「とにかく、楽しい映画になればいいなと思った」―映画『疾風ロンド』阿部寛インタビュー

阿部寛

『ガリレオ』シリーズをはじめとする重厚なミステリー作品で知られる作家・東野圭吾の作品群で、その軽妙さによって異彩を放つ『疾風ロンド』が、阿部寛大倉忠義大島優子ら豪華キャストを迎えて実写化され、11月26日より全国公開を迎える。

同作に主演した阿部に、キャラクターへのアプローチや、野沢温泉スキー場での撮影風景、そして演技に対する姿勢を変えるきっかけとなったできごとなどについて話を聞くことができた。

本作に出演することを決めた理由と、演じた栗林を作り上げていくプロセスについて教えてください。

『サラリーマンNEO』を見ていて、吉田監督とは、以前から仕事をしたいと思っていたんです。今回は、吉田監督が私に声をかけてくれたと聞いて、「(NEOの)吉田監督と一緒に仕事ができるのが嬉しい」と思って、引き受けさせていただきました。そして、原作が東野さんで、それを吉田監督がどうやって撮るのか、どんな世界観で切って来るのかを楽しみに、この作品に入っていきました。吉田監督と考えながら、一緒に相談しながら、「ここまではいいかな」「ここまではだめかな」という感じで作っていきましたね。

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

具体的には、どんな指示を受けましたか?

『サラリーマンNEO』みたいな世界を作っている方だから、キレッキレの演出プランがハッキリしていて、セクシー部長のように神経質にアレコレと指示してくださるかと思ったら、真逆でした(笑)。物腰優しく、演技を見ながら進めていく方だったので、すごく意外だったんです。演技をする場を用意していただき、そこでこちらが演技を見せそれを料理してもらうという流れだったので、生みの苦しみを味わいながら、監督の世界観に引き込まれました。

吉田監督は、演技はほぼ俳優の裁量に任せるということですか?

「やりすぎです」とか「ここはもっと出して」というさじ加減を的確に言ってくださいますね。ご本人は、「昔は誰の言うことも聞かず自分の世界観だけを押し付けるような人だった」と仰ってましたが、ある時からスタイルを変えたらしく「人の話を聞くようにしたら、うまくいくようになった」と言ってました。

栗林というキャラクターを作っていく上で、撮影中と撮影前で変わったこと、変わらなかったことを教えてください。

本読みをしたときに、若いキャストの皆さんが早いテンポで来るだろうと思っていたんです。でも、(スキー場のレスキュー隊員・根津昇平役の)大倉君はソフトでゆったりとした独特のアプローチをしてきて、(スノーボードクロス選手・瀬利千晶役の)大島優子ちゃんもしっかりと自分の世界観で台本を読み込んで来られていたので、『あ、こういう感じでくるんだ』と思ったんです。この本読みの印象が、撮影前に自分の中にあったイメージを変えたかも知れません。それから現場に入ったんですけど、演じて行くうちにお互いの個性の噛み合いが微妙にずれていて、その微妙にずれていることが面白く、これが監督の目指している面白さなんじゃないかと気付きました。

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

栗林の息子・秀人役の濱田龍臣さんと共演するシーンが多いですが、濱田さんの印象は?

普通の15歳で、可愛いんですよ。皆でご飯を食べている時も、残ったピザや果物を『僕が食べていいですか?全部食べます』って。大倉君が「太るから止めた方がいんじゃないか」と言っても、どんどん食べてしまうので、次の日にはちょっと太ってしまってシーンが繋がらなく、監督に怒られてましたね(笑)。そういうところが、無垢なままというか、可愛くて面白かったです。

演技に関しては、どう感じられましたか?

反抗期で、大人のペースに合わせない息子役なので、栗林が世間体を気にする感情を蔑む芝居はすごいなと思いました。吉田監督もそこはすごく評価していて、「大人を見下す目は最高。あの目は満点ですよ」と喜んでいましたから。

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

吉田監督や、栗林の上司・東郷雅臣役で出演している柄本明さんとの印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

吉田監督は、カットを中々かけないんですよ(笑)。何かが生まれるんじゃないか?何か動機づけが変わるんじゃないか?と思う時だけ、カットをかけないんだと思うんです。穴に落ちるシーンも、その流れで生まれました。柄本さんは、今回は志村けんさんとのコントのような笑いの部分で演じてらっしゃったので、その一番近いところでご一緒でき、楽しませていただきました。

劇中で栗林を追い回す謎の男・ワダハルオを演じた、ムロツヨシさんはいかがでしたか?

