宮迫博之インタビュー「本職の役者さんには申し訳ないですけど、すごく自由にやらせてもらっています」―映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』

宮迫博之

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狂言師の野村萬斎とお笑い芸人の宮迫博之が、かつてのお笑いコンビを演じている映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』。物に触れると、そこに残留する思念を読み取ってしまうため、家に籠りきりの仙石(野村萬斎)とお調子者の丸山。正反対のキャラクターが見せる、古沢良太の脚本ならではの軽妙な掛け合いが魅力だが、宮迫博之にとって、お笑い芸人を演じることとは――? 撮影時のエピソードを尋ねた。

――最初にお話を受けた時は、いかがでしたか?

野村萬斎さんは狂言で日本の伝統を守っている方なので、お堅い方なんだろうなと思っていたら、なんのなんの(笑)。すごく明るい方で、僕より明るいんですよ(笑)撮影の合間も、よくボケたりしていて、びっくりしました。やりやすかったですね。

――合間に、ボケる……。宮迫さんがツッコんだりするんですか?

いえいえ、僕は静かに雑誌を読んだりして(笑)。真逆なんですよ、役柄と。ネクラな仙石をやった萬斎さんが明るくて、明るい丸山をやった僕が静かという。僕はネクラな方なので(笑)。

――芸人さんの役ですし、普段観ている宮迫さんの延長で見られました。

お笑い芸人をやる時も、お笑い芸人を演じているところがあるんですよ。そういう意味では、普段のお笑いのガサツで無神経な部分を集約したのが丸山なのかなと。そう思って、やらせてもらいました。

――役者のスイッチと、芸人になるスイッチは違うんですか?

そうですね。普段の僕は気を遣う方なので、丸山とはまったく違う性格です(笑)。

(c)2016「スキャナー」製作委員会

(c)2016「スキャナー」製作委員会

――撮影中は、萬斎さんがいろいろ面白いことを仕掛けて、それを事もなげに受け止めて返す宮迫さんがスゴかったと聞きました。

漫才のシーンとか、アドリブが多かったので。もちろん僕が言うことに対して、萬斎さんが合わせてくれたりしましたからね。間のとり方が、狂言も言葉を使うから、やっぱり上手だなと思いましたね。初めて隣同士で掛け合いするわけだから、時間が掛かるかなと思ったら、練習なく普通にできたので、非常にやりやすかったです。

――二人はマイティーズという漫才コンビを組んでいたという設定ですが、コントの場面、総ラメの衣装でしたね。

昭和まる出しのね(笑)。コントで着たことはあるんですけど、実際にああいうの着て漫才することはないから新鮮でした。

――台本に、コントの内容は書かれていなかったそうですが、どんな内容だったのでしょう。撮影が昨夏ですから、もう覚えていらっしゃらないかもしれませんが。

そうですね、どんな話しましたっけね。じゃあ、適当にやりますねって感じでした。普段、漫才をもうずいぶんやっていないので、二人で客前に立ってやるのは懐かしかったです。

――テレビと近いですか?

そうですね。バラエティは、ほぼオール・アドリブですから。人が何かしたことや喋ったことに対応していますから、近いのかもしれないですね。それが丸山の場合は、舞台に立っているだけで。

(c)2016「スキャナー」製作委員会

(c)2016「スキャナー」製作委員会

――脚本の古沢良太さんに取材した際に、仙石は社会に適応しづらい人物だけど、実は丸山もはみだし方が違うだけで、社会に適応できないところのある人物なんだと。丸山について、どう思われますか?

僕は彼みたいに借金もしないですし、どちらかというと堅実な方なので(笑)。でも、仕事もなく、ドン底の時の自分を考えると、変なプライドが邪魔して、ウケなかったら客のせいにしていたことも過去にはあったと思うんです。そういう僕を誇張したのが、丸山なんだろうなと。そういう意味では、社会に適応していなかったから、当時、仕事なかったんだろうなというのは大いにわかるので。それを長くやっていたのが丸山なんだろうなと、想像はつきやすかったですね。

――こういう役を宮迫さんがやると、愛嬌が出ますね。一歩間違うと、かなりダメな人ですけれど。

それこそ昔の、もうお辞めになっている師匠や先輩方で、丸山みたいな人、山ほど見てきましたからね。これは、あの師匠やなとか、あの兄さんやなと想像して(笑)。僕らの世代までじゃないですか。借金取りが劇場に来て、大変な目に遭っている師匠を見たりしていたのは(笑)。デビューが28年前ぐらいですから、そんな人たちがギリいましたね。昭和の芸人さんですよね、丸山は。

