映画『僕だけがいない街』平川雄一朗監督インタビュー「僕らにとってのテーマがいくつもある物語」

平川雄一朗監督

平川雄一朗監督

3月19日から公開される映画『僕だけがいない街』。手掛けたのは、平川雄一朗監督。『そのときは彼によろしく』『陰日向に咲く』『ラブコメ』『ツナグ』などの映画はもちろん、『白夜行』『ROOKIES ルーキーズ』『JIN-仁―』『天皇の料理番』、最近では『わたしを離さないで』などドラマの演出にも定評がある。そんな平川監督に伺った『僕だけがいない街』の製作秘話。同席された春名慶プロデューサーのお話も時々織り交ぜ、お届けします。

――まず、原作を読まれた感想から伺えますか?

平川監督(以下、敬称略):謎に満ちていて、その謎の中で主人公・悟が2006年の現在から1988年の過去に戻ると、子どもたちを中心とした物語が見えてくる。どうなっていくのだろうと引き込まれました。謎がある分、地に足のついたドラマにしないといけないなと。そのうえで、エンターテイメントにできたらいいなと思いました。

――すごく人気のある原作ですよね。映画化権をとられた勝因は?

平川:春名さんの手が早かったんです(笑)。

春名プロデューサー(以下、敬称略):はい。足も速いですが、手も早いです(笑)。

平川:だって1巻が出た時点でしたから。

春名:最初から、監督は平川監督だと決めて、それも含めて映画化権の相談を出版社さんにさせて頂きました。そうしたら、翌年に「このマンガがすごい!」で注目されたんです。

平川:その後、クランクインまで2~3年かかりましたね。

春名:それは監督が売れっ子だからですね(笑)。

平川:考え尽くして、3年です(笑)。

春名:結果、いいタイミングになりましたね。

――せっかく春名プロデューサーがいらっしゃるので、平川監督の魅力を伺えますか?

春名:僕は彼の映画デビュー作『そのときは彼によろしく』をプロデュースしているのですが、総合力があるのはもちろん、子役の芝居を引き出すのが本当に巧いんです。

――今回も、藤原竜也さんの子ども時代を演じた中川翼くんや、重要な雛月役を演じた鈴木梨央ちゃんたちが、本当によかったですね。

春名:ドラマ『白夜行』の初回2時間スペシャルは子ども時代の話だけだったじゃないですか。子役だけで2時間もたせるって、そんな冒険、普通はしないですから。すごいなと思ったんです。『そのときは彼によろしく』も主演は長澤まさみさんですが、回想録なので、半分ぐらい子どものシーンなんです。今回も半分、子どもの話なので、いちばんに監督の顔が浮かびましたね。

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

――そんな平川監督は、子どもたちの演出に何か秘策が?

平川:子どもたちは染まっていないんです。こっちが言っただけ素直に色がついて立体化していくのが、やっていて面白いんですよ。それ以上の芝居が出る爆発力もあるし。子どもたちは台本を読んだところで、どういう気持ちなのかわからないから、そこを補足してあげる感じですね。

――子役の役者さんたちにも台本は渡すんですか?

平川:渡しますし、リハーサルもします。一挙手一投足に意味があるから、なぜそうなるのかを全部説明するんです。子どもたちはゼロからのスタートだから、楽しいんです。

――中川翼くんと鈴木梨央ちゃんについては?

平川:すごく追い込まれていましたね。(藤原)竜也くんに似ているというところでキャスティングしたから、最初から、あんなにうまかったわけじゃないんです。オーディションでは、ちょっと大人しい印象だったんですけれど、その分、伸びしろがありましたね。梨央ちゃんに関しては、すごく巧いし、完成しているように見えますが、まだ子どもだから、やはり伸びしろがある。しかも、自分がその気持ちに到達して演じられていない時は、ちゃんとわかっているんです。撮影中に「追い込んでください」って言われたんですよ。何回もやらないと、その気持ちになって表現できないからって。すごい子役でしたね。

――大人のキャストについても伺いたいのですが、まずは藤原竜也さん。漫画家デビューはしたものの、なかなかうまくいかず、ピザ店でバイトしている29歳の悟役です。

平川:僕はAD時代にご一緒しているんです。『愛なんていらねえよ、夏』というドラマなんですけど、メインの役ではなくて、かなり若い時ですね。僕はまだまだ藤原くんの実力を知らなさすぎたなと今回ご一緒して思いました。すごい役者さんなんだなと。こちらが言わなくても、表現がちゃんとできている。多くを語る必要がないんです。それが画に出ていますよね。感情表現が本当にすごいですから。力を感じましたね。

