深川栄洋が選ぶ「今を生きる、少女を女優にした映画」10本

女性を主人公にした映画を数多く手がけてきた深川栄洋監督が選んだのは、監督曰く「スクリーンで恋をした女優の映画」。彼にとって、10年、20年先もその成長が楽しみな女優とは!?

※ピックアップ作品は、2012年末に発行された『シネマハンドブック2013』掲載のものとなります。ご了承ください。


深川栄洋が選ぶ「今を生きる、少女を女優にした映画」10本

ニライカナイからの手紙

沖縄・竹富島を舞台に描かれる3世代にわたる家族愛の物語。1年に一度、東京に暮らす母からの手紙を心の支えに生きる少女、風希の葛藤と成長をつづる。

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カナリア

『害虫』の塩田明彦監督がオウム真理教をモチーフに描いた社会派ドラマ。家族で入信していたカルト教団が崩壊し、一家離散した少年と援交少女の心の交流。

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ジョゼと虎と魚たち

平凡な大学生、恒夫は足の不自由な少女ジョゼと出会う。彼女の不思議な魅力にしだいに惹かれていく恒夫だったが、やがて二人に切ない恋の結末が待ち受ける。

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ハルフウェイ

脚本家、北川悦吏子の監督デビュー作。北海道の高校に通うカップルのシュウとヒロ。だがシュウが東京の大学を受験することになり、二人の心はすれ違っていく。

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あしたの私のつくり方

市川準監督が10代の少女たちの揺れ動く心情をつづった青春ドラマ。自分を偽り友達に合わせてばかりの女子高生、寿梨と小、中学時代の同級生、日南子の友情をみずみずしいタッチで描く。

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アイランドタイムズ

フジテレビの情報番組「めざましどようび」から生まれた映画。東京最南端の離島を舞台に、島を出ることができない臆病な少年と都会から来た少女の淡い恋。

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害虫

母親の自殺未遂など残酷な現実と向き合いながらも大人へと成長していく女子中学生の姿を見つめる。ナント三大陸映画祭コンペティション部門で審査員特別賞と主演女優賞を受賞した。

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カンゾー先生

昭和20年、岡山県の漁師町を舞台に、患者を肝臓病としか診察しない風変わりな町医者と、彼を取り巻く町の人々の生きざまをコミカルに描いた人情喜劇。

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がんばっていきまっしょい

四国・松山でボートに情熱を注いだ女子高生たちの青春。主演の田中麗奈が、第22回日本アカデミー賞をはじめ、その年の新人女優賞を数多く受賞した。

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贅沢な骨

不感症のホテトル嬢ミヤコと、幼いころに心に傷を受けたサキコ、そしてミヤコの客である新谷。満たされない男女の奇妙な三角関係を描いた異色のラブストーリー。

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蒼井優『ニライカナイからの手紙』―蒼井さんは監督が求めるなら何度でも一番を目指す女優

『ニライカナイからの手紙』

『ニライカナイからの手紙』

蒼井優さんは『リリイ・シュシュのすべて』では“匿名性”があって、女優として始まったのはこの作品から。研究したお芝居じゃなく、自分の感覚で表現しているなと感じました。それに、彼女は“現場でねばる、カロリーの高い監督さん”と相性がよくて、監督が求めるなら何度でも一番を目指す人。

僕の『洋菓子店コアンドル』のときも天才でした。抽象的な話にもちゃんと芝居で応えようとするんです。パッションを注げる作品ならすごい力を発揮する女優さんで、そういう意味で『ニライカナイからの手紙』は“座長”として頑張っていたと思いますね。

谷村美月『カナリア』―監督の手を離れ、自分自身が立ち上げていく芝居が印象的

『カナリア』

『カナリア』

当時の塩田監督の作品は、少女や子どもの目線で社会を見ていて、そこから物語を立ち上げています。『カナリア』谷村美月さんは、監督との響き合いの中で“お芝居じゃないお芝居”をしていました。そして中盤、『銀色の道』を歌う長回しのシーンがあるんですが、おそらくあの瞬間から監督の手を離れ、谷村さん自身が立ち上げていく芝居を見せていたんですよね。ドキュメンタリーを見ている感覚だったし、そのときしか見られない瞬間を切り取っているなと感じました。歳を重ねれば、もっと新しいものを見せてくれる女優さんだと思っています。

池脇千鶴『ジョゼと虎と魚たち』―相手役を転がすというか“待てる”お芝居が完璧でした

『ジョゼと虎と魚たち』

『ジョゼと虎と魚たち』

単館系ながら、映画ファンだけじゃなく一般のお客さんも巻き込んで日本映画を注目させるきっかけとなった作品ですよね。物語を立ち上げたのは、池脇千鶴さんの存在が大きい。相手役の妻夫木くんを転がすというか、“待てる”お芝居をしていて、難しい役なんだけど、どの映画にもお手本がない、完璧な存在感でした。

濡れ場も“女優は必要とあらば脱ぐ”という思いを感じましたし、しかもあのジョゼの行動は、エロいんじゃなくて“痛い”んです。あのシーンが物語を深くしたし、別れの匂いみたいなものも見えてきて、とても印象に残っていますね。

北乃きい『ハルフウェイ』―何も起こらないけど、北乃さんの顔をずっと見ていたい

『ハルフウェイ』

『ハルフウェイ』

北乃きいさんと岡田くんの即興芝居で映画が進んでいくんですが、彼女の集中力が上がったときは最高に面白いんです。一生懸命走る姿や金網をつかむ仕草もキャラクターに合っていて、キュートでした。何も起こらない映画ですけど、彼女の顔をずっと見ていたいと思いました。

プロデューサーの岩井俊二さんは、塩田さんとアプローチは違えど少女を大人にしていくのがうまい。この作品にも岩井マジックを感じました。10代からやってきた女優さんはどこかでギアを入れ替える瞬間があって、そこに合う作品があるかが重要。北乃さんの今後が楽しみです。

成海璃子『あしたの私のつくり方』―これをこの時代に撮りたいんだ”という明確な意思を感じる

市川準監督はCM出身の方なので、時代を読み取る力があり、これをこの時代に撮りたいんだ! という明確な意思を感じますよね。この映画では、物語的には前田敦子さんが気になるんですけど、“縦糸”を作っているのは成海璃子さんなんですよね。そして監督が成海さんとシンクロしながら『この空気を共有したい。この女の子の変化に時間を合わせていこう』としているんですが、それをあの年齢でやれているのはすごいし、新しい映画だなと感じました。成海さんは、もっと映画自体を狂わせるような、映画を壊す存在となる作品を観てみたいです。

仲里依紗『アイランドタイムズ』―女優の変化をフィルムに焼き付けた瞬間、特別なものになる

『アイランドタイムズ』

『アイランドタイムズ』

仲里依紗は、オーディションで『ピアノが弾けます』ってウソをついたんですよ(笑)。現場でも案の定弾けない。でも僕が『今、頑張れないと次の作品につながらないよ』と言ったらやる気になって。その彼女の変わりようをそばで見ていて、女優の初期の映画を観る面白さはここにあると感じたんですよね。

物語と同じように、女優の変化をフィルムに焼き付けた瞬間、特別なものになると。僕はいつも役者さんの集中力を高めるために、カットごとにことばをかけに行くんですが、そのやり方は仲里依紗に教わったんでしょうね。また一緒にやりたいです。

宮﨑あおい『害虫』―宮﨑さんの呼吸に合うように音を使って観る側を導く映画

宮﨑あおいさんは『ユリイカ』で存在を知り、『害虫』で女優になった気がしますね。10年以上やられていますけど、初期の彼女をつくった作品。負の要素を抱えた少女の、行き場のない表情が印象に残っています。

塩田監督は少女から大人になりかけた女の子を映画にするのが上手ですよね。この作品では、ビー玉の転がる音で少女の“停滞”を表すなど音にもこだわっていました。今のメジャー映画は、物語を一生懸命起こそう起こそうとするんですが、『害虫』は宮﨑さんの呼吸に合うように音を効果的に使って観る側を導いていく映画だったと思います。

麻生久美子『カンゾー先生』―今村監督の独立精神に麻生さんが本気で打ち返していた

『カンゾー先生』

『カンゾー先生』

今村昌平さんの作品が大好きなんですが、この子、誰だろう?って衝撃を受けたのが麻生久美子さんです。『カンゾー先生』『うなぎ』などと違って、カテゴライズされにくいというか、独立精神のある作品ですが、そこに麻生さんが本気で打ち返している感じが見えてよかったです。田舎者で無知な女性の役で、何の装いもせず、何の取り繕いもしていないところが、観ていてとても清々しかったですね。またこういう麻生さんが見てみたいです。

田中麗奈『がんばっていきまっしょい』―技術ではなく女優の透明感で成立していた映画

田中麗奈さんを初めて知り、映画を観て久しぶりに恋をしましたね。普通の女の子の曖昧な気持ちを持て余す感じや研ぎすまされたいら立ちが見えて、技術ではなく透明感や存在感で映画が成立していました。あと、女優は監督との相性が大事で、“食材”の感じが強い。特に田中さんは作品ごとに印象が変わるので、あの監督に料理されるとこうなるのかというか、男性遍歴を見ているような感覚になりますね。

つぐみ『贅沢な骨』―映画を通り越して何とかしてあげたいと思った

この映画でのつぐみは、あの当時のモラトリアムな状況の女の子を見事に体現していましたよね。こういう所在のない女性はたくさん描かれてきましたが、つぐみはちゃんと体もさらしていて、それが役の喪失感や哀しみにつながっている。裸のままいることをいとわないでいられるという“変態”の要素は、役者にとって重要。触れたら壊れそうな危うさに、映画を通り越して何とかしてあげたいと思った作品です。


(C) 2005 エルゴ・ブレインズ (C) 2004「カナリア」パートナーズ (C) 2003「ジョゼと虎と魚たち」フィルムパートナーズ (C) 2009「ハルフウェイ」製作委員会 (C) 2007 フジテレビジョン (C)東映・東北新社・今村プロダクション・角川映画

プロフィール

深川栄洋

1976年千葉県生まれ。'05年、『狼少女』で注目を集める。
近作は『くじけないで』『神様のカルテ』『トワイライト ささらさや』『先生と迷い猫』など。2017年は新作映画の公開が2本待機中。

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