映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』エドワード・ズウィック監督インタビュー「いい役者というものはいろいろな側面を持ったモザイクのようなもの」

エドワード・ズウィック監督。『ラストサムライ』以来のトム・クルーズとのコンビ

エドワード・ズウィック監督。『ラストサムライ』以来のトム・クルーズとのコンビ

イギリス人推理小説家のリー・チャイルドが生み出した「ジャック・リーチャー」シリーズから、第9作目をトム・クルーズ主演で実写映画化した『アウトロー』(原題:Jack Reacher)から早4年。同シリーズの18作目をもとに作られた最新作『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』が封切られた。本作では、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』などでおなじみのクリストファー・マッカリーから監督がバトンタッチ、過去に『ラストサムライ』でトムとタッグを組んだ経験を持つエドワード・ズウィックに白羽の矢が立った。

ズウィック監督がトムとタッグを組むのは10年以上ぶりとなるが、「以前からトムが持っていた熱意やエネルギー、100%のコミットメントなどは全く変わっていなかった」と改めてトムの映画に対する姿勢に敬意を示しつつ、「実は今回あまり制作の時間がなかったんだ。そんな中で僕に依頼をくれたのは、(続編ということで)同じようなテイストを繰り返したくなかったんだろうと思う。僕が持っている個性や感性を作品に加えることを期待されていたから、それを感じながら映画を作っていったよ」とトムとの再タッグを嬉しそうに語る。

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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ジェームズ・ボンドのようなスマートに卒なく、ではなくトム演じるジャック・リーチャーという人物は無骨さという“生身感”を感じさせるキャラクターであり、画面を通じてその痛みすら伝わってくるアクションへと進化した。またそれはズウィック監督の意図したところでもあったという。

「トムといえば、肉体的な演技…スタント、アクションの素晴らしい力量を持っているけど、そうは言っても怪我をすることだってある。(アクション中に)うっかり拳が入ったときの痛みは、50代と40代では違うよね。彼はそれを認めようとしないけど(笑)。キャラクターの感情をリアルに伝えたいなら、アクションもリアルに、痛みを感じられるものにしないといけないと思ったからね。パンチ一つ、キック一つに意味を持たせたかった。そのために、より荒々しい形でアクションを見せることで、キャラクターの感情も伝わるんじゃないかと考えたんだ」

『アウトロー』では、基本的にリーチャーがサポートは受けるものの、まさに一匹狼として現場で奮闘、結果周囲を巻き込んで問題を解決していく形だった。しかし本作では、タイプの異なる2人の女性と同行しながらストーリーが展開していき、3人が見せる人間関係とドラマが大きな魅力の一つとなっている。

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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「ジャック・リーチャーは、一匹狼として人間関係を持っていないのにそれを強いられる。娘かもしれないサマンサと、かつての自分の地位で仕事をしているターナー少佐、彼女たちと疑似家族のような関係にならざるを得なくなってしまう。リーチャーとしては心の準備も何もない状況に放り込まれる。肉体的なことは何でもできるけど、他人と接する心の問題となるとどうしていいかわからないんだ。ターナーは立場的にも性格的にも命令を下す立場のキャラクターで、そんな女性にジャックはどう反応するのか、またサマンサにはどう惹かれて、それが自分の空想だと葛藤するのだろうか?とかいうことを考えながらぶつけてみた。そして自信家で完璧そうに見えるリーチャーが混乱したり困惑したり動揺したりするのが面白いんじゃないかってね。特にこのジャンルの映画では、ヒーローはいつも正しいことを考え、行動に移しているという描かれ方が多いからそれを崩してみたいという思いがあったね」

劇中で大活躍するサマンサ(この活躍は是非劇場で確かめて欲しい)が生き生きと描かれたのも、演じたダニカ・ヤロシュに対しトムならではの配慮があった結果では、とズウィック監督は考えている。

「役者の化学反応はとても面白く、腕のある役者は、それが本当はなかったとしても、通じ合っているかのような演技ができる。でも、何かしらのつながりがある方がより良いものができるんだ。おそらく、ダニカの中にトムは自分自身の姿を見たんじゃないかな? ダニカはバイクも乗りたい、空も飛びたい、スタントもやりたい、と学びたい姿勢でエネルギーにあふれていた。同じ年頃のトムもきっとそうだったんじゃないかなって。ダニカとトムの相性は良かったし、トムは現場で時間をかけて彼女にいろんなことを教えたり、時にふざけあったり、そうやって彼女も居心地が良くなったからこそ、15歳ながら大スターに向かってあのような演技ができたんだと思うね。それだけトムが意図的に彼女の演技を引き出すための雰囲気作りをしたんじゃないかな」

