新作映画『レッドタートル ある島の物語』を観るべき3つの理由――初の海外共同製作に挑んだスタジオジブリの未来は?

(C)2016 Studio Ghibli - Wild Bunch - Why Not Productions - Arte France Cinéma - CN4 Productions - Belvision - Nippon Television Network - Dentsu -Hakuhodo DYMP - Walt Disney Japan - Mitsubishi - Toho

(C)2016 Studio Ghibli - Wild Bunch - Why Not Productions - Arte France Cinéma - CN4 Productions - Belvision - Nippon Television Network - Dentsu -Hakuhodo DYMP - Walt Disney Japan - Mitsubishi - Toho

『レッドタートル ある島の物語』ってどんな映画?

嵐の中、荒れ狂う海に放り出された男が、九死に一生を得て、無人島にたどり着いた。集めた木々でイカダを組み立て、何度となく脱出を試みるが、そのたび不思議な力によって島に引き戻されてしまう。その力の正体とは、巨大な赤い亀(レッド・タートル)。やがて、男の前に突然現れた、ひとりの女との静かな共同生活の時間が、男の孤独と絶望を癒していくのだった。第69回カンヌ国際映画祭「ある視点部門」で特別賞を受賞。

観るべき理由:1――スタジオジブリ、初の海外共同製作に挑む

先日まで六本木ヒルズ展望台東京シティビューで開催された特別企画「ジブリの大博覧会」の入場者が、同会場の過去最高記録を樹立したスタジオジブリ。『思い出のマーニー』以来2年ぶりとなる最新作は、フランスの製作会社とタッグを組んだ初の海外共同製作だ。監督を務めるのは短編『岸辺のふたり』で第73回アカデミー賞の短編アニメ賞に輝いたマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット。今から10年前、同作に感銘を受けたジブリの鈴木敏夫氏が、長編製作をオファーしたことがきっかけだった。

長編製作の経験がないヴィット監督は、「尊敬する高畑勲監督から助言を受けられること」を条件にオファーを快諾。宮崎駿監督が長編映画の製作から引退した現在、ジブリの未来を見据える上で見逃せない一作だ。

観るべき理由:2――ロンドン暮らしの監督が、小金井に移住?

企画の立ち上げからシナリオや絵コンテ作り、効果音や音楽に至るまでジブリ側と細かなやりとりを進めたヴィット監督。2010年には居を構えるロンドンから来日し、小金井市のスタジオジブリ近くに借りた部屋に“移住”。約4週間をかけて、高畑監督らの助言を得ながら、ライカリール(絵コンテを順番につないだ確認・検証用の映像)を完成させた。

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督

マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督

「ジブリからのオファーは、人生最大の感激でした。ただ、私自身はこれまで短編アニメをたった1人で製作してきたので、長編製作は不向きだと思っていました。ですから、他のスタジオだったら断っていたはずで、ジブリだからこそ『挑戦しよう』という気持ちになったのです。今回の経験における一番の学びは、優秀なアーティストたちを束ね、彼らの実力を発揮してもらう過程で、改めて感じた信頼関係の大切さ。それはジブリとの関係性でも同じです。企画が動き出した段階では、私たちの間には契約書もありませんでしたから」(先日来日したヴィット監督)

観るべき理由:3――全編セリフなし!「わかりやすさ」から遠く離れて…

こうして完成した本作は上映時間81分の間、叫び声などを除くと全編セリフなしで構成される野心的な作品に仕上がった。当初はわずかにセリフがあったそうだが、高畑監督から「思い切ってセリフは全部削ったほうがいい」とアドバイスを受けた結果、この決断に至ったのだ。

たとえセリフがなくても、美しくも厳しい無人島の情景、そこで生き抜こうとする男の思いを通して、自然への尊重と人間の尊厳が確かに伝わってくる。いかにヴィット監督とジブリのコラボレーションが実りある豊かなものであったかが実感できるはず。そもそも、男はどこから来たのか? 彼の前に現れた亀や女性が意味することとは? とかく「わかりやすさ」が求められる現代に、あえて具体的な説明は手放し、観客の自由な感性と想像力に委ねる…。この不思議な余韻が、観終わった時にあれこれと考えさせられる宮崎&高畑作品にとても似ているのだ。

(撮影・文:内田涼)


映画『レッドタートル ある島の物語』
9月17日 全国東宝系にてロードショー

原作・脚本・監督:マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
脚本:パスカル・フェラン
アーティスティック・プロデューサー:高畑勲
音楽:ローラン・ペレズ・デル・マール
製作:スタジオジブリ/ワイルドバンチ
プロデューサー:鈴木敏夫/ヴァンサン・マラヴァル
配給:東宝
2016/81分/日本、フランス、ベルギー合作

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST