『黄金のアデーレ 名画の帰還』(15)と併せて観たい! 画家・絵画を描いた傑作映画5選

『黄金のアデーレ 名画の帰還』(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

『黄金のアデーレ 名画の帰還』(C)THE WEINSTEIN COMPANY / BRITISH BROADCASTING CORPORATION / ORIGIN PICTURES (WOMAN IN GOLD) LIMITED 2015

グスタフ・クリムトの絵画をめぐる感動のドラマを描いた『黄金のアデーレ 名画の帰還』が現在公開中だ。そこで今回は、同作と併せて観たい、画家の人生や絵画についての物語を描いた上質な映画を5本紹介する。

『モンパルナスの灯』(58)

ジャック・ベッケル監督の『モンパルナスの灯』は、エコール・ド・パリ(=20世紀前半にパリでボヘミアン的な生活をしていた画家たち)の画家アメデオ・モディリアーニ(ジェラール・フィリップ)の悲しい人生を描いた作品。主人公のモディリアーニは、パリで暮らす売れない画家。ある日彼は、画学生のジャンヌ(アヌーク・エーメ)と出会い、恋に落ちる。2人は結婚することを決めるが、ジャンヌの両親は売れない画家であるモディリアーニとの結婚に反対し…。

大胆なデフォルメが特徴のモディリアーニの絵画は後年になって再評価されたものの、彼が生きた時代では前衛的過ぎて全くと言っていいほどに受け入れられなかった。その不遇の人生を生きたモディリアーニと、彼を健気に支え続けるジャンヌの悲恋を描いた本作は、ジェラール・フィリップによる名演も然ることながら、画面に漂い続ける物憂げなタッチと、悲しみを湛えた音楽が素晴らしい。

『マイ・レフトフット』(89)

ジム・シェリダン監督の『マイ・レフトフット』は、脳性麻痺を抱えながらも作家・画家として活躍したクリスティ・ブラウンの自伝を映画化した作品。脳性麻痺を抱えるクリスティ(ヒュー・オコナー)は、体のほとんどを動かすことができず、隣人、そして実の父にまで厄介者扱いされていた。しかしある日、クリスティは辛うじて動かすことができる左足で握ったチョークで、地面に“mother”と書いてみせる。この日を境に、彼は絵を描くことに挑戦するようになり…。

クリスティを育て上げた母の愛、クリスティへの態度を改める父親の改心、友人たちが持つ優しさが感動を誘う本作だが、真に感動を誘うのは、他の人々と同じように生きることを決して諦めなかった、クリスティの不屈の心だ。そのクリスティの少年期を演じたヒュー・オコナーは、若手ながら見事な表現力でクリスティを熱演。そして青年期を演じたダニエル・デイ=ルイスの魂がこもった演技は筆舌に尽くしがたいほどに素晴らしく、本作で後に3度受賞するアカデミー賞・主演男優賞を初受賞している。

『セラフィーヌの庭』(08)

芸術家は往々にして複雑な心を持っているが、フランス出身の画家セラフィーヌ・ルイはその象徴的な存在と言えるだろう。マルタン・プロヴォスト監督×名女優ヨランド・モロー主演でセラフィーヌ・ルイの人生を映画化した『セラフィーヌの庭』は、2008年度のセザール賞(フランスにおける米アカデミー賞)で主演女優賞や作品賞を含む7部門を制した名作だ。

使用人として真面目に働いていたセラフィーヌは、ある日に神のお告げを受けて絵を描き始める。貧しい暮らしをしていた彼女の絵の具は、日用品を活用して作り出したもので、既製品にはない独特な風合いを持っていた。周囲に隠れて絵を描いていた彼女だが、ふとしたことからパトロンを得て成功を収め、遂にはパリで個展を開くことになるのだが…。

本作で特筆すべきは、セラフィーヌの作品の特徴である、「美と恐怖の同居」が表現された画面構成。美しいフランスの田舎町の自然と、ヨランド・モロー演じるセラフィーヌから時折感じられる精神的な闇が溶け合ったシーンの数々は、彼女の作品の世界観と重なり、観る者を引き込む。終盤にかけて加速していくセラフィーヌの精神病は直視できないほどに恐ろしいが、「やりすぎ感」を微塵も感じさせない、ヨランド・モローの絶妙な演技には脱帽するしかない。

『それでも恋するバルセロナ』(08)

ウディ・アレン監督はたびたび芸術をモチーフにした作品を撮るが、スカーレット・ヨハンソン×ハビエル・バルデム×レベッカ・ホール×ペネロペ・クルス共演の群像劇『それでも恋するバルセロナ』は、1人の画家を中心に織りなされる、だらしない大人たちの恋模様を描いた作品だ。主人公のクリスティーナ(スカーレット・ヨハンソン)は短編映画を撮り終えて気分を変えたかったため、友人のヴィッキー(レベッカ・ホール)と共にバルセロナを訪れる。2人はレストランで画家のアントニオ(ハビエル・バルデム)と出会い、クリスティーナはアントニオと恋に落ちる。一方のヴィッキーは図々しいアントニオを毛嫌いしていたが、ふとしたことからアントニオに惹かれるようになり…。

分かり合えたと思ったら、また喧嘩…。それぞれのエゴがぶつかり合う恋模様は一見すると幼稚だが、次第に彼らの人間臭さに引き込まれていく展開の巧さは、さすがウディ・アレンの一言に尽きる。特に印象的なのが、中盤から登場して物語をひっかきまわすアントニオの元妻マリア・エレーナ(ペネロペ・クルス)だ。マリア・エレーナは精神的に不安定でとんでもないことをしでかすのだが、観る者を「引かせない」で「笑わせてしまう」演技にペネロペ・クルスの巧さが光る。

芸術の都バルセロナの街並みに映し出される、絵画、建築、彫刻などの多種多様な芸術品には心奪われること必至で、まるで疑似旅行をしているかのような気分にさせてくれるのも素晴らしい。ジウリア・イ・ロス・テラリーニによる主題歌「バルセロナ」も、キャッチーなメロディが印象的で、一度聞いたら忘れられなくなるはずだ。

『鑑定士と顔のない依頼人』(13)

ジュゼッペ・トルナトーレ監督は、映画史に燦然と輝く名作『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)や『海の上のピアニスト』(99)で知られるが、筆者としては『鑑定士と顔のない依頼人』が最高傑作ではないかと思う。本作が描くのは、主人公の美術鑑定士(ジェフリー・ラッシュ)が、その友人(ドナルド・サザーランド)、そして物語のカギを握る謎めいた美女(シルヴィア・フークス)と共に繰り広げる、1枚の絵画をめぐるミステリー。

本作のトリックは、ミステリーの作劇においては極めてオーソドックスな「思い込み」だ。しかし、実力派のキャスト陣が織りなすアンサンブルは、本作をミステリーから恋愛ドラマへと一転させることで、オーディエンスの「ミステリー」に対する視野を矮小化させ、隠された真実から巧妙なトリックへとミスリードしていく。しかし終盤にかけては、緻密に張り巡らされた伏線が1本の線となって鮮やかに表出し、ミステリーだった本作は思わず笑ってしまうような悲喜劇へと変貌を遂げ、観る者をあっと言わせて幕を閉じる。悲しくも滑稽なラストシーンでは、脚本も兼任して巧みな作劇を披露したトルナトーレ監督に脱帽すると共に、人の愚かさについて深く考えさせられる。

(文・岸豊)

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST