【レビュー】『だCOLOR?~THE脱獄サバイバル~』―あと10回は設定と笑いを練り直すべき

(C)吉本興業

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中途半端なシチュエーション・コメディ

色違いの帽子を被らされた3人の政治犯が殺風景な一室に閉じ込められ、一番最初に自分が被っている帽子の色を当てた者のみが解放される。金子傑監督が、『大洗にも星はふるなり』などで知られる福田雄一の脚本を基に描いた映画『だCOLOR?~THE脱獄サバイバル~』は、この一風変わったゲームの模様を描くシチュエーション・コメディだ。

政治犯として終身刑を言い渡された、見るからに気弱な男(田中直樹)、相手をビビらせるオーラを放つ男(渡辺いっけい)、お調子者だが人間不信な男(佐藤二朗)の3人は、政府によって制定された新法「政治犯削減法」の対象となり、生き残りをかけたゲームに参加させられる。その内容は、自分が被っている帽子の色を、他の二人よりも早く突き止め、報告するというものだった。3人は、それぞれ駆け引きを繰り広げ、他の2人を出し抜き、自分の帽子の色を知ろうとするのだが…。

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薄暗い一室を舞台に進行する物語の登場人物は、(ほぼ)3人だけ。しかも、その3人を演じるのは、田中直樹(ココリコ)、渡辺いっけい、佐藤二朗という個性派俳優たち。これはどうやら面白いことになりそうだぞ…と思ったのも束の間、本作の雲行きは怪しくなっていく。というのも、ゲームの進行に併せてなされるべき、物語の背景に関する説明が、全くと言ってよいほど見られないのだ。

まず疑問なのは、政治犯という限定対象である。刑務所がパンクするほどに増加した囚人に対して費やされる必要経費を憂慮したが故に、政府は政治犯を削減するとのことだが、どれだけ政治犯の数が多かろうと、殺人犯やその他の凶悪犯罪を犯した人間を粛正する方が、はるかに世のため人のためになるはずだ(往々にして、こうした犯罪者の方が裁判に要する時間が長いため、それに伴って服役する年数が長いのだ)。また、政治犯を解放することでどんな社会的利益が生まれるのかも一切説明されないのはいかがなものか。

さらに、なぜゲームという回りくどい方法で選抜を行うのかも不可解だ。ゲームを勝ち抜いた者は釈放されるとのことだが、それほどの知恵者を有効活用する方法はいくらでもあるのではないか?「じゃあ、釈放」と世間に放つよりも、政府に好条件で登用することの方がよほど有益である。しかし、劇中で示されるのは、釈放されるという単純にして曖昧な事実だけだ。いやいや、劇中のサバイバルを勝ち抜いた者なら、かなりの切れ者である。新たな政治犯となって再び牙をむいたら、どうするというのか。

こうしたツッコミに対して、本作は何らの回答を与えることがない。「いや、そんなマジな突っ込みを入れられても…」と言われるかもしれないが、振り切れた無茶苦茶な設定にするならまだしも、中途半端に現実的な設定を掲げつつ、論理的な批判を回避しようというのは都合が良すぎる。しかも、3人が繰り広げる「騙し合い」では、論理性に基づく推論がたびたび登場するので、彼らの姿勢と物語の設定にギャップが生まれているのが、なおさら居心地の悪さを感じさせる。ストーリーを論理的に展開するなら、設定にも一定の論理性を与えてほしいものだ。

また、小さな笑いを小出しにするスタイルもどうかと思う。確かに、役者陣はそれぞれの持ち味を出して笑いを誘っている。田中は「良い人そう」な雰囲気を醸し出しつつ、コント番組でたびたび見せる「丁度良いウザさ」も見せる。渡辺も、ドラマでたびたび見せる「偉そうなおっさん感」と切れ味鋭いツッコミを効果的に繰り出すことで、他2人を驚かせて見る者をクスリとさせる。佐藤も、持ち前の独特な話し方や「つかみどころのなさ」を存分に発揮して、所々でシュールな笑いを生んでいる。それでも、パターンが一定である(笑いどころのほとんどは「嘘をついているかいないか」の会話から生まれる)ため、観客は物語が進むごとに笑いの変化のなさに飽きを感じてくる。小さな笑いを積み上げることは否定しないが、70分以上にわたってメリハリ無く続けられても、観客の心を掴み続けることはできない。

これらのマイナス要因を生んだ、根底的な問題は何か。それは、「この設定でいけるだろう」「個性派3人がいれば大丈夫」といった、作り手側の安易な思考に他ならない。厳しいことを言うようだが、金子や福田は、あと10回は設定と笑いについて検討を重ねなければならなかったろう。

(文:岸豊)


映画『だCOLOR?~THE脱獄サバイバル~』
公開中

佐藤二朗、田中直樹、渡辺いっけい

監督:金子傑
脚本:福田雄一
音楽:櫻井真一 主題歌『いつかのスターダム』
制作:フジテレビジョン/KATSU-do
製作:吉本興業

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