『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』ジュリアン・ジャロルド監督インタビュー「ものすごい偶然、ものすごい運命を感じました」

ジュリアン・ジャロルド監督

ジュリアン・ジャロルド監督

一国の王女が身分を隠して街へ繰り出す物語といえば、オードリー・ヘップバーン主演の『ローマの休日』を思い出しますが、そのもとになったのではないか……と言われている実話があったとしたら? それはイギリス史上最高齢にして最長在位の君主であるエリザベス女王が19歳のときのエピソード。1945年5月8日、ヨーロッパ終戦記念日の夜に若きプリンセスは生涯で一度だけ、公務としてではなく普通の女の子としてロンドンの街へ──。その一日を描いた映画が『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』です。

──エリザベス女王がお忍びで出かけた一夜のエピソード、そんな実話をもとにしていることに驚きました。監督するにあたってどのくらいリサーチをしたのでしょうか。

私もそのエピソードを聞いたとき、とても驚きました。実際はどうだったのかリサーチをしていくと、事実にもとづいていることが分かり、なかでも有力な情報源はエリザベス女王の従妹にあたる方が書いた書籍でした。5月8日の夜、エリザベス女王は確かにバッキンガム宮殿の外にいたそうです。ただ宮殿を出てから戻るまでに何をしていたのか詳細は分からないことが多く、明らかでない部分は私の想像でストーリーを紡いでいきました。とは言っても、たくさんの人から聞いた話をベースにしています。

(C)GNO Productions Limited

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──どんな方にインタビューをしたのでしょう。

当時、宮殿で働いていた人などです。彼らの話からは、エリザベス女王や妹のマーガレット王女がどんな人物だったのかを聞きました。エリザベスは分別があって責任感が強い、マーガレットは冒険心が強くお茶目なところがある、映画のキャラクターを構築していく参考になりました。お忍びの夜のエピソードは秘密にされてきた話でもあるので、とにかく情報が少なく、知らないことばかりなんです。知らないからこそ、私自身が、エリザベスが女王になる前の若い女の子であるとき、どんなふうに過ごしていたのかを知りたかった、見てみたかった。それを“逆さまのシンデレラストーリー”として描いています。

──たしかに、宮殿からロンドンの街へ、王女から普通の女の子へ、シンデレラとは逆ですね。

生まれてからずっと宮殿のなかしか知らずに生きてきた2人の女の子にとっては、どう考えても宮殿はつまらない場所です(苦笑)。厳しいルールがあったり堅苦しい儀式があったり、いろいろなしがらみのなかで生活をしている。そんな彼女たちが宮殿の外へ出て、普通の人々に混じって1日を過ごす。しかもヨーロッパ終戦記念日ですから街中のあちこちでパーティーがあって街は大騒ぎ。リサーチで聞いた話をもとに想像で描いているものもありますが、公園やパーティー会場での出来事はかなり事実に近い。あの雰囲気は正確に伝えたいと思いました。

(C)GNO Productions Limited

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──きっと1940年代のイギリスはこうだったんだろう……と思えるようなリアリティと、終戦記念日を祝う躍動感、そして新しい時代の始まりを感じました。当時のロンドンの街並をイングランド北部の街ハルに再現して撮影したそうですね。

こういう時代ものの映画は本当に大変でした。でも実は、実際のロンドンの中心でも撮影しているんです。トラファルガー広場のシーンのエキストラは約300人。全員に当時の衣装を着てもらい、日曜の夜中から月曜にかけて撮影しました。ただ、完全に封鎖して撮影することはできなかったので、観光客やナイトクラブ帰りの人たちが入ってしまったりして(苦笑)。また、バッキンガム宮殿の中には入れなかったですが、門のかなり近くまで行って撮影することができました。もしかしたら、エリザベス女王がその撮影風景を見ていた“かも”しれない……と考えると、感慨深いですよね。

──バッキンガム宮殿やトラファルガー広場をはじめ、ホテル・リッツ、カーゾン・クラブ、ソーホー、テムズ川……ロンドンと言えばの名所が次々と登場するのも見どころです。そして、何と言ってもエリザベス女王を演じたサラ・ガドン!ハマリ役となりましたが、どういう出会いがあって彼女をキャスティングしたのでしょうか。

エリザベスのキャスティングはとても難航しました。というのは、イギリスの女優さんたちにとってエリザベス女王はあまりにも有名すぎて、しっかりとしたイメージが定着しすぎて、演じることにためらいを持ったりおののいてしまったんですね。顔立ちが現代的すぎて選べなかった女優さんもいます。演じて欲しいのは1945年に生きていた若い女の子。ずっと宮殿から出ることなく生活していたその雰囲気を出せる女優が必要で。サラ・ガドンはカナダ出身ですが、彼女とスカイプでオーディションをしたとき「完璧だ! 完璧な19歳のエリザベス女王だ!」と思いました。その後、彼女と一緒に役を作っていくなかでサラ・ガドンが教えてくれたんですが──なんと、彼女のお祖父さんお祖母さんは、ヨーロッパ終戦記念日のあの晩にトラファルガー広場で出会ったそうなんです。ものすごい偶然、ものすごい運命を感じました。

(C)GNO Productions Limited

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監督が語る“逆さまのシンデレラストーリー”のなかには、忘れられない出会いがいくつもあり、特に兵士ジャック(ジャック・レイナー)との出会いはロマンティックなドラマとして映し出される。人は、本当に素晴らしい思い出がひとつあればどんな人生も歩んでいけるのかもしれない──リアルのなかに描かれるファンタジー、そしてファンタジーのなかに潜むエリザベス女王の決意に、きっと心が揺さぶられる。

(取材・文/新谷里映)


映画『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』
大ヒット上映中

監督:ジュリアン・ジャロルド(『キンキーブーツ』)
出演:サラ・ガドン、ベル・パウリー、エミリー・ワトソン、ルパート・エヴェレット、ジャック・レイナー
原題:A ROYAL NIGHT OUT/2015/イギリス/97分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:寺尾次郎 / (C) GNO Productions Limited
配給:ギャガ
PG-12

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アーティスト情報

ジュリアン・ジャロルド

生年月日1960年5月15日(58歳)
星座おうし座
出生地

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エミリー・ワトソン

生年月日1967年1月14日(51歳)
星座やぎ座
出生地ロンドン

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