動物たちの視点から見えてくるもの―映画『シーズンズ 2万年の地球旅行』ジャック・クルーゾ監督インタビュー

ジャック・クルーゾ監督

『オーシャンズ』のジャック・ペラン&ジャック・クルーゾ監督コンビが、8年ぶりに手掛けた新作『シーズンズ』が今月15日から公開される。単なるネイチャー・ドキュメンタリーの枠を超え、目からウロコの撮影方法で自然の営みを美しくドラマティックに見せた今回の作品。来日したクルーゾ監督に、撮影秘話を聞いた。

―『シーズンズ』は動物の視点から自然界が映し出されますね。そこが新鮮でした。

今回、私たちが指針にしたのが、そこなんです。カラスがオオカミを見ているシーンなら、ドローンを使って、カラスが上から見下ろしている画を撮ったり、カラスが木に止まって見ているなら、カメラを木に固定して撮るという具合でした。

―普通の撮影と違いますね。いろいろと細かな注意が必要なのでは?

気を付けたのは動物よりも上の視点から撮らないということ。対象の動物と同じか、それより下の視点から撮影しました。例えば、森を行くハリネズミを追う場合、土の中を掘って、その位置からネズミと平行に追うんです。正面から撮る時は、どうしてもカメラが上になるので、そういう時は鏡を使うんですよ。上から撮ってしまうと、それは人間の視点。人間の視点を忘れさせるのが目的でした。

―『オーシャンズ』から8年。撮影技術も進化したのでは?

カメラは最新のソニーF65、8Kで撮っています。これはフィクション向きではありません。女優さんのメイクが大変ですから(笑)。動物の場合、毛並みまで捉えてくれるのでちょうどいいんです。例えば、ヒナに餌をやる親鳥の映像、見たことありますよね。今回は、餌そのものを見ることができます。また、これまで鳥類を研究していた人たちが絵でしか記述できなかった細かな特徴まで映っているんですよ。

(C)2015 Galatée Films – Pathé Production– France 2 Cinéma – Invest Image 3 - Rhône-Alpes Cinéma – Center Parcs – Winds – Pandora Film

(C)2015 Galatée Films – Pathé Production– France 2 Cinéma – Invest Image 3 - Rhône-Alpes Cinéma – Center Parcs – Winds – Pandora Film

―サウンドに関しては、いかがですか?

皆さんの多くが映画館で体験しているのは、5.1や7.1システムですよね。劇場の中央と横、後ろから音が聞こえてくる。今回の映画は、それよりさらに進んだドルビーアトモスという3D映画でよく使われるサウンドシステムなんです。天井からも聞こえてくるので、まさに包まれている感じ。この映画はほとんどが森の中ですが、森の中にいる臨場感が味わえます。この辺で鳥が歌っているなとか、立体感が味わえるんです。

―ネイチャーもののドキュメンタリーというと、動物の表情や動きをじっと待って撮影するイメージがありますが、『オーシャンズ』や『シーズンズ』はシナリオや絵コンテを書いて、撮影に臨まれたそうですね。

『オーシャンズ』の時にアメリカの批評家が、この映画はフィクションではないけれど、フィクションのように考えられ、撮影され、編集されていると書いていて、わりと当たっていると思いました。それは今回も同じなんです。僕たちはドキュメンタリーを撮るというより、映画を撮りたいという思いがある。だから、脚本を書いて、バランスを考えてから撮影に臨みます。熊のシーンが多すぎるとか、人間が多すぎるとか、動物どうしの比率も考えて。撮影に入るとシナリオからは一端解放されて、撮影に注意深く集中するんですけど、シナリオを書くことで方向性がはっきりするんです。山の中で猛禽類を撮る時も、あの場面でこういう風に使えるとわかって撮ることができますから。もちろん撮って使わない映像もありますけどね。

―その中で、クルーゾさんとペランさんの役割分担は?

ルールもないし、役割も毎回変わります。ロケ地を選ぶ時もそうだし、自分が書いたシーンじゃなくても、どちらか撮りたい方が撮ります。編集もそうですね。撮っていて感じるのは、僕たちのどちらが何をするかというよりも、映画が僕たちから独立して歩みを進めているような感覚。3時間に編集したものを1時間半にする際も、この映画はこうあるべきだという形に自然と映像が選ばれていくんですよ。

―こうあるべきだという形。そもそも、この作品の起こりは?

