯をワナワナと震わせながら演じている姿には爆笑必至。真面目さゆえに色々と抜けているのも、女性からすれば可愛く見えるのではないか。

そんな2人に振り回されるギャビーを演じたのは、『エクス・マキナ(原題)』(日本未公開)で世界中の映画人が恋に落ちたスウェーデンの新鋭アリシア・ヴィキャンデル。今までは「清楚」や「高貴」な役柄が多い彼女だったが、本作では自動車工場の整備士というイメージにない役柄に挑戦し、酒好きで酔いやすく、天真爛漫な女の子を演じている。本作の主人公はナポレオンとイリヤだが、実はストーリーの主軸となっているのはギャビーであり、終盤で明かされる彼女の驚くべき秘密には、思わず「やられた!」と思わされること間違いなしだ。

その美貌と高身長ゆえに、言ってしまえば「使いづらい」女優だった エリザベス・デビッキも、本作では純粋な悪役という新境地を切り拓いている。悪役には、何の感情移入も許さない純粋な悪役と、『ダークナイト』(08)の「ジョーカー」のように魅力溢れる不思議な悪役の二種類がいるが、本作でデビッキが演じるヴィンチグエラ夫人は完全に前者。他者を見下し、自身が全てを支配しているという尊大なエゴイズムの化身である彼女は、核開発によって世界を支配しようと目論む。その悪女ぷりったるや、デヴィッキの高身長がこれほどまでにマッチした役柄は今後のキャリアでもお目にかかれないのではないかとすら思えるほどだ。

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終盤にかけて加速するサスペンスとアクションは痛快。「必要ならば殺せ」という指令を受けてコンビを組んだナポレオンとイリヤは、曲がりなりにも築いた互いの絆に、果たしてどう決着をつけるのか?
爽やかなラストと、遊び心あふれるエンドクレジットも見逃せない本作は、この冬の見逃せない一本になりそうだ。

(文:岸豊)


映画『コードネーム U.N.C.L.E.』
大ヒット上映中

監督:ガイ・リッチー
脚本:ガイ・リッチー&ライオネル・ウィグラム
キャスト:ヘンリー・カビル、アーミー・ハマー、アリシア・ヴィキャンデル、エリザベス・デビッキ、ジャレッド・ハリス、ヒュー・グラント
配給:ワーナー・ブラザース映画

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