和田竜がおすすめする「最高にカッコイイ男が出てくる」5本

戦国時代の武士や歴史の裏側で暗躍した忍びたち……その時代の男の生きざまをつづってきた時代小説の新たな担い手が、映画に見た男の美学とは?


和田竜がおすすめする「最高にカッコイイ男が出てくる」5本

ターミネーター

シュワルツェネッガーが映画スターとなる礎を築いたアクション。ある女性を殺すため2029年から送り込まれた殺人マシンと、彼女を守るべく未来から来た男の戦い。

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リーサル・ウェポン

シリーズ全4作が作られたバディムービーの傑作。3年前に妻を失って以降、自殺願望に取りつかれた男とLA市警のベテラン刑事が、コンビを組んで犯罪に立ち向かう。

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レモ 第1の挑戦

NY市警の警官が政府の秘密組織にスカウトされ悪と戦う。謎の韓国人武術師チュンを演じたジョエル・グレイは、第43回ゴールデン・グローブ賞助演男優賞候補に。

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ハーレーダビッドソン
&マルボロマン

流れ者のハーレー・ダビッドソン(ローク)が2年ぶりにLAに帰郷。なじみのロックバーを救うため、旧友のマルボロマン(ジョンソン)ら仲間とともに現金輸送車を襲う。

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椿三十郎

黒澤監督作『用心棒』の続編的作品。とある藩に流れ着いた浪人の椿三十郎(三船)が、家老の汚職を正すために立ち上がった若侍たちの戦いを助太刀することになる。

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悪役が主役を張っている!筋肉男が暴れ回るのが新鮮だった『ターミネーター』

『ターミネーター』

『ターミネーター』

僕が決定的に映画を好きになったきっかけは高校1年生のときに観た『ターミネーター』かな。それまでは好きだった『スター・ウォーズ』シリーズや『銀河鉄道999』、もしくはその時々に流行っている映画を観たりしていたんだけど「次から次に映画を観たい」と思うようになったのは『ターミネーター』に出会ってから。友達から「SFが好きなら観たほうがいいよ」とビデオを借りたんです。観たらSFなんてほんの少しで、ひたすら筋肉男が暴れ回る映画だった(笑)。でも、めちゃくちゃ面白かった。「ターミネーターってカッコいい!」と心の底からしびれました。

ターミネーター役のアーノルド・シュワルツェネッガーは本当に衝撃的でしたね。僕は登場人物に悪のスパイスが効いているものが好きなんですけど、ターミネーターはもうまるっきり悪。公開時の宣伝文句は“史上最強《悪》のヒーロー!!”でしたが、まさにそのとおり。しかもそれが主役を張るなんて「何てすごい発想の映画なんだ」と驚嘆しました。当時としても低予算で、B級映画とも言われましたが、それを逆手にとって「この人はサイボーグです」と最初に説明すれば、以降のシーンが全部面白く見えるという画期的なことをやっている。それだったら日本でもできるし、金はかけられないけど頭を絞ることはハリウッドであろうが日本であろうが変わらないはずで、僕もこういうことをやりたいと思った。つまり『ターミネーター』は、僕に映画監督になりたいと思わせた運命の映画でもある。それともう一つ、僕は映画を観た直後から「こんなカッコいい体になりたい」と一念発起してウェイトトレーニングを始め、いまだにスポーツクラブに通っています(笑)。

『ターミネーター』

『ターミネーター』

『ターミネーター』シリーズの一番の名セリフは「I'll be back」にあらず!

『ターミネーター』に関しては一つ言いたいことがあるんです。「I'll be back」(また戻って来る)という有名なセリフがあるんだけど、僕にとっては「Come with me if you want to live」(死にたくなければついてこい)のほうが断然名セリフ。絶体絶命のピンチに陥ったサラ・コナーに対して、第1作ではディスコでカイル・リースが、第2作では病院でターミネーターが「死にたくなければついてこい」と言う。要するに、かつては自分の命を狙って執拗に追いかけてきたヤツが、カイルとまるっきり同じセリフを言って助けにくるんです。この逆転の構図は真剣にカッコいいし、なぜこのセリフがもっとクローズアップされないのか不満ですね。

ちなみに僕の小説『村上海賊の娘』の登場人物である眞鍋七五三兵衛はなかなか死なない男なんですが、彼についてネットでは「ターミネーターみたい」と書かれているのを見かけます(笑)。作者としてはそういうつもりは全然なかったんだけど「言われてみれば確かにそうかも」という気もしています。

『リーサル・ウェポン』

『リーサル・ウェポン』

ビールを飲んで、タバコを吸って腕時計の付け方までもがたまらなくカッコよかった

言わずと知れた名作『リーサル・ウェポン』は、やっぱり第1作が一番面白い。試写会で観たんですけど、会場はものすごい盛り上がりだった。主人公のマーティン・リッグスは自殺志願者で、その彼が自殺しようとしている人間を助けにいって、一緒にビルから飛び降りるシーンなんかバカウケでしたから。

リッグスは常に死にたいと思っていて、拳銃を口にくわえても死にきれない。死にたいからタバコをバカバカ吸って、いつも酒ばっかり飲んでいる。映画の冒頭、海辺のトレーラーハウスに住んでいるリッグスは、朝起きると素っ裸で冷蔵庫に行き、瓶ビールをぐいっと飲む。そういったことすべてが僕にはたまらなくカッコよく見えて、一時期はリッグスと同じ銘柄のビールとタバコをたしなんでいました(笑)。あと、僕は右腕に腕時計をするんですけど、それもリッグスの影響です。

ただ、シリーズものの宿命で仕方がないんだけど、第1作でリッグスの自殺願望は解決しちゃうんですね。自殺志願者の刑事が、死んでもともととばかりにハチャメチャなことをするのが楽しい映画だったのに、その魅力が失われてしまった。残念ではあるけど、第2作以降もそれなりに面白くて、ジェット・リーが出た第4作も意外に好きです。

『レモ 第1の挑戦』

『レモ 第1の挑戦』

銃弾をよけて水の上を歩く!謎の武術の達人は、1作だけで終わらせるには惜しいキャラ

『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』

『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』

手当たり次第に映画を観ていた高校生のときたまたま観たのが『レモ 第1の挑戦』。シリーズ化を狙っていたのに“第1の挑戦”で終わってしまった作品ですが(笑)、予想外に興奮しました。僕が見つけたカッコいい男は主人公のレモではなく、彼の武術の師匠となる老人チュンのほう。あんな素敵で面白いキャラクター、よくぞ考えましたよ。チュンは朝鮮半島発祥とされる架空の暗殺術シナンジュの達人で、水の上をすいすい歩くこともできる。それなのに「アメリカ文化ですばらしいのは昼メロだけ」と主張して、毎日観るのを欠かさない(笑)。そういう矜持をあのおじいさんに言われると、妙に納得させられてしまう。レモが撃った銃弾を表情一つ変えずに避けたと思ったら、奪った拳銃からマガジンを抜いて、弾薬を1発ずつ弾いて抜いていくところなんかすごくカッコよくて、そこだけ何回も観てしまいます。1作だけで終わらせるにはあまりに惜しいキャラクターでした。

『ハーレーダビッドソン&マルボロマン』は正直に言って中身はまったく面白くない(笑)。だけど登場人物の魅力だけで、もう1回観ようという気になる映画なんです。その名もハーレー・ダビッドソンを演じたミッキー・ロークがめちゃくちゃカッコいい! 革ジャン姿も、ハーレーに乗るシーンも超カッコいいとしか言いようがない、ただそれだけの映画(笑)。僕も25、6歳の頃になんちゃってハーレーに乗っていたんだけど、毎年大きい事故をやっていたので、3年目には死ぬと思って乗るのはやめましたが(笑)。

『椿三十郎』

『椿三十郎』

男はどう生きたらカッコいいのか?その典型を見せてくれた『椿三十郎』は感動的だった

僕の大学時代は洋画のパワーが強くて、日本映画はつまらないと思われていた頃。そんなときに「日本映画にもカッコいい男がいた」と感動させてくれたのが『椿三十郎』だった。椿三十郎は豪快でいながら頭がキレ、なおかつ茶目っ気と砕けたところもある。若侍たちの謀議に加わった三十郎が酒を所望して「酒を飲んでいる場合じゃない」と反発されると「俺は酒飲んだほうが頭よくなるんだぜ」と返す場面なんか最高にカッコいい。そして、三十郎の際立った個性に、演じた三船敏郎のワイルドな風貌と重厚かつ軽妙な演技も相まって、実に奥行きのあるキャラクターになっている。僕はどんな形であれ「男はどう生きたらカッコいいのか?」を見せてくれる映画が好きで、それを追い求めて映画を観ているところがある。そういう意味で三十郎は、その典型を見せてくれたような気がします。

僕はどんなに凋落したと言われようとも、いまだにハリウッドの娯楽映画が好きですね。無論いろいろなジャンルの映画を観るし、面白いとは思うんだけど、熱狂することはまずない。ましてや、もう一度観たいと思うものは数少ない。そんな僕を興奮させてくれるのは青春時代に巡り会った『ターミネーター』『リーサル・ウェポン』のような映画で、これはもう体質みたいなものかもしれない(笑)。小説を書くようになってから気づいたことですが、好きなものを観てワクワクドキドキしないと、自分の血肉にならないんですよ。それ以外の映画を観ても、もちろん知識としてはわかるし理解もできるんだけど、自分のものにしてアウトプットする際に役に立つのかといったら、まるで役に立たない。やっぱり心が揺り動かされないとダメなんです。だからこれからも心が赴くままに、僕にとっての面白い映画とカッコいい男を探していきたいですね。


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和田竜

1969年大阪府生まれ。第29回城戸賞を受賞した脚本を基に、自ら脚本を手がけた映画『のぼうの城』が'12年に公開。'13年に単行本化した『村上海賊の娘』が第11回本屋大賞を受賞。

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