【インタビュー】野宮真貴が見た『素晴らしきかな、人生』の魅力―N.Y.、ファッション、人生、そして愛

野宮真貴(撮影:杉野正和)

野宮真貴(撮影:杉野正和)

2月25日から公開される映画『素晴らしきかな、人生』。母として女性として、この映画に共感したという野宮真貴がインタビューに応えてくれた。この日のファッションは、ヌメロ・ヴェントゥーノ(N°21)の真っ赤なドレスにクリスチャン・ルブタンのパンプス。90年代に渋谷系の中心的存在として一時代を築いたピチカート・ファイヴのヴォーカルであり、そのスタイルに憧れる女子が今も昔も絶えないファッション・アイコンの彼女が語る、この映画の魅力とは――?


野宮真貴(のみや まき)プロフィール】

シンガー。ピチカート・ファイヴのボーカリストとして、90年代に一世を風靡した「渋谷系」ムーブメントを国内外で巻き起こし、音楽・ファッションアイコンとなる。現在、音楽活動に加え、ファッションやヘルス&ビューティーのプロデュース、エッセイストなど多方面で活躍中。2010年に「AMPP認定メディカル・フィトテラピスト・マスター」の資格を取得。「フィトテラピスト(植物療法士)」として薬理効果のある「メディカル・ハーブ」の知識を生かし、ヘルス&ビューティー商品のプロデュースを行っている。2016年8月にアルバム『男と女~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。~』をリリース。近著に『赤い口紅があればいい』。2017年2月22日、アルバム『男と女』から7inch.アナログ盤発売。


―まず映画のご感想を伺えますか?

いろいろな愛が描かれているところがよかったですね。ウィル・スミスが演じている主人公のハワードは最愛の娘を6歳で失ってしまいます。自分にも子どもがいますし、子どもを失うというのは相当な悲しみですから、観ていて涙が出ました。そんな人生のどん底にいるハワードは周りの友人たちに支えられて立ち直っていきます。そんな友人たちにも感動しました。

―その友人たち(ハワードの同僚たち)を演じるのがエドワード・ノートン、ケイト・ウィンスレット、マイケル・ペーニャという演技派の3人です。

豪華なメンバーですよね。ハワードを支えようとする友人たちも実はそれぞれにいろいろな悩みを抱えているんですよね。

©2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

ウィル・スミス/(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

―この映画では「愛」「時間」「死」という3つがキーワードになっていて、実はこの3人の悩みもそれぞれに当てはまるんですよね。どれも多くの人が共感するようなテーマが描かれていてリアルです。

そうですね。私は女性なので、ケイトの演じるクレアが印象に残りました。彼女は仕事に人生を捧げて、気づいたら子どもを産むにはギリギリの年齢になっていた。そのことで悩むんです。私の周りにもバリバリ仕事してきて、気づいたら子どもがほしかったなという女性が割りといるのですが、それも人生の選択だから、どちらが幸せということではない気がします。ちょっとデリケートな話ですけれど。

―彼女のファッションで印象に残ったことは?

黒いワンピースを着ている場面があリますが、その時、トム・フォードのハイヒールを履いているんですね。決して派手な装いをせずに「仕事ができる女性」の演出しながらも、このハイヒールによって「女性力をアップ」をしています。こういう気遣いは女性にとって大事です。私も普段はフラットな靴を履くことが多いですが、女性は何歳になってもハイヒールを諦めてはいけないと思っているので印象に残っています。

ケイト・ウィンスレット/©2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

ケイト・ウィンスレット/(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

―3人の友人たちのみならず、ハワードのもとに3人の“役者たち”が現れるのも、この映画の面白い仕掛けです。キーラ・ナイトレイ、ヘレン・ミレン、ジェイコブ・ラティモアが劇中でも役者で、それぞれが「愛」「死」「時間」の役を演じています。

脚本がよくできていますよね。人生は自分でコントロールできない部分があると思うんです。突然にそういう悲しみが訪れることがあるじゃないですか。この映画のキーになっている「死」と「時間」というのは、自分でコントロールできないものを象徴していると思うんですね。「愛」失うこともあるけれど、自分と周りの人との繋がりによって育むことができる。「愛」「死」「時間」とは人生の綾ですね。

―ハワードは友人たちに支えられながら立ち直っていきますが、彼みたいな予想外の悲しみに出遭った時、野宮さんはどうやって立ち直ってきましたか?

私もやっぱり友人や家族、周りの人と乗り越えていくと思います。ハワードもひとりで思い詰めてしまって、なかなか立ち直れなかったけれど、周りの愛で少しずつ立ち直っていく。こういう時は、他人の助けが必要だと思います。

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

―ハワードの同僚であり友人のエドワード・ノートンが、彼を立ち直らせようとする計画が面白いですよね。

あの場面は舞台みたいな面白さがありますよね。そこにさきほどの3人の“役者”たちが絡んできますが、その中ではヘレン・ミレンのファッションが印象に残っています。

―どんなところですか?

鮮やかなロイヤルブルーの帽子とコートのコーディネートですね。舞台がニューヨークだから、ヨーロッパみたいにキメキメではなくて、ちょっと着崩しているんです。でも、いいものを着ているのがわかります。。

―他に気になった着こなしはありますか?

