【公開中】家族の秘密を描く映画2本立て―『生きうつしのプリマ』と『ミモザの島に消えた母』

言いたくても言えないこと、言いたかったのに言えなかったこと。人は小さなことから大きなことまで、何かしらの秘密を抱えているものだ。友達や隣人、あるいは恋人、そして家族にも…。

「家族の秘密」というモチーフは、その普遍性の高さから、多くの映画で物語の材料になってきた。そして今月、また新たな「家族の秘密」を描く映画として、2本の映画が公開された。今回はマルガレーテ・フォン・トロッタ監督の『生きうつしのプリマ』と、フランソワ・ファヴラ監督の『ミモザの島に消えた母』の2本を併せて紹介する。

『生きうつしのプリマ』:死んだ母にそっくりなオペラ女優の秘密

ドイツで暮らす売れない歌手のゾフィ(カッチャ・リーマン)は、ある日父親から、1年前に死んだ母(バルバラ・スコヴァ)と瓜二つな女性の写真を見せられる。オペラ女優として活躍するカタリーナ(バルバラ・スコヴァ)というこの女性に、母との関係を聞いてほしいと父に頼まれたゾフィは、ニューヨークへと渡る。オペラ観劇後に楽屋でカタリーナと対面したゾフィだったが…。

主演は話題作『帰ってきたヒトラー』への出演が記憶に新しいカッチャ・リーマン。共演は、『ハンナ・アーレント』でもマルガレーテ・フォン・トロッタ監督とタッグを組んだバルバラ・スコヴァ。早くして天国に旅立った母、そして母を思い続ける父を思うがあまり、なかなか図々しい行動を取る主人公の姿には思わず引いてしまうが、次々と明かされていく秘密をパズルのピースのように組み合わせていくと、なかなか良くできた家族のドラマとして楽しめる。

オチはどうにもインパクトに欠けるし、ストーリーそれ自体にも、特段のオリジナリティや魅力を感じることはない。それでも、思いもよらぬ生い立ちを知ることとなるカタリーナを演じたスコヴァを筆頭に、演技派キャスト陣が見せる重厚なアンサンブルには、観客を引き込むものがある。

映画『生きうつしのプリマ』

公開中

監督・脚本:マルガレーテ・フォン・トロッタ『ハンナ・アーレント』
出演:カッチャ・リーマン『帰ってきたヒトラー』、バルバラ・スコヴァ『ハンナ・アーレント』、
配給:ギャガ


『ミモザの島に消えた母』:母の死の真相を求める中年男性の姿

(C)2015 Concorde Filmverleih / Jan Betke

(C)2015 Concorde Filmverleih / Jan Betke

40歳のアントワン(ロラン・ラフィット)は、30年前にノワールムティエ島で起こった母の謎めいた死を、未だに忘れられずにいた。仕事や家庭も上手くいかないアントワンは、いよいよ妹のアガット(メラニー・ロラン)を連れて母の死を突き止めようとするのだが、家族や関係者は固く口を閉ざし…。

主演は『ムード・インディゴ うたかたの日々』などのロラン・ラフィット。共演には、『イングロリアス・バスターズ』『グランド・イリュージョン』のメラニー・ロラン。「謎の死を遂げた母」「母の記憶に縛られている男」「話そうとしない人々」といったミステリー的な物語の構成要素には大いに興味をそそられるし、明かされる真相もなかなかドラマティックな作品だ。

しかし、主演のラフィットの演技にどうも引き込まれるところがないのが、実に惜しい。ロランをはじめ、彼の脇を固めるキャスト陣はそれぞれ良い演技を見せているだけに、中心で引力を持つべき彼のパフォーマンスに物足りなさを感じるのは非常に残念だ。感情を抑制しているのはフランス的だが、やはり主人公には、物語に対してもう少しのインパクトを与えてほしい。

映画『ミモザの島に消えた母』

公開中

監督:フランソワ・ファヴラ(2004年仏映画祭出品「彼女の人生の役割」)
原作:タチアナ・ド・ロネ(「サラの鍵」
撮影監督:ロラン・ブリュネ(「クロワッサンで朝食を」「セラフィーヌの庭」)
音楽:エリック・ネヴー(「インティマシー/親密」「海をみる」)
キャスト:ローラン・ラフィット『ムード・インディゴ うたかたの日』、メラニー・ロラン『人生はビギナーズ』、オドレイ・ダナ『君を想って海をゆく』、ウラディミール・ヨルダノフ『恍惚』、ビュル・オジエ『夜顔』
2015年/フランス/フランス語/101分/カラー/シネスコ/5.1ch/原題:BOOMERANG
配給:ファントム・フィルム

(文:岸豊)

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