新作映画『ストロングマン』を観るべき3つの理由――滑稽で悲哀たっぷりな男たちのマウンティング

(C) 2015 Faliro House & Haos Film

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『ストロングマン』ってどんな映画?

ギリシャのエーゲ海でクルージングを楽しむ中年男6年組。釣りやダイビングに興じ、気ままな休日を満喫するが、それに飽きると最高の男=ストロングマンを決めるゲームを始めることに。ズボンのベルトの位置やコレステロール値、料理の知識や寝相の良さといった言動を観察し、メモを取りながら互いに採点し合う6人の男たち…。最初は冗談半分だったゲームは、やがて彼らの意地とプライドがぶつかり合う船上の泥仕合と化していく。

観るべき理由:1――アカデミー賞候補が仕掛ける新たなゲーム

寝相がいい。歯磨きは頻繁にする。コーヒーは常にブラック。たばこは吸わない。家事や日曜大工が得意。血糖値やコレステロール値は常に正常。悲鳴を聞いたら誰よりも早く駆けつける…。そんなチェック項目を基準に、最高の男を決めるという奇想天外なゲームの顛末を描いた本作。共同脚本を手がけるは『ロブスター』で、第89回アカデミー賞脚本賞候補に挙がったエフティミス・フィリップだ。

こちらの作品は「独身は罪。身柄拘束後、45日以内にパートナーを見つけなければ、動物に変えられて森に放たれてしまう」という異色コメディで、“閉ざされた空間”や“理不尽なルール”といった要素は『ストロングマン』にも共通している。異彩を放つ俊英脚本家が仕掛ける新たなゲームの結末は?

観るべき理由:2――女性よりタチ悪い? 男たちのマウンティング

近年、よく耳にするようになった「マウンティング」という言葉。動物社会における順序確認の行為を指すワードで、人間社会に置き換えると、特定のグループ内で勃発する地位や財力、人脈や血筋などをめぐるランク付け合戦を意味する。映画やドラマでは、女性同士のマウンティングが描かれることが多いが、中年男6人が「他人より優れていたい」という自己顕示欲をむき出しにする滑稽な姿は、正直女性よりタチが悪い!

例えば同じ男でも、上級階級のイケメン同士ならともかく、“クセがすごい”おじさんたちが醜い争いを繰り広げるものだから、映画が始まってしばらくは「えっ、何を見せられているの?」と居心地の悪さを覚えるかもしれない…。けれど、登場人物がそうであるように、観客もまた不条理な状況に巻き込まれてしまう点こそ、『ストロングマン』の不思議な魅力である。

観るべき理由:3――意外と社会派? 女性監督が切り取る男の悲哀

監督と共同脚本を手がけるのは、アティナ・ラヒル・ツァンガリ。女優、プロデューサーとしても活躍し、2004年に開催されたアテネオリンピックの演出の担当した才女である。以前、「The Capsule」という短編を手がけ、その内容が女性ばかりの“学校”と呼ばれる場所での女校長争いを描いたことから、「男性版ならどうなるか?」というアイデアから『ストロングマン』は生まれている。

だからなのか、男たちへの視線はどこかドライで、突き放した感覚。抱腹絶倒のコメディというよりは、男たちの弱さや愚かさ、悲哀を切り取り、ジワジワと笑いがこみあげてくる人間観察バラエティの要素が強い作品だ。本国ではそんな男たちの実態に、ギリシャが抱える問題を重ねる声もあるようで、意外と社会派な受け取られ方も。第89回アカデミー賞外国語映画賞のギリシャ代表に選ばれており、高い評価を獲得している。

(文・内田涼)


『ストロングマン』
3月25日(土)より新宿シネマカリテほか全国順次公開

監督:アティナ・ラヒル・ツァンガリ
脚本:アティナ・ラヒル・ツァンガリ、エフティミス・フィリップ(『ロブスター』)
キャスト:ヨルゴス・ケンドロス、パノス・コロニス、ヴァンゲリス・ムリキス
後援:ギリシャ大使館
配給:ファインフィルムズ【2015/ギリシャ/105分/R15+】
原題:Chevalier

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