新作映画『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』を観るべき3つの理由――重厚な歴史ドラマにして、極上のサスペンス

(C)2015 zero one film/TERZ Film

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『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』ってどんな映画?

第二次世界大戦でアドルフ・ヒトラー率いるドイツが敗北すると、多くの重要戦犯が海外に逃亡した。なかでも戦時中に数百万人ものユダヤ人を強制収容所に送り、ホロコースト(大量虐殺)に深く関わった、悪名高い元ナチス親衛隊将校アドルフ・アイヒマンの行方は長年謎のままだった。ところが1950年代後半、戦犯の告発に燃える検事長フリッツ・バウアーのもとに驚きの情報が寄せられる。アイヒマンが南米に潜伏しているというのだ…。

観るべき理由:1――驚きの真実明らかにする歴史ドラマの醍醐味

ホロコーストの中心的役割を担い、長年海外に逃亡していたアイヒマンは1960年、潜伏先のアルゼンチンでイスラエルの諜報機関モサドに拘束され、翌年にエルサレムの法廷に引きずり出された。本作は西ドイツのユダヤ人検事フリッツ・バウアーが、潜伏情報をイスラエルの諜報機関モサドに提供し、拘束作戦を成功に導いた実話にスポットを当てている。

そもそもナチ戦犯であるアイヒマンは、なぜ本国ではなく、イスラエルで裁かれることになったのか? その裏でバウアーが果たした重要な役割とは? 歴史上、極めて重要な事件に秘められた驚きの真実が明らかになる。そんな歴史ドラマとしての醍醐味が味わえる、重厚な一作だ。

観るべき理由:2――敵の裏をかく頭脳戦にハラハラ!サスペンスとしても極上

アイヒマンの潜伏情報を手にしたバウアーは、なぜイスラエルの諜報機関に情報を提供したのか…。実は舞台となる1950年代後半のドイツは、大勢の元ナチ残党が政財界を牛耳っており、ナチスによる戦争犯罪の告発を進めるバウアーには敵が多く、監視の目も厳しかったのだ。捜査機関も例外ではなく、バウアーは孤独な戦いを強いられる。

そこで打って出た“裏ワザ”がモサドへの情報提供。国家反逆罪に問われる恐れもあるなか、それでもバウアーは信頼できる若手検事と協力し合い、徹底したリサーチを実行した。彼の失脚を狙う元ナチ残党の策略をかわすため、デマを流して応戦するなど、常に敵の裏をかくハラハラの頭脳戦が繰り広げられる。サスペンスとしても極上の仕上がりなのだ。

観るべき理由:3――過去と向き合い、未来を拓く…主人公の願いとは?

重厚感あふれる歴史ドラマにして、緊張感がたぎるサスペンスである本作だが、最も心を揺さぶるのはバウアーの執念と熱意、そして覚悟だ。祖国ドイツのために、目を伏せたい過去と真摯に向き合い、あるべき未来を切り開こうとする姿には、今もなお「あの戦争は何だったのか?」という疑問に苦悩する現代社会が投影されている。

その疑問に、映画を通して答えを出そうと試みているのが、現在のドイツ映画界だ。まるでバウアーの“遺志”を受け継ぐように近年、アイヒマン裁判を描く『ハンナ・アーレント』や、その後のアウシュヴィッツ裁判を題材にした『顔のないヒトラーたち』といった秀作が次々と製作されている。本作『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』もまた高い評価を得て、2016年のドイツ映画賞で作品賞、監督賞、脚本賞など6冠を達成している。

(文・内田涼)


映画『アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男』
公開中

出演:ブルクハルト・クラウスナー、ロナルト・ツェアフェルト、リリト・シュタンゲンベルク、イェルク・シュットアウフ、セバスチャン・ブロムベルク監督:ラース・クラウメ
配給:クロックワークス/アルバトロス・フィルム
2015年/ドイツ/シネマスコープ/105分/英題:The People vs Fritz Bauer

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