映画『神様の思し召し』―自分が思う“いい映画”として記憶に残るその理由― 【連載コラム Vol.10】

映画ライター・新谷里映が心動かされた、本当に観て欲しい映画たちを連載コラムでお届け。

第10回目は一度観たときの良さは間違っていなかったと再確認した2度目の鑑賞を経て、“何度も観たくなる”と思えた『神様の思し召し』。その秘密のキーとなる“いい映画”の条件とは――?


(C)Wildside 2015

(C)Wildside 2015

自分のなかで“いい映画”として記憶されている映画は、何度観ても面白いし、観る度に発見があるし、また観たいと思うものです。イタリア映画『神様の思し召し』もその1本。昨年の東京国際映画祭ですでに観ていたので、仕事的には“観たリスト”に入っている。改めて観なくてもいいのですが、面白かった、楽しかった、素晴らしかった……と記憶された感情をもう一度味わいたくて観てみると、やっぱりいい映画! ふたたび感動している自分がいました。2回目以降は当然ですが、どんなストーリーなのか知っている、どんな結末が待っているのかも知っているのにのめり込んで観てしまう。それは何故か──。

心地よく作品の世界に入り込ませてくれる映画の多くには、分かりやすいストーリーとテーマ、共感と気づきがあって、その気づきを自分自身の日常に重ね合わせることで“いい映画”だったと、記憶として残るのではないかと思うんです。

(C)Wildside 2015

(C)Wildside 2015

『神様の思し召し』の場合は、天才的な外科医だけど性格は傲慢で毒舌なトンマーゾ(マルコ・ジャリーニ)が、前科者だけど今はカリスマ神父のピエトロ(アレッサンドロ・ガスマン)と出会い変わっていく姿が描かれます。変化する前のトンマーゾは本当に嫌なヤツ。同僚や部下に対しても家族に対しても、それ言っちゃダメだよなぁ、ひとこと余計なんだよなぁ、ということを平気で言ってしまう。でも根っからの嫌なヤツなのではなく、いつの間にかそうなってしまったタイプで、いかに自分が傲慢であったかを気づかせてくれるのがピエトロ神父です。

そもそもトンマーゾがピエトロと出会うきっかけは、自分と同じ医者の道に進むと思っていた息子が、ある日突然「神父になりたい」と言い出したことでした。人々を救っているのは医者の自分で神ではない、信仰心ゼロだったトンマーゾにとって期待の息子の心変わりはかなりショックです。きっと息子は洗脳されているに違いない! と勝手に妄想し、ピエトロの正体を突き詰めようとあれこれ策を講じる姿が何とも滑稽で。そして、相手の正体を知ろうとしていたつもりが、実は自分自身と向きあうことになる──。最初はあんなに嫌なヤツだったトンマーゾが、最後にはとても愛おしくなる、とても大きな変化です。

(C)Wildside 2015

(C)Wildside 2015

もうひとつ、ラストシーンの心地いい余韻も何度も観たくなる理由のひとつです。ラストに用意されたある出来事の結末ははっきりと描かれていませんが、どちらを選んでも納得できるようになっている。面白いのは、1回目に観たときと2回目に観たときの自分が導き出したラストシーンの解釈が違ったことでした。分かりやすいけれど余韻を残してくれる、やっぱりいい映画です。この映画が監督デビュー作となるエドアルド・ファルコーネ。この名前もしっかり記憶に刻んで新作を待ちわびたいですが、これまで脚本家として数多くの作品を手掛けてきている人でもあるので、彼の脚本作品も観てみたいなぁと思いつつ、もう一度、3度目の鑑賞もいいなぁと計画中です。

(文・新谷里映)

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新谷里映

フリーライター、映画ライター、コラムニスト
新谷里映

情報誌、ファッション誌、音楽誌の編集部に所属、様々なジャンルの企画&編集に携わり、2005年3月、映画ライターとして独立。 独立後は、映画や音楽などのエンターテイメントを中心に雑誌やウェブにコラムやインタビューを寄稿中。

【tumblr】新谷里映/Rie Shintani 

映画『神様の思し召し』
公開中

CAST トンマーゾ(医師):マルコ・ジャリーニ
ピエトロ(神父):アレッサンドロ・ガスマン
アンドレア(息子):エンリコ・オティケル
カルラ(妻):ラウラ・モランテ
ビアンカ(娘):イラリア・スパダ
ジャンニ(娘婿):エドアルド・ペーシェ

監督/脚本:エドアルド・ファルコーネ
出演:マルコ・ジャリーニ、アレッサンドロ・ガスマン、ラウラ・モランテ、イラリア・スパダ
原題:Se Dio vuole/2015年/イタリア/88分/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/字幕翻訳:岡本太郎
配給:ギャガ(ロゴ)

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