「僕が撮ることで自分の個性が光ると思った」―『黄金のアデーレ 名画の帰還』サイモン・カーティス監督インタビュー

サイモン・カーティス監督

サイモン・カーティス監督

映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』は20世紀終盤、“オーストリアのモナリザ”と称される国の美術館に展示中のクリムトの名画=黄金のアデーレ=の“返還”を求め、オーストリア政府を提訴した実在の女性、マリア・アルトマンが主人公の物語だ。すべてを奪われ祖国を捨てたマリアが、深い喪失を乗り越えて奇跡を起こすという感動の実話の映画化だ。

監督は、『マリリン 7日間の恋』(11)で長編監督デビューを果たしたイギリスの俊英、サイモン・カーティス。『クィーン』(06)でアカデミー賞主演女優賞を受賞した名優ヘレン・ミレンを主演に迎え、人生の終盤に差しかかかった女性が名画とともに自分自身を取り戻していく姿を描いた。来日した名匠に、実話をベースにした映画を扱う理由などを聞いた。

――『マリリン 7日間の恋』に続いて女性の人生を扱いましたが、異性が主人公の心情表現は、難しくなかったですか?

そうは思わなかった。主人公が男性であれ女性であれ、キャラクターの中に“その人”を見出すことが自分の仕事だと思っている。第一、いままで大勢の男性監督が女性を演出しているじゃないか(笑)。ただ、主人公と言ったけれども見方によってはマリリンの場合、エディの役が主人公になり得る。今回で言えばライアンの役が主人公、と言っても過言ではないと思う。

――とはいえ今作では、主人公マリアの決断力や行動力がとても魅力的でした。

まあ、キャスティングについては、ヘレン・ミレンが適役だってことは天才じゃなくたってわかることだがね(笑)。人生が本当に終わりに近づいている女性が、最後の最後に正義を取り戻そうとしている様子に惹かれたよ。そこに惹かれて映画を撮りたいと思い、まずヘレンに脚本を渡して、その後に実際に会った。

(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

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――ヘレンはアイデアが豊富というか、「共闘することが得意」と、以前ご本人に聞いたことがあります。

そうだね。彼女がアイデアを出して、リライトをしたことも確かにあったよ。彼女の言っていることは本当に勘がよくて、だからこそ大女優と評されるゆえんだと思ったよ。シーンによって、「もっと書き直したほうがいいわ」「このシーンは不要よね」「このセリフはカットしたほうがいいと思う」などと、まるで対話のように楽しく作業を重ねたよ。

――撮影に入った後に、大事にしていることは何ですか?

その時の自分が撮っているシーンについて、このシーンで語っていることは何か? 何を伝えなければならないか? 登場人物の感情が出ているかどうか? そういうことに気をつけている。でも、実はアドリブも大歓迎で、ヘレンがメガネを取ってプッとつばを吐いているシーンは彼女の即興だったよ(笑)。

――ところで、今作も実話がベースになっている物語ですが、ノンフィクションに惹かれる理由は何でしょうか?

監督:自分が映画を撮りたいと強く思うような作品は、自分以外の方には語れないストーリーだと、どういうわけか自然に思えてね。たとえば脚本を読み、僕じゃなくてもいいじゃないかと思う題材もあれば、『マリリン』も今回の映画も僕が撮ることで自分の個性が光ると思ったわけだ。

――つまり今作で言うと、どういう点が個性になるでしょうか?

はっきりとはわからないけれど、何か温かいもののこと――たとえば家族への愛とかね。そういうことが前提としてあったとは思うよ。

(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

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――余談ですが、日本映画は観ますか?

監督:過去にはよく観たよ。クロサワなどだね。いろいろな巨匠の映画を観て育った人がいるけれど、僕はどちらかと言うと演劇を観て育っているので、そこまで映画の巨匠の影響は受けていないかな(笑)。

――今後、映画で問いたい題材はありますか?

監督:まだ内緒だけれど、いくつか候補はあるよ(笑)。自分が監督しなければダメだと思うような題材がね。特に今回のような超大作ではないような作品の場合、ワインスタイン・カンパニーはすぐ拾ってくれたからいいものを、ほかでは笑って追い返されたこともあったよ。映画製作は、簡単にはかないものだよね(笑)。

――今日はありがとうございました。最後に映画を待っている日本のファンへメッセージをお願いいたします。

監督:この映画を観ていただいて、いっぱい感動していっぱい楽しみ、いろいろと考えてほしいと思います。やはり過去というものが今の自分を作っていること、自分の祖先が決断したことが今に影響していることなどを、今一度考えてほしいと思っています。

(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

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(取材・文・撮影:鴇田崇)


映画『黄金のアデーレ 名画の帰還』
大ヒット上映中

監督:サイモン・カーティス 『マリリン 7日間の恋』
脚本:アレクシ・ケイ・キャンベル
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール 他
配給:ギャガ
提供:ギャガ、カルチュア・パブリッシャーズ

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