映画『ペット』―ギジェット(ポメラニアン)役・沢城みゆきインタビュー「彼女はある種、女の子の憧れのキャラクター」

沢城みゆきとギジェット

「飼い主たちが留守にしている時、愛する家族(ペット)たちは一体何をしているのだろう?」―そこからすべてが始まったのが、映画『ペット』。あの『ミニオンズ』を生み出したイルミネーション・エンターテインメントが制作、全米公開から3日間で1億ドルを超える興収を叩きだし、絶好調の『ファインディング・ドリー』を抜いて首位に立つなど、今回も作品のポテンシャルは折り紙つきだ。

物語は、ニューヨークに暮らすケイティの家から始まる。彼女に拾われ、同居していた愛犬・マックスは何不自由ない生活を送っていた。しかしある日突然ケイティが連れてきた大型犬のデュークの存在が、マックスの生活を一変させてしまう。そしてそれはマックスのペット仲間たちまで巻き込んだ大事件へと発展していき…。

今回、日本語吹替版でそのマックスに想いを寄せるポメラニアンのギジェット役を演じた沢城みゆきにインタビュー。役どころから、声優としての在り方までを聞いた。

(C)Universal Studios.

(C)Universal Studios.

今や人気、実力ともに日本を代表する女性声優の一人であると言ってもいい沢城。これまでにもそれこそ数えきれないくらいの役どころを演じてきた。そんな彼女の役への向き合い方とは―?

「役をもらったら、まず観るというか、知る過程を丁寧にやりますね。台本と映像がセットで来る事が多いのですが、そこに原作ものなどのプラス要素があれば、それにもなるたけ目を通して自分や相手役のことを把握するようにしています。吹替えに関しては、すでに向こうの女優さんが作り上げているキャラクター像があるので、まず、彼女の意図したところや取り組んだことをなるべく役者仲間としてきちんとお預かりできるように作品を観て、その次に、もう少しまっさらな気持ちでキャラクターとしてギジェットの可愛いところや素敵なところ、好きだと思っているものや嫌いだと思っているものを友達として把握するような感覚で観ます。そうやって役との距離を縮めていって、アフレコする頃にはシンクロできているのが理想ですよね」

相手の意図も汲みつつ、自分なりの解釈も加えていく作業は、多忙な人気声優にとってはとても丁寧な役作りのしかたのように思える。これまでキャリアを重ねてきた中で、どのようにここに着地したのだろうか。

「個人的には、10代の頃のほうがもう少し引きでやっていたというか、トータルのバランスの中での自分の役割…『主人公のために自分の役がどう存在しているか、主人公をどう見せなきゃいけないか』という理屈のほうが多かった気がします。でも結局それだと人事なんですよね。何処かの遠い国で起きている紛争みたいな。そうじゃなくて、自分事として物語を一緒に歩まないかぎり、人に届くものにならない気がして」

こちらも人気声優・宮野真守演じる鷹のタイベリアスと/(C)Universal Studios.

こちらも人気声優・宮野真守演じる鷹のタイベリアスと/(C)Universal Studios.

いかに相手の演技に合わせるか、ではなく自分の演技としてできるか。それこそが“他人事でないこと”にほかならないと思うのだが、現場でのバランス感は「瞬発力」だという。

「基本的に私たちは口頭で『こうしたい』って言うよりは、お芝居の中にすべての主張が入っていくものなので、マイクの前でそれを出しますね。その主張に関して『原音に近づけてほしい』っていうものもあれば、『原音関係なく、日本語吹替版として作りなおそう』っていう方もいらっしゃいます。こればかりはもう瞬発力でその作品ごとに対応している印象ですね」

周りに合わせる事が多かった頃よりも、今のほうがより自分らしい演技ができているに違いないはず。しかし、現場によって求められるものが違う以上、100%自分のやりたいことができるわけでもない。ならば、演じるには自由な現場のほうがより良いのでは、と素人目線では考えてしまいがちだが、実際はどうなのか。

「昔のほうが使命感は強かったと思いますね。キャラクターに自分が乗っかるというのが私からすると一番恐ろしい作業だったので、なるたけ引きで引きで、とにかく他人を、100%他人でやりきらねば、っていう考えだったんです。でもそれではダメだと分かって、やっぱり自分のハートで共感するようにやろうと思ったのですが、それをやり過ぎると今度は自分になっちゃう(笑)。なので、まず引きできちんとキャラクターを把握した上で共感するというバランスが良いんだなと理解しました。何も言われない現場は楽だなと思う反面、やっぱり誰かきちんと冷静な目で判断してくれている人がいないと。最終的な絶対値として10年後どっちが高いのか考えると、伸び伸びできる現場が良いという結論でいいのか? みたいなことを思いますね」

ギジェットの右にいるモルモットのノーマンは梶裕貴が演じる/(C)Universal Studios.

ギジェットの右にいるモルモットのノーマンは梶裕貴が演じる/(C)Universal Studios.

