【レビュー】『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』―この夏絶対見逃せない「地獄・ロック・コメディ」!

(C) 2016 Asmik Ace, Inc. / TOHO CO., LTD. / J Storm Inc. / PARCO CO., LTD. / AMUSE INC. / Otonakeikaku Inc. / KDDI CORPORATION / GYAO Corporation

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神木隆之介の絶妙な「チャラさ」が癖になる一本

「池袋ウエストゲートパーク」をはじめ、「木更津キャッツアイ」「タイガー&ドラゴン」「流星の絆」「あまちゃん」などのドラマ。そして、窪塚洋介をスターダムに押し上げた『GO』や、カルト的な人気を博した『ゼブラーマン』、そして『舞妓Haaaan!!!』『なくもんか』『中学生円山』などの映画。宮藤官九郎(以下:クドカン)の作品は、いつも強烈な個性と笑いを以てして見る者を魅了してきた。そんなクドカンの最新作で、長瀬智也と神木隆之介をW主演に迎えた映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』は、修学旅行中にバスの転落事故で死んだ男子高校生が、大好きなクラスメイトにもう一度会うため、地獄から現世への蘇りを目指して奮闘する姿を描く作品だ。

お調子者の高校生・大助(神木隆之介)は、同級生のひろ美ちゃん(森川葵)のことが大好きなのだが、思いを伝えることができないでいた。そんな中で迎えた修学旅行で、大助はひろ美ちゃんとバスで隣り合わせに。あいかわらず不器用な大助だったが、彼はひろ美ちゃんから思わぬ言葉を聞く。しかし次の瞬間、バスは谷底に転落してしまう。目を覚ました大助は、なぜか地獄に堕ちていた。もう一度ひろ美ちゃんに会いたいと願う大助は、地獄専属ロックバンド“地獄図”を率いる赤鬼のキラーK(長瀬智也)と出会い、彼から現世への蘇りを実現するための特訓を受けることになるのだが…。

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本作では、これまで一貫して「この世」を舞台とする作品作りをしてきたクドカンが、「あの世」を舞台に選んだという点が興味深い。導入部分では、大助がひろ美ちゃんに対して抱く恋心が、不器用さと高校生らしいバカっぷりを絡めながら描かれるのだが、バスの転落を契機に、物語はド派手で極彩色が煌めく地獄を軸に展開されるようになる。この思い切った場面転換によって、観客は大助と同じ視点で地獄の世界に放り込まれ、(クドカン作品では珍しい)趣向が凝らされた舞台装置の数々が小道具として効果的に機能している、可笑しくて滅茶苦茶な地獄めぐりを体験することになる。

その後は、ひろ美ちゃんに一目会うがために、7回の輪廻転生の中で遮二無二に奮闘する大助の熱意と、それが空回りする様子が軽快なテンポで描かれるのだが、クドカン節が炸裂したセリフ回しと、濃すぎるキャラクターたちの絶え間ない登場によって効果的に笑いが生まれ続けているのが素晴らしい。この抜け目ない作劇によって、クドカンは派手な世界観を持つ作品にありがちな「出落ち感」や「中だるみ」を感じさせることがないまま、我々を愉快で奇妙な地獄の、さらに奥深くへと誘っていく。

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意外性と面白味に満ちたストーリーのみならず、キャストの好演も観客を力強く引き付ける。筆者が大きな拍手を送りたいのは、主演を務めた神木だ。神木の演技で何が賞賛に値するかといえば、大助に与えられた、若干の、しかしウザさは感じさせない絶妙な分量の「チャラさ」を見事に表現していること。「こいつバカだけど良い奴だな」と感じさせる軽いノリと、大好きなひろ美ちゃんのためなら何をも厭わないまっすぐな姿は、「その辺にいそう」な高校生としてのリアリティと、映画の主人公としてのドラマ性が程よくブレンドされている。

一方、クドカンとたびたびタッグを組んできた長瀬は、強烈な特殊メイクによって、夢に出てきそうな赤鬼に変身。キラーKに関しても、演じる長瀬のバランスが非常に良い。無茶苦茶なロッカーそのものなノリと、時折見せる意外なヘタレさ(この背後には思わぬ彼の過去が隠れている)が、長瀬の巧みなさじ加減によって効果的に融合を果たしており、その一挙手一投足には何度も爆笑させられる。他方、標題曲でもある「TOO YOUNG TO DIE!」の演奏シーンでは、流石ジャニーズ!と言いたくなるほどクールな姿を見せており、彩度の荒い映像の中で熱唱する様には思わず見惚れてしまった。

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超個性的な地獄の住人達を演じたキャスト陣も、それぞれ魅力的な姿を見せてくれる。キラーKの脇を固めるCOZY(桐谷健太)と邪子(清野菜々)などの地獄の住人たちは、キラーK同様にビジュアルがド派手なため、その演じ方によっては滑りかねないキャラクターたちなのだが、キャスト陣はマイナス要因になり得る、演技への迷いや羞恥心を感じさせることがないので、観客は確かな面白さを感じることができる。特に、クドカンの盟友・皆川猿時が扮した「じゅんこちゃん」の存在が秀逸。導入部分で張られていた伏線が終盤にかけて浮かび上がることによって明かされるその悲惨なネタキャラ性と、彼女に対して与えられる酷いオチには思わず吹き出してしまった。

「ひろ美ちゃんに会いたい」という極めて単純かつ自己中心的な(というのも、彼は他のクラスメイトのことなど全く気にしていないのだ)目的意識を抱いていた大助だが、彼は“地獄図”との特訓、そして7度の輪廻転生を通じて、少しずつ精神的な成長を見せていく。女風呂を盗撮し、夜に部屋に忍び込んでひろ美ちゃんの唇を奪おうとしていた大助は、なんと大好きなひろ美ちゃんに再会することが叶う「人間道への蘇り」を犠牲にしてまで、複雑な過去を抱えるキラーKの願いをかなえようとするのだ(とは言え、この自己犠牲にも爆笑のオチが潜んでいるのだが)。死を以てして成長を遂げた大助に対して与えられる結末は実にさわやかで、それでいて甘酸っぱい。ラストシーンで大助がひろみ美ちゃんに対して見せる不器用な姿には、思わず目頭が熱くなってしまった。

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最後に、本作がオリジナル脚本作品であることに言及しておきたい。近年の邦画界には、「人気のコミックを実写化することによって一定の利益を上げる」という薄利多売の方程式がある。この方程式のブーム化(コミックの実写化作品の増加)に伴い、オリジナル脚本の存在感は年々小さくなってきた。全否定するつもりはないが、このままコミック実写化の流れに従い続けると、脚本家のレベルは見る見るうちに低下していくだろう。なぜなら、原作者が作った上質なストーリーを、ほんの少し変えるだけ、という「楽な仕事」が増えるからだ。

逆に考えれば、クドカンのように確かなオリジナリティを持つ作家は、昨今の邦画界において非常に貴重な人的資源なのであり、今後の映画界には、彼のような男が生まれてこなければならないのだ。だからこそ、本作が一人でも多くの観客の目に届き、邦画界に蔓延する安直な製作姿勢について一考するきっかけを与え、さらには、まだ見ぬ次世代の脚本家たちの独創性を育て、刺激することを祈る。

(文:岸豊)


映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』
大ヒット上映中

監督・脚本:宮藤官九郎
出演:長瀬智也、神木隆之介 /尾野真千子、森川葵/桐谷健太、清野菜名、古舘寛治、皆川猿時、シシド・カフカ、清/古田新太/宮沢りえ
製作:アスミック・エース、東宝、ジェイ・ストーム、パルコ、アミューズ、大人計画、KDDI、GYAO
制作プロダクション:アスミック・エース
配給:東宝=アスミック・エース

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