ムロさんは、初めてだったから掴み切れなかったです(笑)。ものすごく謙虚な方なんだけど、謙虚ぶっているだけなんじゃないかと(笑)。『阿部さん、ぜひ飲みに行きたいです!』と言っておきながら、誘ってくれなかったりするんですよ。遠慮したのかもしれないですけどね。

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

劇中で、栗林はスキーが下手な設定ですが、阿部さんご自身のスキーの腕前は?

映画の中の栗林より、ちょっと上手いくらいです。スキー板はぎこちなく揃うレベル。一日だけ屋内スキー場に練習しに行って、そのまま現場に入ったんですが、吹き替えの方より“下手に滑る”のは私の方が上手かったので、本当に丁度良い感じだったと思います。スキーをやったのは、20年…いや、30年ぶりくらいかな?

私生活で、ウィンタースポーツをやることは?

2回スノーボードをやってみたんですが、成長が見られなかったから止めました(笑)。

コメディ性とミステリーが溶け合った本作ですが、どういった仕上がりになることを目指しましたか?

とにかく、楽しい映画になればいいなと思っていたんです。あっという間に見れて、サスペンスのドキドキがあり、そんな中でもコミカルなシーンで沢山笑えて、それこそ疾風の如く、バン!と終わる。観客が何も複雑なことを考えずに、笑って帰っていただければ良いなと思っていました。一番意識したのは、“エンターテイメント”ということですね。

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

(C)2016「疾風ロンド」製作委員会

さきほど、吉田監督が変わったと仰っていましたが、阿部さん自身が俳優として変化した瞬間を教えてください。

駆け出しの頃は、演技を習っていなかったので、台詞を言ってそれが魅力的であればいいなという仕事のスタンスでした。でも、それだとすぐに行き詰まるんですよね。こだわりって何だろうと思ったけど、こだわりが分からなかったし、こだわりが良いのかも分からなかった。でもある時から、それじゃ続かないと思って、何かにこだわっている人に注目するようになりました。

そういう意味で、最も影響を受けた俳優は?

大滝秀治さんです。共演させていただいたとき、撮影準備中のセットの中でスタッフから「どいてください」と言われてもその場から動かず、セリフや小道具の置き方まですべてにこだわって役を作られていました。ある現場で、國村準さんが犯人役で、私が弁護士役だった時、あれだけ優しい人なのに現場に入ると常に睨んでくるんですよ(笑)、『弁護士が調べに来たな』という風に。國村さんの現場での居方にも感動しました。自分にもそういったものを取り入れるようにしたら、演じることが面白くなっていったんです

本作の魅力でもある笑いは、俳優としてどうとらえていますか?

笑いって、すごく大事なことだと思うんですよ。観客にはできるだけ温かいものを持って帰って欲しいという思いがあります。色々な笑いの質がありますが、(演者が)笑わせようとしていないのに、笑えてくるのが最高だと思っています。シチュエーションだけで、笑えるようなものが。最近、生瀬勝久さんを尊敬しているんです。宮崎あおいちゃんと共演している服のCMでは、会話しているだけで笑いが生まれているんですよね。生瀬さんは、その境地に達している。そういう品の良い笑いみたいなものが、実は僕が目指すところなんです。だから、今後に向けて生瀬さん研究をして、生瀬さんが持っているものは、すべて盗もうと思っています(笑)

(取材・文:岸豊)


映画『疾風ロンド』
11月26日(土)より全国ロードショー


出演:阿部寛、大倉忠義、大島優子、ムロツヨシ、堀内敬子、戸次重幸、濱田龍臣、志尊淳、野間口徹、麻生祐未、生瀬勝久、柄本明
監督:吉田照幸
原作:「疾風ロンド」 東野圭吾(実業之日本社刊)
脚本:ハセベバクシンオー、吉田照幸
配給:東映

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阿部寛

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