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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トムの配慮ももちろんだが、ズウィック監督はさらに自身の手法でキャラクターの魅力を掘り下げているという。

「僕が一番いいと思っているのは、役者の側面に、僕がキャラクターに望んでいる意図に近いものを見つけて、適応させていくというやり方。いい役者というものはいろいろな側面を持ったモザイクのようなもので、監督のほうが表現したい側面を見つけ、刺激し、引き出してキャラクターとして成立させていくんだ」

さらに、過去にも錚々たる大スターたちと仕事をしてきたズウィック監督が、彼流の演出のコツや、大スターに対して接する心得についても教えてくれた。

「実は、映画スターは演出されたがるものなんだ。僕らは一役者としてキャスティングしているし、彼らに要求するものも他のみんなと同じ。どんな大スターであっても、スター以前に役者になりたいと思っているわけだから、それができるように、大スターという扱いをなくしてなるべく誠実に向き合うこと。ただ、全員がそれを求めているわけではないけどね。スターをスター足らしめているのは、彼らが持っているエネルギー、内なる炎のようなもの。僕は監督としてそれをどうやって観客に見せようかと考えながら演出しているからね。そして、偉大な役者は、監督と同じような感じ方をするんだ。直感的にストーリーテリングができるから、一緒に力を合わせて物語を紡ぐ事ができるんだよ」

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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すべてリーチャー中心にフォーカスしていた前作から、ズウィック監督がもたらした、異なる男女が繰り広げる人間関係が生む新たな人間ドラマと、痛みを感じるアクションが融合した最新作『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』。続編ではなく単体の完結ものとして楽しめるこのシリーズにおいて、リーチャーの新たな一面が浮き彫りになる本作を楽しんで欲しいし、気が早いかもしれないが、可能性があるのであれば、この先また違ったリーチャーの姿をスクリーンで目にする日が来ることを期待したい。


映画『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』
大ヒット上映中

出演:トム・クルーズ、コビー・スマルダーズ(『アベンジャーズ』)、ダニカ・ヤロシュ(『HEROS・リボーン』)、ロバート・ネッパー(『プリズン・ブレイク』)他
監督:エドワード・ズウィック(『ラストサムライ』『ブラッド・ダイヤモンド』)
脚本:エドワード・ズウィック、マーシャル・ハースコヴィッツ(『ラストサムライ』『トラフィック』)
製作:クリストファー・マッカリー『アウトロー』、トム・クルーズ、ドン・グレンジャー(『M:Iローグ・ネイション』『アウトロー』)
原作:リー・チャイルド「Never Go Back」(2013年、シリーズ18作目)
原題:『Jack Reacher Never Go Back』 北米公開: 2016年10月21日(金)
配給:東和ピクチャーズ

アウトロー

アウトロー

出演者 トム・クルーズ  ロザムンド・パイク  リチャード・ジェンキンス  デヴィッド・オイェロウォ  ベルナー・ヘルツォーク  ジェイ・コートニー  ジョセフ・シコラ  ロバート・デュヴァル  マイケル・レイモンド=ジェームズ  アレクシア・ファスト
監督 クリストファー・マッカリー
製作総指揮 ジェイク・マイヤーズ  ケン・カミンズ  ケヴィン・メシック  デヴィッド・エリソン  デイナ・ゴールドバーグ  ポール・シュウェイク
脚本 クリストファー・マッカリー
原作者 リー・チャイルド
音楽 ジョー・クレイマー
概要 元エリート軍人の流れ者ジャック・リーチャーが様々な事件に巻き込まれて活躍するリー・チャイルドのベストセラー・シリーズを「ミッション:インポッシブル」シリーズのトム・クルーズ主演で映画化したクライム・アクション大作。監督は「誘拐犯」のクリストファー・マッカリー。ある日、ピッツバーグ近郊で男女5人が犠牲となる無差別殺人事件が発生。現場に残された証拠から、元米軍スナイパーのジェームズ・バーが逮捕され、事件はスピード解決したかに思われた。ところが警察の尋問にバーは黙秘を続け、“ジャック・リーチャーを呼べ”と謎のメモを残した後、護送中に瀕死の重傷を負ってしまう。やがて警察のもとにやって来たリーチャーは、事件の背後に危険な陰謀の臭いをかぎ取るのだったが…。

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