映画『二重生活』門脇麦×長谷川博己インタビュー「ちゃんと生きてれば、ちゃんと人と出逢える」

門脇麦と長谷川博己

門脇麦と長谷川博己

小池真理子原作の映画『二重生活』は多層的な物語だが、大きな軸となるのは、論文のために「理由なき尾行」を始めた女子大生と、彼女に尾行されることになる売れっ子編集者の関係だ。このふたりを、センシティヴにしてパッショネイトに体現した門脇麦と長谷川博己に、ふたつの根源的な問いを投げかけた。

長谷川:人の欲望みたいなものを満たしてくれるような作品です。(映画を)観る人たちは、対象に感情移入して観るわけですけど、(これも)観た人によって、どれかのキャラクターになったりすると思います。こういうことを言うと照れくさいけど……自分の人生をもう一度考える、いいきっかけになる映画じゃないかなと思います。

編集者はあるとき、尾行に気づき、女子大生を問いつめる。彼女はすべてを白状し、そこから、ふたりは、とんでもない展開を迎える。

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

門脇:何が本当の自分かもわからないですけど、彼女は「そこの部分」を見てほしくて、助けてほしかったんじゃないか。肯定でも否定でもいいから、とにかく見つめてほしい部分があったーーでもそこは自分にとっても、人に見られるのが怖い部分で、そこを隠しながら生きてる女の子なんです。そこには彼氏も気づいていない。でも、否定でも肯定でも、何でもいいからしてほしかった。その想いは強かったんだなあって。あのシーンが終わったときに気づきました。ああ、誰かに聴いてほしかったんだろうなと。優しい気持ちになりました。そして、不思議な気持ちでした。

長谷川:それなりのエリートで、ある種完全犯罪的に秘密のプライベートを送っていたのに、このどこの馬の骨だかわからない大学生にそれを知られてしまった。そこのプライドもあるんですけど、でも、こいつだったら、全部知られてるから、開き直れるなっていう部分は、対峙してから自然に生まれたと思うんです。

ふたりの出逢いはある意味、最悪だ。編集者は逆上し、女子大生は自身の行為の愚かさに直面する。だが、ふたりが完全に「開き直った」とき、わたしたちは、この交通事故のような忌まわしい時間の尊さを知ることになる。互いに傷を負ったかもしれない。だが、とにかくふたりは、出逢ったのだ。そして、このような出逢いからしか生まれないものが、わたしたちが生きているこの世界にはある。男女の恋愛などではない。個人と個人とが、相手をまったく知らないからこそ、真っ正直になれる、稀有なひとときが出現するのである。

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

どんな出逢いも、固有の関係性を生む。第一の質問は「出逢い」について。

門脇:ご縁とよく言いますよね。わたしはまったくその通りだなあと思っていて。きっとみんな……わかんないですけど、たとえば、あの瞬間の彼女と、あの瞬間の彼じゃないと、ああはなってないし、合致してないと思います。うまい具合に、出逢うべくして、ちゃんと出逢ってるんだろうなあと思います。(わたしは)まだ24年しか生きてないんですけど、それでも振り返ってみると、あのときにこういうふうにならなかったら、この人とは出逢ってないという出逢いとか、こういうふうになったから出逢えた人との出逢いとか。そういうのって、不思議なくらいで……だから、全部決まってるんじゃないかと思います。出逢う人って。神様が、リストみたいなの、持ってるんじゃないですか……って思うくらいに、わたしは信じてますね。なにかを信仰してるわけではないですけど、ちゃんと生きてれば、ちゃんといい人たちと出逢えるように作られてるんだろうなって。

あのときのふたりでないと。そうなのだ、その情緒は、そのテンションは、たったひとりではどうすることもできない。そのときの自分と、そのときの相手が作り出すもの。それが出逢いであり、だからこそ、出逢いはかけがえがない。どうなるか、わからないから、かけがえがない。

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

門脇:楽しみですしね、(どうなるかが)わからない方が。

長谷川:僕も同じようなことをいま考えていて。それって、縁という見えないものの話なので、それをどうやって説明したらうまく言えるかなと思ってたんですけど。まあ、ほんとにご縁だと思うし、人と人の出逢いには偶然はない、とか言うじゃないですか。全部必然だ、とか。僕も、説明はできないけど、すごく実感することがいくつもあるんですね。麦ちゃんが言うように、すべて決まっていることを俺らはただやってるだけなのかな、そのまま進んでいるだけなのかな、っていう気もするんですよね。そこに何の根拠があるのかはまったくわからないけれど、だけど何かの根拠はきっと、あるのかもしれないですね。もしかしたら。

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

第二の質問は「欲望」について。映画では、相手のことをできるだけ知ろうとした結果、深みにはまる行為も描かれる。人は、ときに、相手のすべてを知ろうとすることがある。だが、あえて、ごく一部だけに留める場合もある。どちらが正解ということはない。どちらもコミュニケーションのあり方のひとつだ。

門脇:わたしは(相手の)ごく一部で大丈夫です。わたしも(相手の)見たい姿を見ているし、見せたい姿を見せていて。たぶん、無意識のうちに。もちろん、(相手と)時間を共にしたり、いろんな経験を一緒にしていくうちに、いろんな部分が見えてくるのだろうし、でも、じゃあ自分って結局、どんな人間だろう? ということになったときに、ここらへんからここらへんまでが自分という人間って(スケールを)自分でくくってるだけだと思う。じゃあ、自分っていったい何? で、その相手はいったい何? となると、無限(の可能性)になってしまう気もなんとなくしていて。だったら、一緒に接する面がーー自分が360度あるとして、相手も360度あるとして、ここの(お互いに)ふれてる部分がいいんだったら、それでいいんじゃないかなっていうふうに、いまは思ってます。明日は違うこと言ってるかもしれないですけど。

長谷川:他人(ひと)のことを完全に理解するとか、ふたりがわかり合うっていうことは、僕はないと思うんですよね。僕自身も自分のことはよくわからないし、そういう人との関係性で、そこまで(相手の領域に)入り知ることは、こっちにも責任がある。そういう意味でも僕も、多少の距離があった上で(知ることができる)一部分だけでいいんじゃないかと。たぶん、人がそういうものを期待してるなと思ったら、自分もそういう自分を演じてると思うし、いろんな人たちがそうだと思うんですよね。だから、僕も一部分だけで充分です。

「出逢い」と「欲望」。ふたりの言葉を吟味した上で、映画に臨めば、わたしたちは、もっと深くなる。わたしたちは、もっと味わい深い存在になる。

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

(取材・文:相田冬二)


映画『二重生活』
6月25日(土)新宿ピカデリー他全国公開

監督・脚本:岸善幸「ラジオ」「開拓者たち
音楽:岩代太郎
原作:小池真理子「二重生活」(角川文庫刊)
出演:門脇麦、長谷川博己、菅田将暉 / 河井青葉、篠原ゆき子、西田尚美、烏丸せつこ/ リリー・フランキー
配給:スターサンズ

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アーティスト情報

門脇麦

生年月日1992年8月10日(26歳)
星座しし座
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