男性のファッションですね。ニューヨーカーらしく、シャツの第1ボタンを外してタイを締めたりしてちょっと着崩しながら、でも、いいスーツを着ていて。やっぱりヨーロッパの着こなしとはちょっと違う感じがよかったですね。

ヘレン・ミレン/(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

ヘレン・ミレン/(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

―ファッション以外でも、オープニングのドミノの場面だとか、ハワードの会社のオフィスとか、いろいろなところがおしゃれですよね。

そうですね。面白い階段があったりして、ちょっとオフィスじゃないみたい。それでいうと、ホリデー・シーズンのニューヨークが舞台だから、要所要所でいちばん美しい時期の街の風景が出て来て、それもよかったですね。最後の方にセントラル・パークが出てくるんですけれど印象に残っています。

―セントラル・パーク、お好きな場所ですか?

好きですね。やっぱり大都市にあれだけ大きな公園があるのが素敵だなと思います。以前はレコード会社のアメリカオフィスがニューヨークにあったのでよく行っていましたが、最近はパリに行くことが多くて。この映画を観たら懐かしくて久しぶりに行きたくなりました。

―キーラ・ナイトレイが花柄のワンピースに、かっちりしたコートを着ていたり、新鮮な組み合わせも出てきますね。

やはりニューヨークってファッションが自由ですよね。私もこのぐらいの年齢になってきて、少しナチュラルになってきましたけど、昔はエキセントリックな服が好きで、日本にいると目立ってしまうんですよね。でも、ニューヨークだと、誰もが自分の好きなものを着ているから、それを見ているのも楽しいし、素敵な人には見知らぬ人でも「素敵ね」と声をかけるし、目立ちすぎているからと非難する人もいない。気が楽で好きでした。

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

―ところで、この映画は原題が「Collateral Beauty」(コラテラル・ビューティ)。劇中では「幸せのオマケ」と訳されています。何か嫌なことがあった時、それに付随していいことも必ず起きているから、それを見逃さないでということなんですよね。

この言葉、何度も出て来てキーワードになっていますよね。悲しいことがあって、それは本当に辛いことだけれど、それによって自分にとって本当に大切なことは何かに気づかされたりすることもありますし、周りの人の愛に気づいたりすることもある。登場人物は多いですけれど、それぞれの人に「幸せのオマケ」がもたらされているのが素敵でした。

―野宮さんが「幸せのオマケ」に気づいた経験は?

81年にソロでデビューして、それが全然売れなくて1年で契約が切れて。ソロでライブやった時のバックの男の子二人と「ポータブル・ロック」というグループを組んで、また2枚アルバムを出したんですけど、それもまったく売れなくて(笑)。でも歌うことは好きなので、音楽にはずっと携わって歌い続けていたんです。すると、いろいろな人と出会うし、少しずつ広がって、そのうちピチカート・ファイヴと出会って、最初はコーラスで参加していたんですが、途中からメインボーカルになって。今考えるとそれが売れない10年間の「幸せのオマケ」なのかもしれませんね。「10年間好きなことを真剣に続けていると、それがその人の天職になる。」というのは私の人生の持論でもありますけど。

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

(C)2016 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT, LLC

―いろいろなことをやっていく中でつながっていくというのは、この映画のハワードの立ち直り方と似ていますね。

思い描いたものに、まっすぐに到達する方もいらっしゃるかもしれないけれど、なかなか難しいものです。私の場合は子どもの頃から歌手になりたくて、その思いが変わらずにずっとやっていられるから幸せだと思います。売れない時代はお金はないけど、楽しかったし、音楽仲間もいた。人生は出会いによってなりたっています。人との出会いだけでなくて、音楽や本との出会いもあります。その出会いとつながりを大切にすることで素敵なことが起こるのだと思います。

―この映画、他にも素敵な人が出ていて、今年のアカデミー賞で助演女優賞にノミネートされている『ムーンライト』のナオミ・ハリスも大事な役で出演しています。

彼女、素敵でしたね。ハワードと同じように、子どもを失った親の役なのですが、女性と男性の違いなのかわからないけれど、とても大きな愛があって。映画の中では彼女にもちょっとビックリするような展開があるんですよね。

この映画は考えさせられるところの多い映画ですから、恋人どうしで観ると、お互いの関係性を確かめられるいい機会になるんじゃないかと思います。役者さんたちの演技力が物語を引っ張っていて、ニューヨークの街並みや、おしゃれなファッション、何といっても親子の愛や友情、そして夫婦の愛…いろいろな愛の形が描かれていれて素敵な映画だと思いました。

野宮真貴(撮影:杉野正和)

野宮真貴(撮影:杉野正和)

(取材・文:多賀谷浩子)


映画『素晴らしきかな、人生』
2017年2月25日(土)より全国公開

キャスト:ウィル・スミス、ケイト・ウィンスレット、キーラ・ナイトレイ、エドワード・ノートン、ヘレン・ミレン、ナオミ・ハリス、マイケル・ペーニャ
監督:デヴィッド・フランケル『プラダを着た悪魔』
製作:マイケル・シュガー『スポットライト 世紀のスクープ』
音楽:セオドア・シャピロ『マイ・インターン』
配給:ワーナー・ブラザース映画

この記事を読んだ人におすすめの作品

アーティスト情報

野宮真貴

生年月日1960年3月12日(58歳)
星座うお座
出生地北海道

野宮真貴の関連作品一覧

カジヒデキ

生年月日1967年5月8日(51歳)
星座おうし座
出生地千葉県富津市

カジヒデキの関連作品一覧

関連サイト

TSUTAYAランキング

おすすめ映画ガイド

TSUTAYA MUSIC PLAYLIST