――『岸和田少年愚連隊』もそうですけれど、宮迫さん、こういう役、お得意ですね。

チンピラ役みたいなの、いっぱいやらせていただきましたからね。丸山はアロハシャツを着ているんですが、ああいう格好、さんざんやらせてもらいましたね。

――『蛇イチゴ』の香典泥棒の兄役もそうだし、いい加減だけど憎めない役が多いです。

きっと、それが僕のイメージなんでしょうね。

(c)2016「スキャナー」製作委員会

(c)2016「スキャナー」製作委員会

――不思議ですね。宮迫さん自身は静かで真面目な方だと思うのですが。

そうなんですよー(笑)。僕本来のものじゃないですから。でも、テレビに映る僕がそう見えるってことなんでしょうね。求められている部分が、バラエティの僕というか。普段の僕は真逆やから…よく知っている人は、普段そんなんじゃないと思っているんじゃないかと思います。

――演じるお仕事については? もともと役者を目指していたそうですね。

そうです。役者になりたかったから、お芝居の仕事はすごくうれしいし、楽しいだけなので。本職の役者さんには申し訳ないですけど、すごく自由にやらせてもらっています。本職の人には、どうしたって敵わないし、本職の人の緊張感をたぶん僕は持ってないので(笑)。楽しんで、なり切らせてもらおうかなとやっているので、ズッコイやり方ですよね(笑)。さんまさんが「カット!」ってかかると、すぐに素に戻って「どやった?」って喋り出すとか、本番始まる寸前まで喋ってるとか、よく言われていますけれど、そういうの、わかりますよね。話している途中で「本番!」と言われても、芸人やから話が途中で終わるの嫌なので(笑)。ギリギリまで喋られたら、イヤでしょうね。そんなん僕やらないですけど、でも、まぁ言いきらないと嫌やから、マキめで言います(笑)。

――すごくシリアスな役もやられていますが、そういう現場でも同じですか?

そうですね。もちろん、人が亡くなるシーンとかは、さすがに自重しますけど。役作りなんて、したことないですから(笑)。だってね、人殺しの死刑囚の役作りなんて言ったって、そんな経験したことないじゃないですか。

(c)2016「スキャナー」製作委員会

(c)2016「スキャナー」製作委員会

――『13階段』ですね。

そうです。あの時、山崎努さんと崔(洋一)監督も役者で出ていらして、3人で一緒の現場だったんです。年上の方で初対面だし、シリアスな作品なので、牢獄の中でひとりで誰とも喋らずにいたんです。たまたまマネージャーもいなくて(笑)。半日近く誰とも会話をせずに本番になって、現場がそのまま役作りでした(笑)。ほんまに捕えられてるんちゃうかなというテンションになったので、ちょうどええなと思いながら、やっていました。

――今回は、アクション・シーンが多かったですね。

久しぶりにあんなに動きました。細かい怪我、いっぱいしていたんですよ。現場では「大丈夫、大丈夫」って言ってたんですけど(笑)。自分の体を過信していましたね。46歳って、そういうことなんだなと。トンって当たっただけで、内出血しますから。学生時代は軽トラに撥ねられても、無傷だったのに(笑)。

――いや、そっちの方がスゴイです(笑)

むちゃくちゃ鍛えてましたから、サッカー部で。まあまあ飛ばされて、土手を転げ落ちても、何ともなかったですからね。軽トラ運転していた兄ちゃん、引きずり出しましたね。コラァって(笑)。

――『岸和田愚連隊』ですね(笑)

それはね(笑)。その頃と比べると、ちょっと当たっただけで、青タンだらけでした。ま、『岸和田愚連隊』も、ほぼ当てていますからね(笑)。

――では最後に、作品のご感想を伺えますか?

いい意味で情緒を動かされる、最高のエンターテイメントになっているので、見て損はないと思います。ぜひ劇場に観に行って頂きたいですね。

宮迫博之

宮迫博之

(取材・文:多賀谷浩子)


映画『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』
4月29日(金・祝)公開

キャスト:野村萬斎、宮迫博之、安田章大、杉咲花、木村文乃、ちすん、梶原善、風間杜夫、高畑淳子
脚本:古沢良太
音楽:池頼広
監督:金子修介

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アーティスト情報

宮迫博之

生年月日1970年3月31日(48歳)
星座おひつじ座
出生地大阪府大阪市

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古沢良太

生年月日1973年8月6日(45歳)
星座しし座
出生地神奈川県

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