新作映画『この世界の片隅に』を観るべき3つの理由――活況続く2016年の長編アニメ界に新たな“現象”

(c)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

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『この世界の片隅に』ってどんな映画?

第13回(2009年)文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞した、こうの史代同名漫画を映画化。昭和19年、18歳になるすずに突然縁談がもちあがり、広島から軍港の街として栄える呉へお嫁に行くことに。夫の周作やその両親ら、心優しい人々に囲まれ、見知らぬ土地での生活にも慣れ始めた。しかし昭和20年3月、呉が空襲にさらされ、すずたちの生活は一変。大切なものを失いながらも、すずは日々を胸に刻み、前を向いていくが…。

観るべき理由:1――長編アニメ界に新たな“現象”異例ヒットとクラウドファンディング

今や興収200億円突破も視野に入った『君の名は。』(新海誠監督)の大ヒットに加えて、粘り強い興行を展開する京都アニメーションの新作『聲の形』(山田尚子監督)など、ポストジブリともいうべき潮流が次々と生まれ、活況を見せる2016年の長編アニメ界。そんな今年を締めくくるべく、新たな“現象”として注目を集めるのが、片渕須直監督の『この世界の片隅に』だ。

11月12日(土)に全国63館で封切られ、週末2日間の興行成績は4,704万2,090円、動員は3万2,032名。公開館数300館レベルの大作がひしめく全国映画動員ランキングで、見事10位にランクインを果たした。製作決定を前にクラウドファンディングによる支援者募集を敢行し、圧倒的な支持を集めたことで制作が本格始動するなど、異例ヒットを後押しする舞台裏もドラマチック。海外14カ国での配給も決定済みだ。

観るべき理由:2――日常が浮き彫りにする、生と命の輝きと愛おしさ

メガホンをとる片渕監督は、前作『マイマイ新子と千年の魔法』も異例のロングランヒットを記録した日本アニメーション界のベテラン監督で、かつて宮崎駿監督の『魔女の宅急便』で演出補を務めた経歴も。NHKの東日本大震災復興支援ソング「花は咲く」の監督としても知られ、このときに原作者のこうの氏と初タッグを組んだ。

前作同様、徹底したリサーチに基づくリアリティの追求は健在で、舞台となる広島県・呉市の情景、そこに息づく戦時中の人々の生活の営みを通して、生きることと万物に宿る命の輝き、愛おしさが浮き彫りになっている。同時にテーマを押し付けず、観客の想像力に託すことも忘れない。きっと、観終わった後に「今この瞬間、すずさんはどこで、どんな生活をしているんだろう?」と思いを馳せてしまうはずだ。年々、戦争の語り部が減っている現代だからこそ、本作がもつ価値はより一層深いものになっている。

観るべき理由:3――女優のん、復帰作で声優初挑戦 新たな魅力が開花

本作は能年玲奈から芸名変更した女優・のんが、アニメ声優に初挑戦した復帰作としても大きな注目を集める。公開を前に各地で行われた試写会でも、その声優ぶりが高く評価されており、片渕監督も「マイクを通して聞いた時、何年も前から想像してきた声が、すずさんとなって現れた。のんさん以外のすずさんは考えられないと確信した」と称賛を惜しまない。

初日舞台挨拶にて

初日舞台挨拶にて

のん本人は、初の声優に悪戦苦闘だったそうだが、片渕監督のコメント通り、見事に役柄になりきっており、女優として新たな魅力を開花させている。先日、東京・テアトル新宿で行われた初日舞台挨拶では「すずさんが節約したり、着物をリサイクルしたり、一生懸命だけど、どこか生活を楽しんでいる姿がすてきだなと思った」と語り、“日常”の大切さを痛感した様子。今後の女優業については、さまざまな憶測もあるが、声優として本作で復帰の第一歩を踏み出したことは、非常に幸運だと言わざるを得ない。

(撮影・文:内田涼)

>にわかに露出増える“のん”(能年玲奈)、アニメ『この世界の片隅に』の演技で大絶賛を受けた今後


映画『この世界の片隅に』
公開中

CAST
北條すず:のん/北條周作:細谷佳正/黒村晴美:稲葉菜月/黒村径子:尾身美詞/ 水原 哲:小野大輔/浦野すみ:潘めぐみ/ 白木リン:岩井七世/北條円太郎:牛山茂/北條サン:新谷真弓/澁谷天外(特別出演)

STAFF
原作:こうの史代『この世界の片隅に』(双葉社刊)
企画:丸山正雄
監督補・画面構成:浦谷千恵
キャラクターデザイン・作画監督:松原秀典
美術監督:林孝輔
音楽:コトリンゴ
プロデューサー:真木太郎
監督・脚本:片渕須直
製作統括:GENCO
アニメーション制作:MAPPA
配給:東京テアトル(文化庁)

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のん

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