宮藤官九郎、新作映画は「禁じ手」にしていた“舞台演出”【T-SITEインタビュー】

日本のエンターテインメント界を牽引する宮藤官九郎。彼が完全オリジナル作品で、待望の監督最新作『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』の舞台に選んだのは「地獄」。

『ゆとりですがなにか』

今度の舞台は、地獄!

本作は、17歳でこの世を去った大助(神木隆之介)が、大好きなクラスメイトにキスしたい一心で、赤鬼キラーK(長瀬智也)と一緒に地獄からの生還を目指して大奮闘するという、宮藤監督らしいバカバカしくも清々しいストーリーだ。

長瀬とはドラマ『うぬぼれ刑事』(10)以来6年ぶり、神木とはドラマ『11人もいる!』(11)以来5年ぶりのタッグとなる宮藤監督に、2人との相性や地獄のこだわり、シュールな笑いについて聞いた。

日本で少なくなった「オリジナル映画」 発想の原点は…

──本作は最近の日本映画には少なくなったオリジナル作品ですが、アイデアはどこから湧いてくるんですか?

宮藤官九郎(以下、宮藤):発想はその時々で違うんですけど、この映画の時は最初に長瀬くんで『スクール・オブ・ロック』や『テネイシャスD 運命のピックをさがせ!』のジャック・ブラックような振り切れたテンションの作品をやりたいなと思って。そんな話を最初にして、だったら、というところから「地獄」とか「鬼」とかそういう風に広げていきました。

映画監督は色んな才能を持った方がいて、発想が素晴らしい人、脚色が上手な人、演出が上手な人もいる。

それでいうと僕は普段は脚本家としてのオファーが多いので、監督作は発想や物語で勝負したい。それを広げていく作業がやりたくてこの仕事をしているような気がします。オリジナルをゼロから立ち上げて完成させるというその行程全部が好きなんだと思います。

次こういうのをやりたいと思っている時に手元に何もないのは不安ですが、それを言葉で相手に説明して徐々にイメージを共有していくのが好きなんですよね。

みうらじゅんから“地獄指南”

──その地獄の話を、本作に出演もされているみうらじゅんさんに詳しく聞いたと伺いました。

宮藤:みうらさんとは雑誌で毎週対談していて。ある程度物語が固まった時に地獄の話をしたら、「うちに地獄関連のものがいっぱいあるから教えてあげるよ」って言われて色々教わりました。

“地獄作成”にあたってはみうらじゅんの協力も 

“地獄作成”にあたってはみうらじゅんも協力 

この映画に出てくる輪廻転生の話は僕のオリジナルなので、仏教の考え方とはだいぶ違うらしいんですけどね。

──本作では輪廻転生は7回、地獄の一週間が人間界の10年など設定が細かいですよね。

宮藤:創作です。地獄に行った人がいるわけじゃないですから(笑)、何が本当かっていうのがわからないなら、そこは自分で考えていいのかなと思いました。動物に生まれ変わるのが7回あるってのは映画の尺的にもいいし、一週間って区切りとしていいし、7回転生×一週間で四十九日で成仏するって風にしようかなと思ったんですね。

舞台っぽい演出をやりたかった

──CGではなく、本格的な地獄のセットを組まれて撮影していましたね。

宮藤:はい。地獄のセットを組んだことで、今回に限っては楽になりましたね。

背景をCGにすると、カメラの動きに制約が出るし、短いカットのつなぎ合わせになってしまうんですが、今回は地獄のセットが実際に目の前にあったので、カメラをいくらでも動かせた。

地獄のセット。このおかげで、「芝居を頭から終わりまで通して演出」(宮藤)できたという

『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』地獄のセット。このおかげで、「芝居を頭から終わりまで通して演出」(宮藤)できたという

結果、俳優さんの芝居を区切らず、頭から終わりまで通して演出できました。そうすると役者さんの感情が途切れないので、その時しか生まれない空気が捕らえやすかったですね。

──そのセットのおかげもあって、まるで舞台を観ているような感覚になりました。

宮藤:舞台っぽい演出をやりたかったんですよね。たぶん今の日本映画にはあまりない要素だろうなって思っていて。

僕は普段、舞台をやっていて、舞台からキャリアを始めていますから、そういう意味では舞台っぽい演出は本来得意なはずなんです。でもこれまでの映画の時にはなぜか禁じ手にしていた。4作目でやっとそういうことをチャレンジしてみようかなと思って。地獄をセットにしたらうまくハマりました。

──長瀬さんや神木さんは当て書きだったんですか?

宮藤:長瀬くんは最初から想定していたので、完全に当て書きですね。連ドラを何本も一緒にやって、ひとつのキャラクターをスタートからゴールまで一緒に作ったことが何回かあるので。その度にイメージにズレがなくなっていくというか、お互い信頼関係ができてきているんじゃないかなと思いますね。

神木くんは、大助というキャラクターを膨らます過程で、ふと名前が浮かんで。とくに誰という感じでもなかったんですけど「自分が先にひとりだけ死んで地獄に落ちたってことを全く深刻に受け止めていない」キャラクターがいいかなと思って、そこから大助の役を膨らませました。

現世での高校生としての自分はいまひとつパッとしないけど、それが地獄にきたらクラスの中のヒエラルキーがなくなるから、キャラクターが解放される。そのへんも神木くんならではですね。

「オランダ人を日本の映画館に混ぜたいくらい」

──本作は、ロッテルダム国際映画祭のVOICES部門や香港国際映画祭の「I See it My Way」部門になどの海外上映会に招待されていますが、その手応えは?

宮藤:自分も含めて日本人は“わかったか、わからなかったか”ということを前提に映画を観ていると思うんですよ。でもロッテルダム国際映画祭で上映した時は、オランダ人は言葉が違うからたぶん半分くらいしかわかっていないと思うんですけど、爆笑するんですよね。

ロッテルダムの映画祭では笑いが失速しなかったという

ロッテルダムの映画祭では笑いが「失速しなかった」という

ずっと(笑いが)失速しないまま最後までお客さんが喜んでくれて、こんなにストレートに反応してくれたら気持ちいいなと思いましたね。

ちょっとシュールな表現に、海外の方は抵抗がないですよね。オランダの人は爆笑でした(笑)。

日本人はこれで笑ったら周りにどう思われるのかなって考えて笑わなかったりしますよね。『中学生円山』も韓国の富川国際映画祭で上映した時が一番ウケたんですよ。意外と言葉が通じない国の方がいいのかもなってちょっと思いました。オランダ人を日本の映画館に混ぜたいくらいですね(笑)。

──シュールな笑いもそうですが、「地獄でロックはかっこいい!」という感覚が海外ではより共感されそうですよね。

宮藤:ヨーロッパはメタルやプログレの国ですから、ロックが身近な国なんだなと思いました。この映画の音楽はざっくりした“地獄でロック”という大味なものですけど、とっつきやすいと思って観てくれている感じでしたね。でも日本人にも楽しんでもらえるんじゃないかなと思っています。

──最近のオススメの映画を教えてください。

宮藤:(クエンティン・)タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』は、やっぱり面白かったですね。

あと、ロッテルダム国際映画祭の上映会にギリシャのTVクルーが来ていて、「あなたの映画は『ロブスター』という映画に似ているから観なさい」と言われて、たまたま新宿の劇場で上映していたので観たんですけど、まあシュールでした(笑)。

ストーリーは、独身者が強制的にホテルに送り込まれ、そこで45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられるって話なんですけど。確かに導入だけは似ているかもしれないけど、そこからちょっと不思議な映画になっていくんですけどね。こういう映画って思われたら、確かにそうだなって思いましたね。

『ゆとりですがなにか』 「若い仕事相手」がきっかけ

──監督業と役者業のバランスはどうとっているのですか?

宮藤:役者は完全に映画のパーツとしてその世界に馴染まないといけないので、監督の演出に応えるしかないんですけど。僕の場合は、キャスティングされた時点で「なんで僕はこの映画に出ているんだろう?」「この役に僕がいいっていう理由はなんだろう?」ってことだけは考えるようにしています。

自分が監督もしているからというのもあるんですけど、他人の現場はすごく客観的に見られるので、すごく楽しいですね。

──4月からドラマ『ゆとりですがなにか』(日本テレビ系)が始まりましたが、社会派ドラマに挑戦しようとした理由は?

『ゆとりですがなにか』は違う世代の考えを、自分の目線で書いたという宮藤

『ゆとりですがなにか』は違う世代の考えを、自分の目線で書いたという宮藤

宮藤:仕事を続けていると一緒に仕事をする相手がどんどん若くなってきて、考え方が全然違う若者と触れる機会が増えたんです。その彼らについてちょっと考えてみようかなと思ったのがきっかけです。

山田太一さんが『ふぞろいの林檎たち』を書いた時に若者に取材したというのを読んで、そろそろ僕もそういう年齢なのかなって。自分とは全然違う世代の人の考え方を自分の目線で描いたら社会派ドラマになるかなと思いました。やりとりはくだらなかったり、笑えたりするんですけど、演出は真面目なので、若者の言葉にできないムードみたいなものが再現できるといいなと思います。

──最後に、本作の注目ポイントとメッセージをお願いします。

宮藤:やはり一番は地獄のセットを作ったことです。昔の日本の映画ではオールセットというのはよくある手法だったんですけど、最近はCGを多用しているのでこういう撮影をやる監督はあまりいないですよね。僕は現世との違いで地獄の閉塞感みたいなものを出すために奥行きのない空間でやろうと思ったんですけど。これが果たして現代のお客さんにどういう風に見えるんだろうって、反応が気になりますね。

あと、長瀬くんのこういう芝居は新鮮だと思うんですよね。演技やビジュアルも含めてですけど。周りの反応を気にせず、何も考えないで楽しんでもらえたらうれしいですね。

(取材・文:クニカタマキ)

『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』
6月25日(土)全国ロードショー
監督・脚本/宮藤官九郎
出演/長瀬智也、神木隆之介、尾野真千子、森川 葵、桐谷健太、清野菜名、古舘寛治、皆川猿時、シシド・カフカ、清、古田新太、宮沢りえ
配給/東宝=アスミック・エース
http://tooyoungtodie.jp/

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アーティスト情報

宮藤官九郎

生年月日1970年7月19日(48歳)
星座かに座
出生地宮城県

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