単に野生動物を撮るだけでは、僕らも熱くなれないんです。『オーシャンズ』が海だったから、今度は森にしようというだけでは足りないなと。そこで、動物の視点から見たらどうかということになり、これだ!と思いました。この映画では、地球の2万年の歴史を追っていますが、それを考える時、私たちはどうしても人間の視点から見てしまいがちです。でも、森を伐採し、農地を開墾して農業を起こす。そうした人間の営みを動物たちはどう見てきたんだろう。カメラを動物の横に据えてみたら、どんなものが見えてきて、私たちは何を感じるんだろう。そこが僕らのモチベーションでした。

(C)2015 Galatée Films – Pathé Production– France 2 Cinéma – Invest Image 3 – Rhône-Alpes Cinéma – Center Parcs – Winds – Pandora Film

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―2万年の歴史、ずいぶん長い期間を追っています。

最初のシナリオは3時間だったんです。長すぎますね(笑)。だから、半分にしました。やむを得ずカットしたエピソードにも、興味深い話がたくさんあったんですよ。例えば、ルイ16世の時代。フランス革命の少し前ですね。鳥の次に空を飛んだのは動物たちだったんです。

―えーと、何のことでしょうか(笑)

気球の発明をしたんです(笑)。ジョゼフ=ミシェル・モンゴルフィエ兄弟が気球を発明して、ベルサイユでお祭りがあって、人間を気球に乗せて出発させようとルイ16世が考えたんだけど、どうなるかわからないのに人間を乗せるわけにはいかないと、羊と鶏と鴨が乗ったんです。千人以上の観衆が見守る中、気球が飛んで、燃料が続く限り飛び続けて、ベルサイユを離れ、はるか遠くまで行ったんですよ。ちょっと揺れたみたいですけど(笑)。見事に着地して、無事に戻ってきました。

―他にも、そんなエピソードが?

ルネサンス前に、動物に対して訴訟を起こした話もあるんです。裁判官の前に、市民がいて、この動物をどういう罪状にするかという裁判が行われたらしいんです。豚に対する訴訟とか。時々、人間の赤ちゃんを豚が食べてしまうことがあったらしいんですよ。その豚には極刑が下りました。調べて行くと、こういう話が山のように出てくるんです。

―今の形になるまでに、ずいぶん縮められたんですね。2万年にわたる自然界の営みが描かれる中で、やはり印象に残るのは人間との関わり。いろいろと考えさせられました。

先程のカットしたエピソードでいえば、ペストという疫病がありましたが、流行する時期と沈静化する時期がある。なぜだか知っていますか? ペストを媒介するのは、ハツカネズミのような大きな黒いネズミに寄生する特殊なノミなんです。ある時、アジアからやってきた新種のネズミがヨーロッパにやってきたんですよ。新しいネズミの方が黒いネズミより強かったので、黒いネズミを排除した。そして、黒いネズミに寄生していたノミは新種のネズミが嫌いで寄生しなかった。今はアジアから来たネズミがいっぱいいますけど、ヨーロッパをペストから救ったのは彼らなんです。動物と人間の歴史は本当に長い話です。計り知れません。とても1時間半では語りきれない(笑)。シナリオを1時間半に縮めましたけど、編集してみたら、また3時間になって(笑)。さらに縮めて今の長さになりました。

(C)2015 Galatée Films – Pathé Production– France 2 Cinéma – Invest Image 3 - Rhône-Alpes Cinéma – Center Parcs – Winds – Pandora Film

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話しはじめると、マグマのように次々と話が溢れてくるクルーゾ監督。目をキラキラさせながら話す姿は、野生動物や自然への愛と興味=クルーゾ監督の人生なのだろうと感じさせる。季節をめぐりながら、2万年を経て、今に至る自然界の悠久の時を美しい映像で追った『シーズンズ』。最初の方に出てきた動物が、後の方で成長した姿で映っていたり、細かなところまで思いが詰まっていて、何度観ても発見がありそうだ。期間限定でお子さんが500円で観られるサービスも。

(取材・文:多賀谷浩子)


映画『シーズンズ 2万年の地球旅行』
1月15日(金)、TOHOシネマズ 日劇他 全国拡大ロードショー

期間限定、こども500円!(2016年1月15日~4月8日)

監督:ジャック・ペラン&ジャック・クルーゾ『オーシャンズ』
日本版ナレーター:笑福亭鶴瓶、木村文乃
日本版テーマソング:クリスタル ケイ「Everlasting」

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