映画『沈黙-サイレンス-』窪塚洋介インタビュー「人生のすべては伏線。あるとき、それが報われる」

窪塚洋介

窪塚洋介

窪塚洋介は、演技はもちろん、インタビューもエモーショナルだ。

この日はとびきりエモーショナルだった。マーティン・スコセッシ監督が念願の企画を実現した『沈黙ーサイレンスー』。遠藤周作の「沈黙」を原作にしたこの映画は、17世紀、キリシタン弾圧真っ最中の長崎で、棄教を迫られながらも、己の意志を貫こうとするポルトガル人宣教師の姿を描く。窪塚は日本人側のキーマンとなるキチジロー役に抜擢された。

まず、本作のテーマである信仰について。

「昔から言われてますが、日本はクリスマスのあとに正月が来る(つまり宗教的に節操がない)。でも、そのことのキャパシティというか。ジーザス、いいじゃない! ブッダ、いいじゃない! アラーも、いいじゃない! って言ってあげられる俺らって、世界平和だなと思うし、そういう意味で日本人っていいなって。(世界が)カオスで、メチャクチャになっているいまだからこそ。タイトル通り、この映画では神は沈黙しているので、『答え』は見せてくれないですけど。自分自身の心の深奥に入っていくためのガイダンスみたいなものが、きっと壮絶だった時代の実話を通して、自分自身で獲得して、自分自身で見つけて、握りしめて、肚に落すものとしてあると思うから。みなさんにとって、少しでも、よりよい明日につながるような作品になったらいいなと思います」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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窪塚は信仰の根源にあるものを次のように表現する。

「信仰って、ありがたい……という気持ちになったとき、勝手に手が合わさっているようなことだと思うんですよ。それは、神に祈るときは手を合わせるんです、という決まりから始まったことではないと思う。つまり、かたちが先であって、そこに理由がついてくる。思わずしてしまう、思わず湧き上がってきてしまう。それが信仰というものであって。たとえば教義とは一線を画するのかなと。似ているエリアに置かれてはいるけれど、全然別のものなのかなと。朝日を見て手を合わせてしまっていた。そういうことが信仰の原点だとしたら、それは自分自身を信じることが究極に近い。誰に教えられるものでもなく、自分の心の中にあるものを信じる。かたちのあるものは壊れるし、なくなっていく。でも、かたちのないものは変わらずに残っていく可能性がある。俺らはあまりにも目に見えるものに頼りすぎている。過去を知ることで、未来の俺らはどうあるべきか、どこに向かっていくのか。そういうことのヒントになることがたくさんあるような気がします」

最初のオーディションは7年前。控室と聞いてガムを噛みながら入室したら、そうではなかった。映画のプロデューサーに叱責された。

「それでもやるのか? と。根性試しみたい。やらない、とは言えないなと。最悪の空気の中でやりました。マジでハンパなかった。固まりまくった。ものすごく張り詰めた感覚。そこで打ち克てるタフさがあったら良かったんですけど、ちょっと(状況に)呑まれちゃって。思うようにできなかった。力が発揮できなかった……というものすごい残尿感と共に帰っていった」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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ところが、2年後。まだキチジローが見つからないから、オーディションに来るようにと連絡を受けた。そこで受けたビデオ・オーディションは大成功。スコセッシも気に入り、とんとん拍子で、六本木のホテルで逢うことになった。

「振り返ったマーティンがにっこりしてくれて。その印象が脳裏に焼き付いているんですけど。『逢いたかったよ。ビデオ・オーディション、最高だったね』って。いや、俺のほうが逢いたかった! って」

なんとスコセッシが自ら相手役になり、芝居合わせをした。

「最悪、これでダメでもいいやって。この想い出がネタになるやって(笑)。マーティンは本当にあったかいオーラに包んでくれて。すごくノセてくれて。こんなに落ち着いてできるの? というくらいリラックスした状態を作って、芝居をさせる。あの人の懐の深さ。肌で感じる野性みたいことかもしれないですけど、やっぱり偉大だと思いましたよね。そこで満たされた気持ちにしてもらったし、そのあとの現場でも力が出せた気がします」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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アメリカでも日本でも、俳優がやるべきことには変わりがないという。

「浅野(忠信)さんにも言ってもらったんですけど。『窪塚、一緒にやったことなかったけど、たぶん日本でもこういうふうにしてるんだろうなと思ったよ』って。まあ、どの現場でも行ったら、思いっきりやるだけですけどね。それを日々、マーティン筆頭に楽しんでくれてて。『キチジロー! 今日はどんなもの、見せてくれるんだ?』って」

キチジローは複雑な役どころだ。ある意味、主人公にとっては信仰を揺るがすような存在でもある。

「原作のキチジローは、俺がやるには余りあると思ったんですよ。俺なりのキチジローというのをちゃんと作らないといけないなと。じゃあ、何が前に出て、何が後ろに引っ込んだら、そういうものが出てくるのか。そのとき、いちばん大事だなと思ったのは、イノセントさだったんですよ。そこは原作にあまり描かれてなかった。原作は、みんなが見たキチジローの断片を集めている。その分、抜け穴があった。この道だ、と思う先頭を走っていたのが、イノセントさだった。そこを大事にしていたら、マーティンはそこを捉えてくれていた。子供のような無邪気さの中にある弱さだったり、強さだったり、綺麗さだったり、汚さだったり。俺を見て『キチジローだ』と言ってくれたのは、そこだったのかなと思います」

(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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俳優、窪塚洋介は世界に放たれた。すでに、アメリカでの次回作が進んでいる。彼は『沈黙-サイレンス-』という体験をこう振り返る。

「自分が持ってたものすべてにエフェクトがかかっちゃった感じですかね。最後、終わったとき、マーティンが自分で持ってきたシャンパン開けてくれて。みんなで乾杯したときに、『本当に君がいてくれて助かった。初日からずーっと頼りにしていたよ』って言われて。泣きそうになった。あ、俺、いままでの俳優人生の中で、いちばん高地にいるわって。ほんと、空気薄くなっちゃうぐらい感動しているっていうか。狐につままれてる。そもそも、ずっと白昼夢見てるみたいな感じで撮影してて。マーティンが俺の演技を楽しんでくれていた。ほんと嬉しかったです。いまでも夢みたいです。思い出しただけで、メシ2杯ぐらい食える(笑)」

不遇期があったと、自身のキャリアを述べる。

「仕事が少ない時期はありました。(毎回)最後の仕事だと思って気合いを込めてやる。それは自分が決めて、ずっとやってきたこと。その想いは変わらなかったけど、何か世の中の温度と、自分自身の温度が合わないっていうジレンマはあったから。そういうことが(この作品で)一発で全部報われたかなという気持ちになった。『いま、すごくいい感じだね』と言ってもらうことが多くて。自分的にはマイペースで落ち着いて、地に足がついた状態でやれています。ま、そういう運命だったんでしょうね。全部ひっくるめて、すべてのことは伏線で、報われた気がしています。(神は)沈黙してるけど、計らってはくれてるのかなと」

取材・文:相田冬二/ヘアメイク:KATSUHIKO YUHMI(THYMON Inc.)


映画『沈黙-サイレンス-』
2017年1月21日(土) 全国ロードショー

原作:遠藤周作『沈黙』(新潮文庫)
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジェイ・コックス
撮影:ロドリゴ・プリエト
美術:ダンテ・フェレッティ
編集:セルマ・スクーンメイカー
出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信
イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ
配給:KADOKAWA

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