沢城が今回挑戦するのは、見た目こそ可愛いが、中盤以降物語を引っ張っていくことになる、とても行動力のあるポメラニアンだ。沢城が考える彼女の魅力はどこにあるのか―。

「生まれ変わるならギジェットがいいなって思うくらい、彼女は本当に自分の気持が素直に出ちゃうんですよね。全部口から出ちゃうっていう、ある種女の子の憧れのキャラクターだと思うんですよね。自分の中で会議をせずに、外の人とちゃんとつながって迷ったり悩んだりが出来るっていう意味で。『なんで今それ言い出した?』みたいなことが絶対なくて、周りの仲間はみんな彼女の気持ちを知っているっていう状態で映画が進んでいくので。もしかしたら異性と印象が分かれるキャラクターかもしれないですけど、ものすごく素直で、好きな人にこんなにまっすぐ向かって行けたらいいなっていう憧れの面が強い、そんな印象ですね。『好きでもなんでもないし…』って言いながらシッポがパタパタしてたりとか(笑)。それが吹替えでも同じように感じてもらえたらいいなって思います」

日本語吹替え版では、そんなギジェットのポメラニアンとしての可愛さと、女性としての絶妙なバランス感を生み出している沢城だが、原音のバージョンを聞いた時、とても驚いたという。

「原音は結構ハスキーな声なので、この子からその声が聞こえてくるのはちょっとびっくりしました。日本人が見るとものすごくギャップのあるキャラクターでもあって、見た目の可愛さと声のギャップで絶妙な魅力が成り立っているなと思ったんですけど、日本語吹替えに関しては、実は少しだけ音としても可愛く聞こえるラインに引き上げています。『キンキンしすぎると可愛いだけのキャラクターになっちゃうから、そこはもう少し女性としてちゃんと聞こえるラインには持ってきて欲しい』という演出もあり、声から可愛さもタフさも感じていただけるように取り組んでいるつもりです。可愛くていいところと、きちんと地声で踏ん張るところっていうのがコンバインしているような感じでやってます」

(C)Universal Studios.

(C)Universal Studios.

原音・吹替え両方観た感想では、正直日本人向き(オススメしたい)なのは吹替え版。沢城演じるギジェットもそうだが、物語のキーにもなるウサギのスノーボール(原音はコメディアンのケヴィン・ハート。吹替版ではバイキンマンやフリーザでお馴染みの中尾隆聖が担当)もそうで、言葉遣いや声質含めて作品にとてもマッチしているのだ。

「ずーっと観ていくと、ラストのほうでは本当にマックスの顔が設楽さんに見えてくるんですよね、不思議と。『顔似てるな~』って。同じくデュークをみても日村さんに見えてきて。いいシンクロ具合で話が進んでいくというか。吹替えならではの魅力が乗っかった印象はありますよね」

時に動物、時に人間、時に――と演じるものが多様化していく沢城にとって、キャリアを通して進化していること、一方で変わらないこととは?

「要望されることと、自分の好きなことのバランスをやっと取れるようになってきたのかなとは思います。昔は、監督たちの夢を叶えることが仕事だと思っていたし、そのとおりにやることがお金を頂いている対価だと思っていたんです。でも今は譲っちゃいけないものと、叶えなきゃいけないものが両方あることがわかって、そこをぶつけずに共存させる方法がちょっとずつ見えてきたかな…っていう感じですね。だから『監督にこう言われたからやりました』はダメで、『監督にこう言われてきちんと取り込んだ上で自分のこととしてやりました』っていうことがやっとできるようになってきたのかなという意味ではそこは進化かもしれないですね。変わらないことは、スポーツに勝ちたいということですかね。ノンフィクションに絶対に勝てないんですよ。この感動は超えられないなーっていうのがずっとあるので(笑)」

「勝てない」というのは諦めでも何でもない。常に見続けている目標のようなものである。それは、「最終的にはその感動を超えたい?」というこちらの問いかけにこう答えていることに集約されるだろう。

「それがないとエンタメってね、残っていけるのかなって思いますから。こんなに手間を掛けて大人数で作ったのに、それよりもちょっと子猫がポテポテ歩いていた動画のほうが癒やしって言われちゃうと…あ! そう!! 動物にも勝てない(笑)。なんかね、悔しいじゃないですか」

  • 沢城みゆき
  • 沢城みゆき
  • 沢城みゆき
  • 沢城みゆき
  • 沢城みゆき
  • 沢城みゆき

映画『ペット』
8月11日(木・祝)全国ロードショー

声の出演: 設楽統(バナナマン)、日村勇紀(バナナマン)、佐藤栞里、永作博美
宮野真守、梶裕貴、沢城みゆき、中尾隆聖、銀河万丈、山寺宏一 他

監督:クリス・ルノー、ヤローウ・チェイニー
製作:クリス・メレダンドリ、ジャネット・ヒーリー
原題:The Secret Life of Pets/全米公開7月8日[予定]
配給:東宝東和

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

沢城みゆき

生年月日1985年6月2日(33歳)
星座ふたご座
出生地東京都

沢城みゆきの関連作品一覧

設楽統

生年月日1973年4月23日(45歳)
星座おうし座
出生地埼玉県

設楽統の関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST