【レビュー】『スーサイド・スクワッド』―DCコミックスの課題を浮き彫りにした「キャラクター映画」

 

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

キャラクターは魅力的なだけに、杜撰なプロットが惜しまれる。

マーベル・コミックと共にアメコミ映画の双璧をなすDCコミックスは、興行収入面で、『アベンジャーズ』シリーズを軸に多彩な作品群を展開するマーベルに大きくリードされている。そんな中で迎えた2016年、DCコミックスは、手札の中に隠していた「ジョーカー」を遂に繰り出した。それこそが、同名コミックの実写化作品で、9月10日に日本公開を迎えた映画『スーサイド・スクワッド』である。

政府高官のアマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイヴィス)は、極悪人たちを人類の利益のために利用するプログラム「タスクフォースX」のために、バットマンの宿敵であるジョーカーの恋人ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、人類最強のスナイパー:デッドショット(ウィル・スミス)、炎を操る元ギャングの王:エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)、エリート軍人:リック・フラッグ(ジョエル・キナマン)、殺人ブーメランの使い手:キャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)、冷酷な女サムライ:カタナ(福原かれん)、怪力のワニ男:キラークロック(アキノエ=アグバエ)、ロープの達人:スリップ・ノット(アダム・ビーチ)を招集し、チームを結成させる。戦うことを強制され、逃げれば首に埋め込まれた爆弾が爆発するという状況下で、いわば「スーサイド・スクワッド」(決死部隊)となった悪人たちは、考古学者のジューン・ムーン博士(カーラ・デルヴィーニュ)に憑依し、人類を滅ぼそうと画策する古代の魔女:エンチャントレスに対して戦いを挑むのだが…。

キラー・クロックとハーレイ・クイン/(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

なんといっても、本作の魅力はキャラクターだ。プロットの不備は目に余るものがあるが、それでもキャラクターの魅力によって、観客は2時間弱のランタイムを楽しむことができてしまうからすごい。スクワッドの中でも特に魅力的なのが、あのジョーカーの恋人:ハーレイ・クインである。演じたのが現代のハリウッドでも最高峰の美女マーゴット・ロビーであるため、その魅力は保証されているようなものだが、ロビーは原作のイメージを裏切ることがないハーレイの姿を見事に体現している。誰の指図も受けないハーレイは、その自由気ままな立ち居振る舞いから、狂気を湛えた笑顔に至るまで、常にキュートでクレイジーな魅力を振り撒いており、見る者を飽きさせることがない。特に注目して欲しいのは、超絶短いパンツから零れ落ちんばかりに揺れ、美しい曲線を描くヒップである。男子諸君には、ハーレイ(ロビー)のお尻を見るだけでも、本作を鑑賞する価値があると断言しよう。

また、彼女の恋人であるジョーカーも強烈な存在感を残している。彼については、演じたジャレッド・レトのパフォーマンスに脱帽するほかない。これまでにジャック・ニコルソンやヒース・レジャーという超A級俳優たちが演じてきたキャラクターであるため、その演技のハードルは極めて高いものにならざるを得ないが、レトはそれぞれの映画でほぼフル出演を果たした2名たちとは異なり、短い登場時間の中でポップさとクレイジーさ、そしてこれまでのジョーカーにないセクシーさを追求することによって、新たなジョーカーの姿を印象付けることに成功している。

ちなみに、レトは本作のジョーカー役について、「(恐らくジョーカーが主役の映画を作れるほど)十分な量のカットされた映像があった」と明かしている。本作でジョーカーの登場時間は15分に満たないが、その中でレトの怪演が放つインパクトは、これまでのジョーカーに負けず劣らずなものである。他にも、スミス演じるデッドショットや、ヘルナンデス扮するディアブロ、唯一の日本人キャストである福原が演じたカタナなど、それぞれの悪役たちには人間臭く悲劇的なドラマがあり、観客は彼らが悪行を繰り返してきたことを踏まえた上でも、自然と感情移入をすることができる。原作のエッセンスを変えないままにキャラクターを具現化したキャスト陣には、大きな拍手が送られるべきだろう。

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

ただ先述したように、キャラクターが魅力的な一方で、プロットの詰めの甘さは目に余る。一言で言い表すと、物語における要所が簡単に解決されてしまっているのだ。詳細な言及は避けるが、特定の敵を倒す場面や、何らかの問題解決が必要とされるシーンにおいて、打開策の味付けが淡泊過ぎる。その結果、観客は「え?これでいいの?」と展開に対する疑問を抱かざるを得ないのである。強大な敵を倒す際には、そのプロセスを正しく積み上げなければ、観客に興奮と感動を与えることができないのは明白である。脚本も兼任したエアー監督は、キャラクターの肉付けでは十分な働きを見せているものの、この点においては杜撰な仕事ぶりが目立つ。付け加えると、アクションシーンにおいても、特段に革新的な描写を見受けることはなかったし、それぞれの戦闘能力も、ディアブロを除いて特筆すべきものがないので、こうしたディテールにも気を配ってほしかったものだ。

とは言え、「杜撰なプロット」は本作に限ったことではない。『マン・オブ・スティール』『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』といったDC作品(たちの悪いことに、これらの作品ではキャラクターすら魅力的ではなかった)でも見られたし、マーベル作品群にも存在する、いわばアメコミ作品に付き物な欠点だ(『スパイダーマン』シリーズ、『アメイジング・スパイダーマン』シリーズ、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』、そして『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』はその限りではないが)。そんなアメコミ作品群にあって、本作はキャラクターの魅力だけで123分の上映時間を持たせてしまうものの、正直に言えば、これは褒められたものではない。なぜなら、物語の魅力(観客をあっと言わせるような展開)が伴わない「キャラクター映画」は、観客の飽きを誘うのが早く、シリーズ化しても成功を収めることが難しいからである。

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

(C) 2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

本作は、興行収入面でマーベル作品群に一矢報いるレベルの大成功を収めてはいるが、DCが本作の続編やクロスオーバーするであろう作品を通じて、今後も継続して成功を収めていき、マーベルの牙城を崩すことを望むのであれば、キャラクターだけでなく、観客に対して普遍的に訴求するストーリーを作ることが絶対的に必要となる。本作に携わった各製作会社の人間、特にワーナー・ブラザースとDCの重役たちは、目先の利益を追って下手に作品群を拡大する前に、この課題について真剣に検討すべきだ。

(文:岸豊)


映画『スーサイド・スクワッド』
公開中

配給:ワーナー・ブラザース映画
監督・脚本:デヴィッド・エアー(『フューリー』) 製作:チャールズ・ローブン、コリン・ウィルソン、リチャード・サックル
出演:ウィル・スミス、ジャレッド・レト、マーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン、ヴィオラ・デイヴィス、ジェイ・コートニー、カーラ・デルヴィーニュ、福原かれん

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST