映画『ロブスター』―意外な設定ではあるものの、そこから浮き彫りになる人間関係はゾクッとするほど核心を突いている【連載コラム Vol.2】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。第2回目はヨルゴス・ランティモス監督作、第68回(2015年)カンヌ国際映画祭で審査員賞も受賞した『ロブスター』。


(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

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仕事柄「最近観た映画でおすすめって何ですか? 何が面白かったですか?」と聞かれることが多いですが、洋画邦画、大小あわせて、日本の映画公開本数は1000本超え! たしかに何を観たらいいのか、自分にとってどれが面白いのか選ぶのは大変です。ちなみに2015年の公開本数は1136本! 平均すると毎月94本、毎週23本も新作が公開されるということになります。

そのなかで、たとえば3月の第一週(4日、5日)も20本以上のタイトルが公開しました。なかでもおすすめなのは──

▶働くアラサー&アラフォー女子には、イタリアのコメディ『これが私の人生設計』
▶ファッション好きの人には、インテリアデザイナーでありファッションアイコンでもある女性のドキュメンタリー『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』
▶話題の映画を観たい人には、アカデミー賞脚色賞受賞の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』
▶家族&親子について考えたい人には、メリル・ストリープがロックスターを演じ実の娘と親子役を演じた『幸せをつかむ歌』

ですが、ですが、一番おすすめしたいのは『ロブスター』! ロブスターって、あのハサミのある美味しいロブスターのこと? って「?」だらけだと思います。間違いなくその美味しいロブスターのことではあるんですが、なぜそれがタイトルになっているのかがこの映画の面白いところで……。

(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

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物語を簡単に説明します。映画の舞台は“独り身(シングル)”でいることが禁じられている世界。独身者は施設のようなホテルのような謎の場所へ連れていかれ、そこで45日の間にパートナーを見つけなければならないのです。達成できないと、連れてこられたときに「何の動物になりたい?」と聞かれ、その時に自分が答えた動物に変えられてしまう! そんなヘンテコなお話です。

何のために? どうして? という疑問は当然浮上しますが、主人公のデヴィッド(コリン・ファレル)がいきなり連行されるように、観客も同じくいきなり映画のなかに引きずり込まれ、余計なことを考えている余裕がない! しかも後半は、施設から抜け出した独身者たちが暮らす森に舞台が移ります。そこでは施設とは逆に“パートナー”になることが禁止。次から次へと想像もしない設定を突きつけられる。そんな普通じゃない物語は俳優にとっても魅力的だったはずで──主演のコリン・ファレルをはじめレイチェル・ワイズ、レア・セドゥ、ジョン・C・ライリー、ベン・ウィショーなど、豪華すぎる俳優たちがこぞって出演していることからも、彼らは脚本に惚れて出演しているのだろうと想像がつくわけです。

(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

この面白さを生み出したのは誰なのか? 監督・共同脚本・製作をこなすのはギリシャのアテネ出身ヨルゴス・ランティモス。この監督、2作目の長編『籠の中の乙女』はカンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリを受賞し、続く『アルプス(原題)』はヴェネチア国際映画祭で脚本賞を受賞。前者は、子供たちを家の中にかくまい社会から隔離して育てる父親とその家族の話。後者は、死んだ人の代役として生きることで遺族の悲しみを和らげるサービスを生業とする人々の話。どちらも人との繫がりと崩壊を描いていて、それはそのまま『ロブスター』にも引き継がれているように見えます。

(C)2015 Element Pictures, Scarlet Films, Faliro House Productions SA, Haut et Court, Lemming Film, The British Film Institute, Channel Four Television Corporation.

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こんなことってある!? と、意外な設定ではあるものの、そこから浮き彫りになる人間関係はゾクッとするほど核心を突いている。デヴィッドの選択と彼と恋に落ちる“近視の女(レイチェル・ワイズ)”が最後に投げかけてくる衝撃的な結末を通して考えるのは、愛って何だろう? 一緒に暮らすってどういうことだろう? 最後の最後まで思考を止めさせてくれない映画です。あ、シリアスっぽく受け止めてしまったかもしれませんが、ベースはコメディなので、ブラックなコメディなので、気軽に観ることをおすすめします!

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani 

映画『ロブスター』全国公開中

出演:コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ、ジェシカ・バーデン、オリビア・コールマン、アシュレー・ジェンセン、アリアーヌ・ラベド、アンゲリキ・パプーリァ、ジョン・C・ライリー、レア・セドゥ、マイケル・スマイリー/ベン・ウィショー
監督:ヨルゴス・ランティモス『籠の中の乙女』
脚本:ヨルゴス・ランティモス、エフティミス・フィリップ
2015/アイルランド・イギリス他/カラー/英語・フランス語/118分
原題:THE LOBSTER
後援:アイルランド大使館、ブリティッシュ・カウンシル
配給ファインフィルムズ
R-15+

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アーティスト情報

コリン・ファレル

生年月日1976年5月31日(42歳)
星座ふたご座
出生地アイルランド・ダブリン

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ジョン・C・ライリー

生年月日1965年5月24日(53歳)
星座ふたご座
出生地米・イリノイ・シカゴ

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ベン・ウィショー

生年月日1980年10月14日(37歳)
星座てんびん座
出生地英・ハートフォードシャー

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