【レビュー】『セトウツミ』―演技派コンビが見せる、新しい青春の形。

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013  (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

漫才的な会話が生む可笑しさにハマる一本

どんな役柄にもフィットする卓越した演技力で多方面から絶大な支持を受けている菅田将暉。感情表現における静けさと激しさを兼ね備え、独特な存在感を放ち続ける池松壮亮。近頃の邦画はこの2人で回っているといっても過言ではないだろう。そんな菅田と池松がタッグを組んだ『セトウツミ』(原作:此元和津也)は、今までにない、新しい青春の形を描いた映画となった。というのも本作は、放課後に河原でひたすら暇つぶしをする2人の男子高校生が交わす、何気ない会話を描くだけの作品なのだ。

塾通いの高校生・内海(池松壮亮)は、退屈な学校生活に辟易し、誰ともかかわらず孤独に暮らしていた。ある日、内海がいつもと同じように河原で暇をつぶしていると、サッカー部をわけあって退部した瀬戸(菅田将暉)が話しかけてくる。マイペースにまくしたてる瀬戸に困惑する内海だったが、いつしか二人は友人となり、共に河原で過ごすようになる…。

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013 (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

河原に腰かけて無駄話にふける二人。ふとした瞬間、瀬戸によって議題の提示がなされ、内海は気だるそうに返答し、それから二人は思わずクスッと笑ってしまう小気味の良い会話を展開する。その様子は、運動神経が削がれたカメラによって淡々と映し出されることも相まって、まるで漫才を見ているように面白い。全部で8つのエピソードからなる劇中では、基本的にこのパターンがずっと繰り返されるのだが、そのプロセスの中には、ドラマティックな展開や特徴的な演出はない。それでも、観客は飽きを感じることなく、終幕に至るまで二人の喋りに引き込まれ続ける。

その要因となっているのは、2人の会話の内容が、普遍的な小話であることだ。めんどくさいヤンキーの先輩、好きなあの子への初メール、ふと思いついたしょうもないゲーム、何もせずに終わってしまった夏休みへの後悔…。瀬戸と内海の会話に登場するテーマは、誰もが共感できる、あるいは話のネタにしたことがあるものばかりなのである。ネタのみならず、その語り方も秀逸。興奮気味にまくしたてる瀬戸に対して、内海が実に冷静かつ的確に突っ込みを放つことで、二者間には面白味のあるギャップ(温度差)が効果的に生まれている。また、75分という長編映画の中ではかなり短い尺が、複数のエピソードに小分けにされるという構成も上手い。なぜなら、作り手側は短い尺の中に笑いを凝縮することが可能となり、受け手である観客は、愉快なエピソードを10分そこらの短時間で消費できるので、飽きを感じようがないのだ。

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013  (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

(C)此元和津也(別冊少年チャンピオン)2013  (C)2016映画「セトウツミ」製作委員会

無論、瀬戸と内海を演じた菅田と池松のパフォーマンスにも称賛が与えられるべきだ。菅田はビジュアルが原作の瀬戸そのものであることに加え、「ウザさを感じさせない軽さ」を上手く醸し出している。これはなかなか得難いもので、彼と同世代の若手俳優では、神木隆之介くらいしか持ち合わせていない貴重な才能と言える。一方の池松は、これまでのフィルモグラフィー同様に、掴みどころのないクールな雰囲気が印象的。瀬戸の軽さ同様、内海のクールさも観客に違和感や不快感を与えることがないし、「どういう人間なのだろう?」と見る者の好奇心をくすぐる空気感を出すことができるその演技力には、さすが池松と拍手を送りたくなる。

コミックの実写映画化は、『進撃の巨人』シリーズや『テラフォーマーズ』を見れば明らかなように、世界観が壮大な作品ほど失敗しやすい傾向にある。逆に、世界観が小規模であれば、原作のイメージを損なうことなく、上手く映画化することができる。本作は、これを如実に物語る作品である。斬新な設定、緩やかなリズム、強すぎない笑い、そして見事にハマった演者のパフォーマンス。ライトな映画ファンからコアな映画ファンに至るまで、幅広い観客を楽しませてくれる魅力に満ちている『セトウツミ』は、コミックの実写映画化というブームに乗っかり、中途半端な作品作りを行ってきた映画人たち、そして出版社にとって、「いい薬」になるはずである。

(文:岸豊)


映画『セトウツミ』
公開中

監督:大森立嗣 『まほろ駅前狂騒曲』『さよなら渓谷』
原作:此元和津也 (秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
出演:池松壮亮、菅田将暉、中条あやみ
鈴木卓爾、成田瑛基、岡山天音、奥村勲、笠久美、牧口元美/宇野祥平
配給:ブロードメディア・スタジオ

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

菅田将暉

生年月日1993年2月21日(25歳)
星座うお座
出生地大阪府大阪市

菅田将暉の関連作品一覧

中条あやみ

生年月日1997年2月4日(21歳)
星座みずがめ座
出生地大阪府

中条あやみの関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST