【ハリウッド斜め読み】超大作『オデッセイ』 見え隠れする「中国」マーケット

地球から遠く離れた火星にたった一人取り残された主人公。自身の生存を知るものはなく、食料も残り僅か。生存の望みは、4年後に来る次の探査プロジェクトで発見してもらうこと――。

火星という壮大な舞台でのサバイバル劇を描いたリドリー・スコット監督の最新作『オデッセイ』が2月5日公開され、映画興行ランキングで初登場1位を獲得、早くも各所で大きな反響を巻き起こしている。

エイリアン』『ブレードランナー』など数々のヒット作を生み出してきた名監督の作品だけに、劇場に足を運んだ観客のレビューも概ね高評価だ。

手に汗握る「絶望的窮地」との苦闘の連続

(c) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

(c) 2015 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

宇宙を舞台にしたサバイバル映画、更にいえば、雪山での遭難や海上での漂流をテーマとした、生存のための孤独な闘いを描いた映画は、ここ数年だけでも無数に世に送り出されている。その中でこの作品がこれだけ多くの支持を集めているのは、作品全体を通して極めて前向きなムードが流れているためであろう。

マット・デイモン演じるワトニーは比較的序盤から、長期生存の見通しを立てることに成功し、不可能と考えられていた地球との交信についても限られた火星の資源と知恵を総動員して、ついに実現に成功するのである。

物語序盤にして、こんなにトントン拍子で話が進んでしまって大丈夫なのか、と観る者は別の意味で心配になってしまうのだが、そこは心配ご無用。ワトニーには次々と絶望的なトラブルが襲ってくる。その奮闘の様は、さながらロン・ハワード監督の『アポロ13』のようで、宇宙の彼方にいるワトニーの閃きと地上の人類の叡知を総結集して乗り越えていくのである。絶望的な状況に陥っても、諦めることなく次々と苦難に立ち向かっていく登場人物たちの様を見て、「希望をもつこと」が常にこれまでの人類の新たな一歩の糧であったことを思い起こさせるのだ。

NASAは火星を目指した 「ハリウッド」は何処へ向かうのか

この映画では、火星での一宇宙飛行士の奮闘劇が描かれる一方で、ワトニーの生存を、人種も国境も超え、全地球が一丸となって願う様子も描かれている。その中でも、特に象徴的に描かれているのが、まさに万事休す、という事態に陥った際に中国から差し伸べられる救いの手だ。

『ゼロ・グラビティ』 (C) 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ゼロ・グラビティ』 (C) 2013 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

同じく宇宙を舞台にした『ゼロ・グラビティ』公開時にも話題となったが、ここ数年、ハリウッドは巨大市場である中国マーケットを見据え、中国人を物語の重要人物として登場させたり、中国に関係するアイテムが物語のキーになっていたりする映画を制作する傾向が顕著になってきたと言われている。そして、この作品でもまさにその中国が「救世主」として描かれているのは決して偶然ではないはずだ。

もちろん、今回のこうした描かれ方が純粋に中国マーケット向けのサービスであるとは言えない。国際情勢の変化を踏まえて映画史を振り返ると、30年以上前の映画であれば、このポジションは長らくソ連のものであったし、冷戦終結後には『インディペンデンス・デイ』のように、人類の脅威に世界各国の人々が共に立ち上がるようになった。

こうした流れから考えると、「地球上の思いが一つになった」「競争相手である国に手を差し伸べる」という象徴的存在が2010年代のアメリカにとっては中国であったということで、自然な筋書きであると納得はできる。

とはいえ、ロシアを始め、ヨーロッパ各国、そして日本に宇宙開発の実績がないわけではない。映画の結末にはホッと胸を撫で下ろしつつも、どこかに「忘れ去られた」ような「取り残された」ような、一抹の寂しさを覚えるのである。

(文:小林三笠)

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アーティスト情報

リドリー・スコット

生年月日1937年11月30日(80歳)
星座いて座
出生地

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