映画『あやしい彼女』要潤インタビュー「今回は削ぐ演技が求められた気がします」

要潤

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『謝罪の王様』『舞妓Haaaan!!!』など、コメディに定評のある水田伸生監督が新たに選んだ題材は──不思議な写真店で撮影をしたことで、中身は73歳のまま見た目は20歳に若返ってしまったヒロインが巻き起こすコメディ。何かの拍子で互いの人格が入れ替わったり、過去や未来にタイムスリップしたり……というのはよくある設定。でも、主人公の体だけ73歳から20歳に若返る(=タイムスリップする)というのは、ありそうでなかった!? そんなユニークなストーリーに惹かれ、若返ったヒロインと恋に落ちる男性を演じるのは、要潤。

──今回演じたのは音楽プロデューサーの小林拓人。彼は、偶然耳にした20歳の節子(多部未華子)の歌声に惹かれ、彼女もまた彼に惹かれていきますが、ヒロインが惚れる“素敵な大人の男性”を演じるにあたって意識したことは何ですか。

“優しさ”が決め手になるキャラクターだと思いました。これまで映画やドラマで描かれてきた音楽プロデューサーのイメージは、革ジャン、革パン、サングラス──という、いかにもな姿を想像しがちですが(笑)、小林拓人にそれには当てはまらないと思って……。サラリーマンっぽくて、普通の青年で、そして優しい。仕事ができるというのは始めから決められていたことなので、それを演技でどうこうすることはなく、“優しさ”を大切にしました。

──たしかに、いい意味でクリエーターっぽくない普通さを感じましたし、衣装からも優しさが伝わってくる、小林拓人のファッションセンスも素敵でしたね。

実は、水田監督は衣装にこだわりを持っていて、かなりの数の衣装合わせをしたんです。俳優はまず衣装から演じる人物をイメージしていく、今回も衣装からたくさんのヒントをもらいました。次に参考にしたのは小林拓人が住んでいる家。監督が言うには、彼は趣味で古民家を改装した家に住んでいるんだと。セットを見たとき、小林拓人を演じるためのものはすべて整った、と思いました。

(C)2014 CJ E&M CORPORATION

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──家の雰囲気にも彼の“優しさ”が現れていますね。また、見た目は20歳、中身は73歳の節子を演じる多部未華子さんとのコメディ感もぴったりでした。

そもそもの設定がボケているので(笑)、そのボケを殺さないツッコミ担当というか。ボケ殺しっぽい感じのところもあるんですが、敢えて突っ込んで掘り起こすということはしなかったです。多部ちゃんは大変だったと思います。僕はもう多部ちゃんに身を任せるという感じでした(笑)。ただ、この映画はこれまで自分が経験したことのないコメディで。コメディだけど泣けるし、すごく自然な雰囲気で演じることができたんですよね。コメディって付け足していくことが多いものですが、今回は削ぐ演技が求められた気がします。

──それは要さんにとって挑戦でしたか。

そうですね。コメディ映画だと思って現場に入りましたが、僕が今までやってきたコメディとは少し違ったというか……。今までは、笑わせるために(敢えて大袈裟に)演じたり、ボケとツッコミでいうとボケ倒しみたいな感じが多かったけれど、今回はタイプが違った。上質な笑いっていうのかな。観ている人に対して笑いを強要しないタイプのコメディだと思ったので、余計なものはぜんぶ捨てていきました。

──コメディなのにドラマチックで泣けて、突飛な設定なのに「もしかして……」と思わせてくれる、不思議な映画ですね。

ほんとうに。街を歩いていて写真館を目にすると「もしかして……」って想像しちゃいますよね。目の前にあの写真館が現れたらやっぱり写真を撮ってみたくなると思います。ただ、20歳の頃はしんどかったので(苦笑)、戻るなら小学校3年あたりがいい。その頃、僕は陸上をやっていたんですが、通っていた小学校はクラブが野球と陸上しかなくて、陸上を選んだ。なので、陸上ではなく野球を選んでいたらどんな人生を送っていたのかなって。想像は膨らみます(笑)。

