映画『リリーのすべて』ー世界初の性別適合手術を受けた女性と、その妻の物語

(C)2015 Universal Studios. All Rights Reserved.

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リリー・エルベ。世界でもっとも哀しく、幸福な女性。トランスジェンダーの女性として世界で初めて性別適合手術を受けた彼女は、1920年代まで男性の画家、アイナー・ヴェイナーとしてデンマークで活躍していました。ですが、ある出来事をきっかけに自らの内面が女性であることに気づき、苦悩の末、本当の自分として生きることを決意します。

内面的には女性でありながら、男性の身体を持って生まれてしまったことは、たしかにとてつもない不幸であることは間違いありません。ですが、その一方で心から信頼できるパートナーであるゲルダに出会えたこと、そして本当の自分の性を生きられたことは、紛れもない幸福だといえるでしょう。

1920年代、デンマークのコペンハーゲンで風景画家として成功を収めていたアイナー・ヴェイナーは、妻であり画家の仲間でもあるゲルダと一緒に仲睦まじい生活を送っていました。しかしある日、ゲルダに頼まれて女性モデルの代わりをしたことがきっかけで、自分の中に住む女性、リリーの存在に気づきます。最初はゲルダも遊びのつもりで女装やメイクを手伝い、「アイナーの従妹のリリー」として一緒にパーティにも出かけましたが、徐々にリリーの存在は抑え込めておけないほど大きくなっていきました。

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タイトルの通り、これはリリーの物語であることは間違いありませんが、もうひとり、アイナー・ヴェイナーの妻ゲルダのことも忘れてはいけません。物語のひとつの軸がリリーの生き様だとするならば、もうひとつの軸はゲルダの愛。アカデミー賞で助演女優賞を受賞したアリシア・ヴィキャンデル演じるゲルダは、愛する夫が消えていくという哀しみと、夫に本当の自分を生きさせてあげたいという葛藤の間で板挟みになります。

それでも、ゲルダは自分の夫が女性であるという事実を理解し、夫の苦しみを取り除くべくさまざまな医師に相談します。とはいえ、今ほど性的違和に対する理解がなかった時代。「性的倒錯」や「妄想」、「精神病」などの心ない言葉が2人を傷つけました。しかし、ゲルダは屈することなく、ドイツのある婦人科の医師を見つけ出し、性別適合手術のことを知ります。いまだ世界で前例がなく、きわめて危険な手術。それにも関わらず、「今の身体は何かの間違い」と手術を望むリリーと、彼女の本質を理解して支えになるゲルダ。

リリーの勇気、ゲルダの献身。そこにあるのは、もはや夫婦という枠を超えた究極の信頼関係です。人が人を愛するとは、そして理解するとはどういうことなのか。息を呑むほどに美しい、崇高な愛の形がここにあります。

(文:玉田光史郎)


映画『リリーのすべて』
2016年3月18日(金)公開

監督:トム・フーパー
脚本:ルシンダ・コクソン
出演:エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、ベン・ウィショー、アンバー・ハード、マティアス・スーナールツ 他
原題:The Danish Girl
提供:ユニバーサル映画
製作:ワーキング・タイトル、プリティ・ピクチャーズ
レイティング:R15+
配給:東宝東和

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