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

――では、有村架純さんはいかがですか? 悟と同じピザ店でバイトしている愛梨役。映画では、カメラマン志望の女の子という設定になっています。

平川:ちゃんと悩んでいる人というか、自分の中での正解をすごく探しているから、僕が言ったことに対してのレスポンスも、迷いながらやってくれることで、その感情が表現できているんです。自信満々でやられても伝わらないことって多いので。すごくまじめないい女優さんだなと思いました。揺らぎながら、自信がないけれど精一杯やっている感じが、観ている人も共感できると思いますね。月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』を観ても、一生懸命やっている姿がいいですよね。

――及川光博さんが先生役なのも新鮮でした。悟の小学生時代の先生。こういう役、珍しいですね。

平川:キャスティングの話は春名さんの方がいいですね。

春名:悟は父親を知らない子どもだろうと、僕たちは考えていたんです。ならば、悟が父親を感じられる人にしたかったんですね。方言も助けてくれましたね。北海道弁を話すミッチー(笑)。

平川:子役の芝居と何度も付き合ってくださった及川さんと石田(ゆり子)さんは大変だったと思いますね。過去と現在をつなぐ役目をはたしてくださって、本当に感謝しています。

――石田ゆり子さんの悟のお母さん役も素敵でした。まずはお母さんを守るということから、29歳の悟は過去にタイムスリップして、小学生時代の未解決事件の謎に挑んでいく。いわば、物語のきっかけとなる大事な役です。

平川:この映画の母性になってくれればいいなと思っていました。「私、子供いないんだけど」ってご本人はおっしゃっていましたけど、女性が本来持っている優しさや温かさをうまく表現してくれたなと思います。AD時代にご一緒したことがあるんですが、素敵な女優さんとまたご一緒できて幸せでしたね。石田さんも迷いながら、やって下さいました。迷いがあるというのは、一生懸命やっているってことだと思うのですが、手を抜かずに一生懸命やって下さる。その姿勢が素敵でしたね。

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

(C)2016 映画「僕だけがいない街」製作委員会

――ところで、たまたま同じタイミングでアニメも放送されています。

平川:第1話は似ていますけれど、その後の展開が少しずつ違ってきます。アニメは巧く飛ばしているなと思いますね。

――アニメと映画は、エンディングが違いますよね。あの展開にされたのは?

平川:そうですね。春名さんと話したのは、何かを得たら何かを失わないといけない、そういう代償をちゃんと描こうということなんですね。

春名:SFファンは、そういう考え方を大事にするそうなんです。そこを考えないと、過去に戻って、何でもアリになってしまう。それをふまえて、映画はああいう展開にしたんです。

――『僕だけがいない街』のタイトルが示すものが、アニメと映画で違いますね。

春名:最初に原作のタイトルを聞いて、「どんな街なんだろう」って。そこから、この企画がスタートしたんです。映画のゴールで、その問いに答えようと思いました。

平川:原作はまだ連載中ですけれど、原作者の三部けいさんにエンディングの方向性を聞いてから、僕たち映画のスタッフの中では、ああいうエンディングになっていたんです。

春名:2巻が出た頃に、もう脚本を練り始めていたので。まだ三部さんの中にも着地イメージがはっきりなかった頃でしたね。

――原作もそうですが、虐待される子どもの話だとか、現代のシリアスな問題も描かれています。

平川:原作を読んで、問題提起しているなと思いましたね。人間の根本について。葛藤とか後悔とか、僕らにとってのテーマがいくつもある物語だと思います。

――では最後に、映画を楽しみにしている皆さんに。

平川:ミステリーなんですけど、謎解きの果てに絶望とわずかな希望があるんです。観て下さった方には、その希望を受け止めて、映画館を出てもらえたらいいなと思っています。

(取材・文:多賀谷浩子)


映画『僕だけがいない街』
大ヒット上映中

原作:「僕だけがいない街」三部けい(KADOKAWA/角川コミックス・エース)
監督:平川雄一朗
脚本:後藤法子
音楽:林ゆうき
キャスト:藤原竜也、有村架純、及川光博、杉本哲太/石田ゆり子
主題歌:「Hear ~信じあえた証~」栞菜智世(ユニバーサル ミュージック/EMI Records)
配給:ワーナー・ブラザース映画

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平川雄一朗

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