(C)2014 CJ E&M CORPORATION

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──「もしも」「あの時」を考えるのもこの映画の楽しみ方のひとつですよね。「しんどかった」という20歳は『仮面ライダーアギト』で俳優デビューを飾った年でしたよね。

はい。今年35歳、芸能生活としては15周年が過ぎましたが……ここまでくるのは早かったですね。駈け抜けた感、あります。

──当時、30代はどんなふうになりたいとか、何か想像していましたか。

ざっくりと「こういう役者になりたい」というプランは持っていました。いろんな役を演じられる役者になりたいと思っていて。変な話、芸能人になる、有名人になる、というよりは「あの人って役者さんだよね」って思われる存在になりたかった。それは、仮面ライダーをやる前、19歳の頃に自分への手紙に書いたことなんです。初心忘れるべからず──で、その時の気持ちを書き留めておこうと思って書いたんですけど、いまその手紙はどこに行ったか(笑)。

──目標が叶ったということで、手紙は役目を終えて姿を消したのかも知れないですね(笑)。40歳に向けて、新たな目標は立てていますか。

今の僕は、ホップ・ステップ・ジャンプのホップを終えたぐらいだと思うので、35〜40歳でステップ、40代にジャンプできたらいいなぁと。なので、40歳まではとにかくいろんな監督さんやプロデューサーさんと仕事をしたい、やたらめったらやっていきたいと思っています。

(C)2014 CJ E&M CORPORATION

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──そういう意味では、今回の映画『あやしい彼女』という作品や水田監督の仕事は心躍る出会いだったわけですね。

そうですね。作品の面白さはもちろん、水田監督と仕事がしたかったという気持ちが強くて──。周りから、水田監督は役者たちが伸び伸びと演技ができる、役者にとって勉強になる監督だと噂を聞いていたので、会ってみたくて。そんなふうに「お会いしたいなぁ」と思い始めた頃にこの映画の話をいただいた。何だか運命的なものを感じたんですよね。

──要さん、引き寄せ力ありますね。

あるんですよね、引き寄せ力(笑)。20歳の頃から「この人と仕事がしたいなぁ」という人とは、全員じゃないですけどお会いできていて──。

──もちろん、日々の努力あってこそでもあると思います。今回の撮影で一番大変だったのはどんなことですか?

僕、高所恐怖症なんですね(苦笑)。なので、アスレチックのシーンは大変でした。台本上ではト書き2行ぐらいのシーンだったので、それほど深刻に捉えていなかったんです。それがいざ現場に行ってみるとものすごく本格的なアスレチックで……。あのシーンは大変でした。ほかのキャストは僕が高所恐怖症だとは知らないし、プライドもあるし、平気なふりを貫きました(笑)。私生活は別ですが、仕事となれば、役となれば、高いところでも何でもやります。やらずに後悔するのは嫌なので。

──さすがです(笑)。「コメディなのに泣ける」とおっしゃっていたこの映画、いち観客としての感想も聞かせてください。

ものすごく泣けました。自分が出演した映画を最初に観るときは、決まって自分の演技のあら探しをするものですが、今回はひとつの作品として普通に観ることができた。台本を読んでストーリーは知っているはずなのに、素直に泣けたんです。いちばん泣いたのは、最後の母と娘のシーンですね。「生まれ変わっても……」というセリフのところ。僕自身にも親がいて子供がいるけれど、どんな家族がベストかなんて誰にも解らないものじゃないですか。でも、あのセリフがすべてを救ってくれた気がする。コメディではあるけれど家族の話でもあって、胸を打たれました。

(取材・文:新谷里映)


映画『あやしい彼女』
2016年4月1日(金)エイプリルフール全国公開!

監督:水田伸生
脚本:吉澤智子
出演:多部未華子、倍賞美津子、要潤、北村匠海、金井克子、温水洋一、志賀廣太郎、小林聡美
配給:松竹

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