『更年奇的な彼女』クァク・ジェヨン監督&藤原紀香インタビュー「どこか欠けている不完全な男女が出会って、互いを埋めていくのが愛」

クァク・ジェヨン監督と藤原紀香

クァク・ジェヨン監督と藤原紀香

『猟奇的な彼女』で日本でも人気のクァク・ジェヨン監督の新作『更年奇的な彼女』が4月8日から公開中。大学の卒業式で同級生の恋人にプロポーズするも、まさかの「ごめんなさい」。その時の心の傷から立ち直れず、20代半ばで下された診断は「ちょっと早めの更年期障害」!? 半ば自暴自棄のヒロイン、チー・ジアを演じるのは、中国四大女優のひとり、ジョウ・シュン。日本語吹き替え版で彼女の声を担当した藤原紀香と、映画のプロモーションで来日した監督に映画の魅力を聞いた。

――今日が初対面だそうですね。

クァク監督:そうです。藤原紀香さんがジョウ・シュンさんに似ていて、びっくりしました。ジョウ・シュンさんもパワフルな魅力の女優さんですが、紀香さんにも同じ魅力を感じます。

藤原:うれしいです。私も監督の作品はこれまでも拝見していましたが、作品に感じるあたたかさを、監督ご自身にも感じます。

クァク監督:ありがとうございます。

――監督は、綾瀬はるかさんを主演に日本で『僕の彼女はサイボーグ』を撮っていらっしゃいますね。今回は中国の映画です。

クァク監督:私は韓国の出身ですが、日本で映画を撮る時は日本の人の気持ちに、中国で撮る時は中国の人の気持ちになって撮っています。どの国の映画であるかよりも、大事なのは観客の心に触れること。私の映画を好きと言って下さる方のいる国で映画を撮って、一緒に映画を楽しめることがうれしいです。

(C) New Classic Media Corporation

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――どの国で撮った映画にも、監督らしさが感じられます。今回の映画を撮られた経緯を教えていただけますか?

クァク監督:私のこれまでの作品(『猟奇的な彼女』『僕の彼女を紹介します』『僕の彼女はサイボーグ』)を中国の観客の皆さんがとても支持してくださっていて、中国のプロデューサーの方から、お話を頂いたんです。以前、『楊貴妃』という映画を撮る話もあったのですが、当時は私自身、中国の事情をよくわかっていなかったので、しばらく自習期間をとって、中国で色々な経験をして、だいぶ理解できてきたので、そろそろ撮れるかなと。それで今回の作品を手がけることになりました。

――主演のジョウ・シュンさんのことは、気になっていらしたそうですね。

クァク監督:そうですね。ツイ・ハーク監督の『女人不壊』という映画の台本を書いたことがあるのですが、その主演が彼女だったんです。こういうことはよくあって、ご縁がある人とは、こうして時が巡って、ご一緒できるんですよ。だから、紀香さんともまたご一緒できるのではないかと楽しみにしています。

藤原:ありがとうございます。今回は声だけでしたから、ぜひご一緒できたらいいですね。

――監督の映画では、いつもヒロインが魅力的です。今回もヒロイン、チー・ジアが物語を動かしていきますね。

クァク監督:彼女は強い女性で、自己主張も強いですが、心に傷があって、それを自分では癒せないんです。『猟奇的な彼女』のヒロインも同じ。私はそういうところを大事にしています。

――なぜですか?

クァク監督:完璧な男女が出会って、愛が生まれるわけではないと思うんですよ。どこか欠けている不完全な男女が出会って、互いを埋めていくのが愛だと思うので。完璧な女性より、心に傷があったり、何か欠けている女性の方が守ってあげたいなと魅力を感じるような気がします。

藤原:チー・ジアみたいな友だちがいたら、周りの人たちは心配だし、手がかかるし、大変だと思うのですが、彼女を大好きになって、応援したくなってしまうのは、彼女が正直だから。監督の描くヒロインは他の映画もそうですよね。正直な人って目が離せないし、そういう彼女が自分を見守ってくれる周りの人たちの愛に気づいていく成長していく話なんですよね。

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――チー・ジアは感情の起伏が激しいから、声をあてるのは大変だったのでは?チー・ジアが酔っぱらう場面もスゴイです(笑)。

藤原:変でした(笑)。ブースに座り込んで泣いたり笑ったりしながら、やっていました。自分でお芝居するわけではなく、ジョウ・シュンさんのお芝居にあてるので、アテレコの難しさを痛感しましたね。でも、泣いて、笑って、気づいて、新たな一歩を踏み出す……ジョウ・シュンさんとチー・ジアを生きられたのが楽しかったです。

クァク監督:本当にアテレコは大変だったのではないかと思います。お酒を飲む場面は、本物のお酒を飲んでやってもらってもよかったんですよ。ジョウ・シュンさんには、そうやって演じてもらいました。

藤原:そうだったんですか!デビュー当時、酔っぱらうお芝居ができなくて、本当にお酒を飲んで現場に行ったら、監督にすごく怒られたことがあるんですよ(笑)。

クァク監督:そうでしたか。私なら怒りません(笑)

――アテレコするうえで、意識されたことは?

藤原:ジョウ・シュンさんのお芝居が直球じゃないですか。だから、小手先でなく、このラブストーリーをどんと受け止めて、私も直球でやろうと思いました。もう体当たりです(笑)。体ごと演じて、生きた声を出したいと思いました。

クァク監督:ジョウ・シュンさんのことをお話すると、彼女はキャリアも長いので、完璧に感情を作れるんです。たとえば、この辺に10秒ぐらい立ってから、カメラがこう動くので、それに合わせて動いてほしいと伝えると、ごく自然にそれをやってしまうんですよ。

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監督は強い女性がお好き!?

――『猟奇的な彼女』が公開された当時は、韓国は男性社会のイメージが強いから、強いヒロインが画期的に思えたんです。でも、あれから時間が経って、今は強い女性も珍しくなくなりつつあります。監督が強い女性を描き続けていらっしゃるのは?

藤原:それ、私も聞いてみたかったんです。強い女性に振り回されるのがお好きなのかな…とか(笑)。

クァク監督:振り回されるのは、好きじゃないです(笑)。周りの女性たちを見ていると、女性は皆、強いところを持っている気がするんです。それを表に出す人と出さない人がいる、その違いだけではないかと。以前は、出さない人が多かったんだと思うんですよ。

――たしかに、そうですね。

クァク監督:『猟奇的な彼女』が公開された時、これは私の物語だと言ってくれた女性がたくさんいたんです。やっぱり女性は強さを内面に持っているんだなと思いました。表に出ない女性の強さを、私は映画の中で引き出したいんです。

――女性の描写がリアルなのは?

クァク監督:それはきっと妻と娘のおかげですね。女性に囲まれて暮らしていますから(笑)。

――そんな強いヒロイン、チー・ジアを献身的に支え続けるユアン。ああいう男性像も、監督の映画では、おなじみです。

藤原:女性なら、誰もが求める男性像ですよね。あんな男性がそばにいてくれたら、女性はしあわせだと思います。映画を観始めた時は、ユアンはタイプじゃないなと思っていたのに、見終わる頃は大好きですから(笑)。

クァク監督:ああいう男性像を描くのが好きなんです。隣にいる時は気づかないけれど、いなくなった時に、そのよさに気づく。そういう男性、いますよね。一目惚れを描くのは好きではないんです。心からやさしくしてあげて、真心を尽くして、少しずつ愛が大きくなっていく。長く一緒にいる中で、育まれていくのがいいんです。だから、イケメンよりもユアンみたいな、ちょっと冴えない男性の方が好きですね。自分のコンプレックスを解消しているのかも(笑)。

(C) New Classic Media Corporation

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印象的な場面の舞台裏は!?

――監督の映画は、ワンシーンごとのエピソードが印象的で、くっきりと記憶に残る場面が多いですね。卒業式のプロポーズや、酔っぱらうシーンもそうですが、中盤、大雨の中、チー・ジアとユアンが車の中に閉じ込められる場面も、水の量にびっくりしました。

クァク監督:実はあの場面は、中国で実際に起きた事件を元にしているんです。2013年だったかと思うのですが、カップルが大雨の日に車から出られなくて、亡くなった事件があったそうなんです。その話を聞いて、台本に入れたんです。

――車内ではすごくシリアスな話をしているのに、車のすぐ外では、チー・ジアの友人リンが、ものすごいテンションで恋人と言い合いの電話をしている。あのギャップ、スゴイですね。

クァク監督:そういうギャップを描くのが好きなんです。シリアスなシーンにコメディを入れたり、コミカルなシーンに悲しい気持ちを描いたりするのが。車の屋根に乗っている男性は、現地で有名なコメディアンの男性なんですよ。

藤原:リンは牛に乗って、電話していましたよね。あれ、面白かったです(笑)。

クァク監督:あの牛、最初はイルカの設定だったんです。でも、スタッフが見つけられなくて、牛を持ってきちゃったんですよ。でも、おかげで面白いシーンになりました(笑)。

――水の中の撮影は、大変だったそうですね。

クァク監督:リン役のジャン・ズーリンさんは慎重が180センチもあるんですよ。だから、彼女の足が水に浸かるだけの水量を用意したら、2日かかりました(笑)。

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――監督の映画には、植物や動物、何かのアイテムが印象的に登場します。今回なら、カメとか。

クァク監督:元カレがプレゼントしてくれたカメなんですよね。だから、手放さないといけないと思っているんだけど、なかなか別れられない。彼女が海に離しに行くんだけど、カメが戻ってきてしまうのは、彼女の気持ちを表しているんです。ちなみに、カメは4匹出演してくれて、エンド・クレジットにも名前が載っています。

――サボテンも印象的に登場します。

クァク監督:サボテンのトゲは、チー・ジアのトゲトゲした気持ちを表しているのですが、サボテンは花が咲くでしょう。時間はかかるけれど、花が咲くと、とても美しい。そんな思いも込めています。最後の方でもサボテンが出てきて、彼女の変化を伝えているので、そこも楽しんで頂きたいですね。

――では最後に、映画を楽しみにしている皆さんに。

クァク監督:私の映画をご覧になる時は、どの国の映画であっても、登場人物の気持ちに共感しながら、気軽に楽しんで頂きたいです。国や言葉や文化の違いがあっても、共感できることがたくさんあると思って頂けたらうれしいですね。

藤原:この映画を観ると、すごく恋をしたり、誰かを大切にしたくなったりすると思います。周りの人の愛情に気づいて、やさしい気持ちにさせてくれる映画でもあるので、男女問わず楽しんで頂きたいですね。

(取材・文:多賀谷浩子)


映画『更年奇的な彼女』
大ヒット上映中

監督:クァク・ジェヨン
出演:ジョウ・シュン/トン・ダーウェイ/ジャン・ズーリン/ウォレス・チョン
日本版吹替キャスト:藤原紀香、他
日本版主題歌:華原朋美「君がそばで」(UNIVERSAL J)
配給:アジアピクチャーズエンタテインメント、エレファントハウス、カルチャヴィル

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アーティスト情報

クァク・ジェヨン

生年月日1959年5月22日(59歳)
星座ふたご座
出生地韓国

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藤原紀香

生年月日1971年6月28日(47歳)
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