映画『スター・トレック BEYOND』ジャスティン・リン監督インタビュー「日本で話した要素がたくさん入っている」

『ワイルド・スピード』シリーズの監督でもおなじみのジャスティン・リン監督

『ワイルド・スピード』シリーズ(3~6)の監督でもおなじみのジャスティン・リン監督

1966年にオリジナルの『STAR TREK(原題)』がTVシリーズで始まり、この2016年で早50年。TVシリーズ5作、劇場版も10本制作されていた長寿作を、2009年にJ.J.エイブラムスがリブートした『スター・トレック』『スター・トレック イントゥ・ダークネス』に続く第3弾が、いよいよ公開となったシリーズ最新作『スター・トレック BEYOND』だ。

エイブラムスといえば「LOST」「FRINGE/フリンジ」といったTVドラマから、『M:i:III』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』などのヒット作を手がけていることでも知られるが、本作ではプロデューサーへと役目を変え、監督交代。そのバトンを受けたのは、こちらもヒットシリーズである『ワイルド・スピード』シリーズ(3~6作目)の監督でもおなじみのジャスティン・リン。日本公開直前に来日したリン監督に、本作に対する思いや制作秘話を聞いた。

『ワイルド・スピード』のヴィン・ディーゼル演じるドミニクと多少タイプは違うが、クリス・パイン演じるカーク船長も作品が進むに連れてその存在感を完全に確立した/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

『ワイルド・スピード』のヴィン・ディーゼル演じるドミニクと多少タイプは違うが、クリス・パイン演じるカーク船長も作品が進むに連れてその存在感を完全に確立した/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

エイブラムスが「本作の監督にピッタリ」と太鼓判を押すほど、『スター・トレック』愛の強いリン監督だが、やはりプレッシャーを感じていたそう。

「もちろんプレッシャーは感じていたし、でもそうあるべきだとも思っていた。50年も続く素晴らしいシリーズで、ファンは『スター・トレック』のことを大切にしている。シリーズの本質も大事だけど、ミッション・ステートメント(=方針や指針)でもある“新しいことを試す”“先に進む”ことも大事にしたかった」

エンタープライズ号の新たな舵取りを任されたリン監督に、エイブラムスは「思い切ってやれ」と声をかけていたとのことだが、彼にとっては特別な存在なんだとか。

「自分から手を挙げたわけではないけど、『やらないか?』と電話をもらって。J.Jという、このシリーズをリブートさせた人が僕を信じてくれた。彼の作品のファンということもあるし、いろいろなTVシリーズを作っていて、職人技も持っている。そんな自分がすごく尊敬する人から信頼してもらえたことが一番だったね」

そのリン監督とともに今回脚本を担当したのがシリーズ初参加のダグ・ユングと、リブート版からモンゴメリー・スコット(通称スコッティ)役として出演してきたサイモン・ペッグ。ペッグが加わったとなれば、よりコメディ色が強くなるのでは? と思いがちだが、本作では絶妙なバランス感が保たれている。

「僕はサイモン・ペッグのファンで、俳優としてもフィルムメイカーとしても彼を尊敬している。本作でその両方を見ることができたことはボーナスだったし、ユングも素晴らしい脚本家で、いいコラボレーターでもあった。僕ら3人はとても面白いグループだったと思うよ。ペッグはスコッティだけでなく、(前2作に出演したことで)他のキャラクターの人間味を把握していたから面白くできたんだと思う。笑わせようと思って仕掛けると面白くなくなるから、まずはキャタクターに忠実でいること。そうすることで観客がその人間性に触れて、自然と笑いが生まれてくるから、すごく有効な手段だと思う」

サイモン・ペッグ演じるスコッティ(前列右)もすっかりおなじみのキャラに/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

サイモン・ペッグ演じるスコッティ(前列右)もすっかりおなじみのキャラに/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

新たなメンバーで取り組む3作目だが、先にも述べていたように、伝統も尊重しつつ新しいことにもチャレンジしなくてはならない。しかしジャスティン・リン=『ワイルド・スピード』というイメージがあるだけに、「車輪」に対する反応はストレートだった。それが重力から開放された宇宙空間が主な舞台だったとしても、だ。

「僕が『ワイルド・スピード』の監督をしていたせいか、何か車輪がついているものを入れると『やっぱりね』と言われてしまうんだよ」―こう発言するのは、劇中、カークがバイクに乗ってアクションをするシーンが登場するからなのだが、それもチャレンジの結果なのである。

「『スター・トレック』宇宙が舞台だけど、そこでも人間味というか、環境と人が反応しあっているというところを見せたかった。まず、『スター・トレック』でクルーを一つにするもの(エンタープライズ号)を壊そうと思った。その代わりに本作で新たに登場させたのがフランクリン号とバイク。バイクに関しては、使いたかったからはなく、キャラクターを語る上で最終的に決まったことなんだ」

『ワイルド・スピード』も『スター・トレック』も“家族”と呼べるほどメンバーの関係が深く、「両者に共通するのは絆の強さ」と話すリン監督。改めて本作を撮ったことで自分の原点を思い出していた。

「本作を作り終わってから気がついたんだけど、『ワイルド・スピード』のインスピレーションは子供の頃に観ていた『スター・トレック』が原点だなと。僕は8歳のときにアメリカに移民してきて、そこで学んだのが“血の繋がりだけが家族ではない”ということ。僕の子供にはそういった親族がたくさんいるからね。実際、僕が再放送で観ていた『スター・トレック』のキャラクターたちは、自分の家族のように感じていたよ」

幼少期から『スター・トレック』に慣れ親しんでいたリン監督が個人的に楽しんだのは「小さいシーン」だという。

「僕がTVシリーズの再放送を観て育ったということもあるけど、『スールーに家族はいるのかな?』とか『ブリッジにいないときにみんなで遊んだりしているのかな?』といったようなことをいつも疑問に思っていた。なので、今回彼らの生活の一部を見せることができたことがとても満足していることなんだ。それは例えば、カークがいないときのボーンズ×スポックってどんな感じかなとかね」

(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

新たな舞台として登場する「ヨークタウン」/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

『スター・トレック』はもちろんだが、リン監督自身も多様な人種を取り入れて作品を作ってきた。現在アメリカに住んでいるからこそ肌で感じている部分も多く、その思いも強い。

「アメリカのメディアは遅れていると思う。それは、僕が住んでいる世界(多様な人種に囲まれていること)を反映していない事が多いと感じているから。小さい頃から親しんできた『スター・トレック』ではクルーの一人としてアジア人が出ているけど、ほかでアジア人の顔が見られることはなかった。この作品で(12年ぶりに)ジョン・チョウと一緒に仕事をしたけど、彼は非常に才能がある。でも、才能のあるなしで起用されたのではなく、単純にチャンスの問題なんだ。私が作品を通じて人種的な多様性を見せているのは、政治的な主張ではなく、自分が今住んでいる世界を反映させたいと思ったから色んな人を出しているんだ」

そして、今回は新キャラクターとしてクルーたちと冒険することになるジェイラが登場。近年、トレンドとして強い女性キャラクターを主人公にしたり活躍させることが増えてきているようにも感じるが、リン監督の想いとは?

「男女関係なく、新しいキャラクターを作るチャンスがあった事にワクワクしていたんだ。オーディションをしたとき、3度目くらいのときに(ジェイラ役を務めることになる)ソフィア・ブテラが現れて、彼女を見たときに「この人だ!」と思ったので、彼女にメイクをしてもらったらキャラクターが見えた。でも、彼女にキャスティングを決めたとき、まだ脚本はできていなかったんだ。そこで、彼女の強みに沿ってキャラクターを作っていった。ソフィアが演じてくれたジェイラはこのシリーズにすごく大きな貢献をしてくれたので、今後の彼女の活躍が楽しみだね」

新キャラのジェイラ(左)/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

新キャラのジェイラ(左)/(C)2016 Paramount Pictures. All Rights Reserved. STAR TREK and all related marks and logos are trademarks of CBS Studios, Inc.

インディーズ映画出身のリン監督が大きな予算で取り組んだ最初のハリウッド大作が2005年の『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』。その時の経験が実はこの『スター・トレック BEYOND』にも反映されているんだとか。

「当時日本のクルーともよく映画の話もしたけど、そこから学んだのが、“現実逃避をしたい”というのと、“新しい世界を探検したい”というのをみんなが言っていたんだ。そのことをこの作品を作っている間ずっと考えていたし、話し合っていたことがすごく盛り込まれていると思うよ。それに、今回宣伝で日本に来れたのは、ある種故郷に戻ってきたような気分だし、映画はぜひ楽しんでもらいたいと思うね。僕なりに日本の人が求めていたことができたと思うから」

リン監督が「初めて触れる人のこともすごく意識していた。キャラクターを知る事を楽しめるといいと思ったし、気に入ってくれれば50年分の作品を遡れるからね」とその魅力を語る『スター・トレック』という大宇宙。最期は彼が思う魅力で締めたいと思う。

「僕が『スター・トレック』の中で好きだと思うのは、人間は不完全だけど、そこに希望があるということ。そこを感じて欲しいね。本作は単純に宇宙モノとして楽しむこともできるし、政治的な見方もしようと思えばできる。2時間、どんな人でもきっと楽しんでもらえると思うよ」


映画『スター・トレック BEYOND』
大ヒット公開中

製作: J・J・エイブラムス
監督: ジャスティン・リン
脚本: サイモン・ペッグ、ダグ・ユング
出演: クリス・パイン、ザッカリー・クイント、カール・アーバン、ゾーイ・サルダナ、サイモン・ペッグ、ジョン・チョウ、アントン・イェルチン、イドリス・エルバ、ソフィア・ブテラ
全米公開:7月22日
原題:STARTREK BEYOND
配給:東和ピクチャーズ

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